<三>
〔これで互いの素姓が割れたわけなのですが、ここで一つ清秀が気付く事には、
この綺璃惠が、大人しそうな言葉遣いから、“ワシ”などという少し荒っぽい言葉遣いに変わっただけ・・・
そう―――この時点では、綺璃惠はこれからの清秀の武の鍛錬に手を貸すでもなく、
最初に会ったときと同じように、正座をして何かしらの書を黙読していたのです。
すると――――・・・〕
綺:ところで―――君は剣士のようだが・・・?
清:はいっ―――! 今年の剣道全国大会に出場して、優勝をしました!
婀:へぇ〜〜―――並み居る強豪を打ち負かし〜〜・・・ってとこかい。
なっかなかたのもしぃ〜〜♡
綺:ふム―――ではどれほどのものか・・・一つ見てあげよう。
黒江崎―――
婀:へへぇ〜い、承知―――♡
清:えっ―――黒江崎さんも剣道を?
婀:そうだけど・・・・何か?
清:い―――いえ・・・なんでも・・・
(す・・・チャ――)では、行きます! てやぁあ――――っ!!
ガシ―――ン☆
ギシギシ ギッギッ・・・・
バシ――――ン・・・
婀:へぇ〜〜っ、示現流のこの子、思ったよりやるようじゃない。
綺:フむ―――そのようだな。
清:(こ・・・この人たち、一撃見ただけでボクの流派を??)
〔熟練者には知れ渡っているからか、その構えから繰り出される斬撃は、相手からしてみれば腰の引けるもの・・・
それゆえに、少しばかり加減をして討っていったものの、その女性は涼しげなる顔で受け、次に口から吐いたものとは・・・〕
婀:いょう〜し、きぃ〜〜めた♪
清秀君、あんたこれから毎日ここに来なさい。
私がもんであげるから―――♡
清:えっ・・・ど、どうして??
婀:なぁ〜に、私がこれから鍛えてあげようっ―――てことなのよ。
そんなに深く考えたりしなぁ〜いの。
んじゃあね―――今日これから早速、素振り一万本に、打ち込み五千本!♪
清:え――――え゛え゛〜〜〜っ?! そ・・・そんなに??
婀:“そんなに―――”って・・・これでもまだ少ないほうなんだぞゥ?
――――ですよねぇ?塚原さん・・・・
綺:・・・・まあな、朝飯前に十万、食後と昼・夕食前にはそれぞれ二十万、打ち込みに五万は欠かしてきたことはない。
婀:――――ですよねぇ。
(ほぅ〜)私はまた数少なく言ったかと・・・・
清:い――― 一日にそんなに〜〜〜・・・やるんですか??
婀:つか、君ちょっとサボりすぎ。
判ったらさっさとやるぅ〜〜!
〔一体なにが驚いたかというと、その練習の量!!
今までに自分がしてきた道場の稽古でさえも、その量には満たなかった事なのに・・・
でも、そんなことより、清秀の事を偉く気に入った婀娜奈は、彼女自身が鍛えようということなのです・・・が??〕
綺:(フ・・・あやつもよくやるものよ。
ま―――昔より『豚はよく太らせてから食すへし』・・・と、あるからな。)
明日の―――・・・剣道界を背負って立つ若者が、ここでその才を食いつぶさねばよいが・・・・
ワシの気がかりなのは、そこ―――だな。
〔い・・・今の綺璃惠の言葉―――って、一体・・・思わずも ぞっ としない事ではありますが・・・?〕