<四>
〔そうこうしている間に、今日も一日が終わり、ジルも自宅へと帰ったようです。〕
慈:ただいまぁ〜〜―――
母:あっ、お帰りなさい―――
慈:あっ、お母さん―――あの・・・
母:――――気をつけて・・・
慈:(あ・・・)う、うん―――
〔ジルの母は、ジルが帰ってきたのと同時に――気をつけて――と、言っただけ・・・
そして、たったそれだけの事で、その意思を組んだジル・・・
そう―――もうすでに相手側は来ていて、対戦者を待っている、そのことを感じたのです。
そしてジル自身も胴着に着替え、道場に言ってみれば――――〕
慈:あっ―――陣君、来てたの・・・
陣:え・・・あ、はい―――
ボクも今日の事は知っていましたけど・・・師範に誘われちゃって―――
慈:ああ・・・そう―――
(まあ〜“死合い”そのものを見るのは、私も陣君も始めてだろうけど・・・どうなのかな)
失礼しま――――(あ!!)
〔道場の入り口で掃き掃除をしていたのは、最近ここの門下生の一人となった――――元・いじめられッ子 那須野陣。
でも、“最近”ということは、ズブの素人のはずなのに、いきなり“死合い”を見せて大丈夫なのか―――と、ジルも懸念しているようです。
しかしその反面、こういうことも経験のうちだから―――とも、思ってもいたのです。
そして、道場に入った―――時・・・彼女が目にしたのは、
今日の“死合い”の、片方の当事者、青木清秀―――――と、その弟子である、橋川小夜・・・・
実は、ジルと小夜は、以前顔をあわせたことがあった・・・そう、『剣道県大会』の、決勝――――その大将戦で!!
そういった、浅からざる因縁もあり、再び顔を見合わせることとなった両者は・・・・〕
慈:(橋川――――小夜・・・・)(ごくり)
小:(やはり―――・・・)只者じゃなかったってわけね・・・
清:小夜―――無駄口を叩くのはよしなさい・・・
小:(清秀―――)はい・・・。
〔やはり―――自分の予測は当たっていた・・・・
こんな、立派に過ぎる道場で、武を修めるべくの鍛錬を欠かさない―――と、いった事に・・・
そのことに、彼女は半分は悋気―――半分は得心を得たのです。
ですが――――・・・肝心のもう一方の当事者、真蔭流継承者・黒江崎婀娜奈の姿は見えていなかったのです。〕
陣:お――――遅いようですね・・・婀娜奈先生。(ひそ)
慈:う―――うん・・・(ひそ)
綺:(フ・・・)大方、武蔵にでも倣っているのじゃあないかね――――
慈:師範―――?!!
(じゃあ―――するって事は・・・精神的に揺さぶりをかけるため??)
〔するとその時―――いきなり、道場の扉が音を立てて開かれたのです・・・〕
―――たぁ〜〜ん☆―――