<陸>

 

ジ:『地を駆けよ! 妾が影よ!!』

 

ズッ・・・・ズ・ズ・ズ・・・・

シュ・・        シュ・・・           シュ・・・・

 

オ:あ・・・っ、ああ・・・ジ、ジョカリーヌさんが・・・・

婀:あと五人も・・・??(本体を入れると六人か・・・)

 

 

ジ:ふ・・・・、光栄に思うがよいぞ・・・・

  これからうぬが受けるは、我が魔導の秘儀の一つ

『デッド・クィンテット』!

 

 

お:デ・・・・デッド・・・・

婀:クィンテット・・・。

  “死の五重奏”と申すか・・・っ!?

 

 

ジ:ヴァーデン・バル・バス・バウ(奔流よ、我が力となれ)

  『メイル・シュトローム』

 

ジ:カー・カム・デッド・カーム(来たれ、天の竜)

  『ディエン・ティアー』

 

ジ:ウェイルスト・ガルナー・フェルスト・ロウ(地より出でし、魂の裂動よ、雷を伴え)

  『ローザーズ・ウィスプ』

 

ジ:テルクハール・レビィ・スベル・ド・メイン(我に従いし、集約の炎よ、裂動となりて、全てを焼き尽くせ)

  『へリオン』

 

ジ:クゥエーラル・サック・トゥエラリヒヤ・ディン(時空よりなる、貫きしモノよ、その大いなる力を発現させよ)

  『ヴェイパーズ・クライム』

 

 

(そう、アビスの正体を、皆の目の前で、暴きにかかった、ジョカリーヌの秘策とは・・・

自身の影を5つに割り、そこから各々の影が、性質の全く異なる5つの術を唱えるというものだったのです・・・

ですが・・・)

 

 

ア:ぬ、ぬぅおおっ・・・!  (うんっ??!)

  フ・・・・ッ、ハッハッハ! これが・・・これが『死の五重奏』だというか!!

  笑わせおる、口ほどにもないわぁ!!

 

 

 

お:な・・・・なんですって??!

婀:あの、リッチーの魔術ですら効かぬと申すかっ?!

 

 

ジ:ほほう・・・・、本当にそう思うておるのかの?

  じゃとしたなら、それはまだお主は、気付いていないという事じゃ。

  この秘術の真の恐ろしさにな・・・・。

 

  それに、第一に、その術の数々が、お主の正体を暴けるものと、

  本気でそう思っておったのかえ?

 

 

サ:ち、違うってーのか??

臾:ひょえぇ〜〜、大したお人や・・・・。

 

 

ジ:これからが、本番というものよ・・・。

 

 

(そう、今までのあの術の数々も、単なる布石に過ぎぬと、ジョカリーヌは言ったのです。

そうはいっても、その一つ一つ、どれをとっても、超一級の魔術なのに・・・

 

だとしたら、これから起こる事とは、一体どんな事が待ち受けているのでしょうか・・・

 

静かに目を閉じ、その呪文を唱えるジョカリーヌ・・・・。)

 

ジ:

ヴィスパー・ラングール・ヴィエ・レ・ストロニカ・グリュー・ゲル

{空間に漂いし、五つの元素よ、今一つとなりて、“無”の効力とならん}

 

『ヴォイド・デストラクション』!

 

ズ・・・・  ドォ        ・・・ムッ!

 

ア:ぅぬ・・・・ぐ・・・おぉ・・・っ?!

 

ジ:さぁ! 皆の者も刮目して見るがよい!

  あれが、あの者の正体ぞ!!

 

 

お:(ええ・・・っ?!)

  し、正体・・・・って・・・ 

婀:(炎だけ・・・)ま、まさか・・・・?!

サ:あれがヤツの正体!

臾:・・・って、炎だけやんかぁ・・・・

人形(ひとがた)の・・・なんておらへんでぇ・・・・?

 

 

ジ:ふふ・・・、なくて当然。

何しろ、あやつは姿形(すがたかたち)を持たぬという、『炎の不定形生物』!

それが、あやつの正体よ・・・。

 

 

ア:ぐっ・・・フッフ・・・、よくぞ、我が正体を見破った・・・・。

  だが、それでどうする?

 

  ワシには、生半可な凍気など無意味!

  例え、それが『絶対零度』であったとしてもなぁ・・・。

 

  はぁ〜〜〜っはっはっは!!

 

お:(な、なんですって・・・?)あの・・・絶対零度でさえも??

婀:(むうぅ・・・)なんと、それが本当ならば・・・・打つ手がないではないのか?

 

臾:え・・・・? そ、それはどうしてなんねや??

婀:・・・・・。

  それは・・・、絶対零度より以下の凍気は存在せぬ、

  じゃが・・・・炎の温度の上限は、物理的には限度がないからじゃ。

 

臾:そ・・・・そんな・・・・

 

 

(そう、アビスが自身の正体を暴かれても、少しも動じなかったのには、それなりの理由が隠されていたのです。

全ての、地上に存在しうる物の、分子の活動を停止させてしまうという『絶対零度』

 

その、絶対零度でさえ効かないとアビスは揚言(ようげん)したのです。

 

ですが・・・)

 

 

ジ:ふふ、それはどうかの?

  実際、お主を打ち滅ぼす手立てなど、いくらでも・・・・うんっ?!

 

エ:うふふ、ご苦労様、ジョカリーヌ。

  それにしても、鮮やかなまでの看破劇でしたね。

 

ジ:おぉ、これはこれは、エリア殿。

  もう、そなたがお出ましになられるとは・・・・

  と、言う事は、妾はもはや用済みであらされますかの?

 

エ:そうね・・・・。

  でも、後もう一つ二つ、やってもらいたい事があるのだけれど・・・・

  お願いしてよろしいかしら?

 

ジ:その点でしたなら、抜かりはありませぬよ。

  ほれ、ごらんなさいませ、あのように、まだ生きておわしますゆえ・・・。

 

 

婀:(おお・・・っ!

 な、なんと・・・あのジョカリーヌ殿の影が、未だ消えてはおらぬではないか!)

 

お:(そ、それにしても・・・・何? あの子・・・・

  あんな小さな子が・・・・無茶だわ!?)

 

 

(そう、驚くべきは、『ヴォイド・・・』を詠唱する際に作り出した、

ジョカリーヌの影が5つ、未だに消えていなかったことと・・・

 

あの、エリアがこれからの戦闘に、加わると言う事だったのです。

しかも、それに際し、ジョカリーヌも、これから先の戦闘は、このエリアに託す模様で・・・・)

 

 

 

 

 

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