<拾>
(一方その頃・・・・バクラハム高原にて、
たった一人で、巨人の軍団に刃向かっている女性が・・・・
自身の武器は、すでに綻び始め、その身も幾度となく切り刻まれ、打ち砕かれながらも復元できていたものの、
度重なる、巫道の奥義の行使と、回復のためのシー・アル・ジーの行使とにより、
己の 真力 を使わざるを得なくなっていた者が、そこにはあったのです・・・。)
ヱ:(ふぅ・・・・ふぅ・・・・)くぅ・・・・ッ!
オン・バサラ・バイローチャナ・ソワカ
覇神楔刹陣
〔はじんけっさつじん〕
ト:うがあぁぁ・・・
ヱ:くふうっ!(はぁっ・・・・はぁっ・・・・)
た・・・・たったこれしきで・・・・息切れがするなんて・・・・なんて情けないっ!!
(も・・・もう・・・・あの力に、頼らざるを得ないというの?!!)
バ:グフフフ・・・・どうやら、バテ始めたようだな。
それにしても、大したものよ。 わが自慢のヤツらを・・・その半数までに、減らしてくれおるとはな!!
ヱ:(はぁっ・・・・はぁっ・・・・) フ・・・・フフフ・・・・その言葉・・・・褒め言葉として、とっておいてあげるわ・・・・。
バ:(フ・・・・) ヤレ。
サ:グははぁ!死ねぇ!!
(しかし、(人間としての)魔力も、もうすでに底を尽き始め、満足に立てないでいるヱルムの頭上に、サイクロプスの振るう大槌が・・・!!
もう、このままではだめと、悟ったヱルムが、瞬時に選択した行動とは・・・・)
ヱ:(くぅ・・・・ッ!!)
真 力 開 放 ! !
ど ぐ し ゃ あ っ ! !
バ:グハハハハ! 例え、いくら高度な、シー・アル・ジーを唱えられたとて、肉体を根本から破壊してしまえば、元も子もない事!!
(力尽きようとしていく者に、情け容赦なく振り下ろされる大槌、そこには、目も当てられぬ惨状が・・・・
血しぶきは、あらゆるところに飛び散り、そこには、あの美しきギルドの長老の姿は、跡形もなく・・・・
いや、ですが・・・・しかし・・・・・)
バ:ウワッハッハッハ! どれ、そいつを上げてみろ、あの女の無惨な姿、見てやろうではないか!!
サ:ヘヘぃ。
バ:フフフ・・・・どれ・・・・。 な・・・・ッ!?ナニ?? こ・・・・これは・・・・!!
うじゅるうじゅる・・・・ザワ・・・・・ザワザワザワザワザワ・・・・・・・
(そう、確かにそこには、血だまりはあったものの・・・・そこからは、とある、一匹の・・・・・強大な魔力を有する者が・・・・復活しつつあったのです。
そう、それは・・・・)
ヱ:カ・・・・・カハアアアア・・・・!!!
バ:お、お前は・・・!!(ち、血だまりから復活できる・・・・こんな事が出来るのは・・・!)
まさか・・・・ヴァンパイア!!
ヱ:ええ・・・そうよ!(ギヌロ!)
それにしても・・・よくも人前に晒したくない、私の真の姿を・・・! どんなになるか、覚悟できてるんでしょうねぇ・・・。(Fuuu・・・・)
バ:(バ・・・・バカな!! ま、まさか・・・今のこやつらの組織は、このヴァンパイアによって??!)
ヱ:こ、この形態から・・・元の人間の姿に戻るまで・・・・どれだけの時間を、要すると思ってんの・・・(ギリィ・・・)
二度や三度、血を啜るだけじゃあ済まされないんだからね!! 覚悟・・・しなさいよ・・・。
バ:フ・・・・・フフフ・・・・そうか・・・・・そういう事か・・・・。
ヱ:(うん??)
バ:ククク・・・・やはり、あの方が言われていた通り、キサマらの組織に、何かが起こっているようだな・・・・。
ヱ:(ナ・・・ナニ?) あの・・・・方・・・・だと?! 一体誰の事を言っている!!
バ:フ・・・・それをお前達が知る術はない・・・。
直、この世から、無くなるのだから・・・・なぁ・・・。(ニィィィ・・・・)
ヱ:・・・・・・。(キッッ!!) ブラフは、通用しない!!
(真の姿になったヱルム・・・・ヴァンパイアの、真祖である彼女に、もはや敵などいようハズもありません。
ですが、しかし・・・バフォメットは、こう・・・・嘯(うそぶ)いたのです、“あの方の言う通り”・・・・だと。
実体の見えぬ第三者、その者の存在に、一瞬たじろぐものの、今そこにある危機に対処するヴァンパイア。
しかし、多勢に無勢の今、彼女の戦いは、新たなる局面を迎えつつあったのです。)