<五>

 

武:(ふ・・・・ん)ならば―――その者と相見えんがために―――押し通る!!

  がぁああ――――っ!!

 

婀:・・・・・・・・・・。(にィッ)

 

ガ―――                                キィィン・・・・☆

 

武:ぅぬお?!! な―――なに・・・??

 

婀:・・・一合打ち合っただけで弾き飛ばされるとは・・・・ねぇ。

 

  なあ―――あんた・・・悪いことは云わない、このままとっとと帰んな―――

  いまだったら特別タダで返してやるよ―――

 

武:な・・・なんだとぉう?? 仕合わせるのに、金をとるというのか?!!

 

婀:―――ッたり前ぢゃない・・・一つの流派の看板をかけて闘ろうってンだよ?

  そのくらいの事、当の然! それにねぇ〜〜・・・色々とお金かかることって多いのよ―――

 

武:こ・・・このぉお〜〜―――! ふざけおって!!

 

婀:はぁ――――っ!!

 

チュギィィ――――ン☆

 

清:あ・・・・あの型は!!

 

武:こ・・・この構え―――“虎覇龍撃”・・・おぬし、まさか―――!!

 

婀:ああ・・・そうさ―――お察しの通り・・・。

  私の流派は『真蔭』であり、その奥義を継承した・・・黒江崎婀娜奈だ―――!!

 

 

〔当時―――古武道の一派である『真蔭』は、継承する者がおらず、絶えたものとされていたのですが、

なにを隠そう、この黒江崎婀娜奈が、若くして・・・それも女性ながらも、その奥義と心を正当に受け継いでいたのです。〕

 

 

武:なんと・・・おぬしが―――あの!!

  ならば相手にとって不足はないっ―――!!

 

婀:おや・・・そうかい? 私にとっちゃ役不足だらけなんだけど・・・・

  まあ、いいでしょ―――かねてよりの計画も、一応の目途がついたところだ、それじゃ・・・あんたで仕上げをするとしようか!

 

  かかってきな――――!!!

 

 

武:ぬぅりゃああああ――――!!

 

婀:(くわ!)吩ぁあ――――っ!!

 

真蔭流   極意             =

 

パキィ――――ン

ズガッ!

 

    しゅぅうっ!

 

武:ぐ・・・ぶぅおぁあ―――・・・

 

 

〔その振りかぶりは、清秀から見れば一瞬早いと思った―――・・・

けれど、その柄頭は相手の刀身をはじき、そこから力任せに振り下ろされた斬撃は・・・

それが竹刀だからよかったようなものの、もし真剣同士だったなら―――間違いなく相手を一刀両断にしていた・・・

であろうことは、疑いなき事実だったようです。

 

 

そして―――そこには紛れもなく、一匹の羅刹が居りました・・・

 

自分が―――更なる高みに臨むために相手にしてもらっていた女性ではなく・・・

ただ―――・・・修羅を啖らわんとする・・・羅刹が・・・〕

 

 

清:あっ―――・・・ああ・・・・婀娜奈さん・・・

 

婀:・・・どう―――驚いた?

  これがあんたを教えていた女が操っている流派―――『真蔭』なんだよ・・・。

 

清:でも―――そういえば・・・“一応の目途”ってことは。

 

婀:そう―――早、調整も最終段階。

  後はいつここの主を殪すか―――なんダヨネ〜〜。

 

清:泰山―――府君・・・。

 

婀:ああ・・・あれは化け物さ―――人間なんかじゃあない・・・。

  その身に、ありとあらゆる武道のノウハウを修めてる―――ね・・・。

 

  それは勿論、清秀の『示現』はもとより、私の『真蔭』だって同じことさ―――

 

 

清:それにしても・・・『閻魔大王』の仮の名を持つ人物ですから、またそうとうごッついんでしょうね?

婀:・・・はあ?ナニ云ってんの―――この場でいやっつぅほど顔見合わせてんでしょうが・・・

 

清:えっ―――っていうことは・・・婀娜奈さんが??!

婀:はあ゛?! 何で私が自分のこと、自分で悪くいったりしなきゃなんないのよ!

 

清:ですよ・・・ねぇ〜〜(はは・・・)

  じ、じゃあ―――いつもニコニコ顔で出迎えてくれる・・・

婀:あれは・・・ここのお母さん、あんたねぇ―――あんな優しい人を地獄の冥府の〜〜って云ったら失礼だよ。

 

清:ええっ・・・・じゃあ―――と、いうことは・・・まさか―――!!

 

――それは・・・想像に難くない・・・あの少女・・・――

 

婀:そうさ―――・・・あの塚原綺璃惠ってのが『泰山府君』・・・。

  そいつを正々堂々と真正面から打ち破ってこそが、私の本懐なの・・・・。

 

 

〔そう―――・・・なにも婀娜奈が、自分の流派の道場ではないところに入り浸っているというのも、それなりのわけがあり、

しかもそれは敵を間近に見――― 一挙一動のどこに隙があるのかを、探り出すためにあったことには、間違いはなかっただろう。

 

でも・・・しかし―――〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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