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(そして・・・)
ジ:(う・・・ん?) ククク・・・どうやら頃合いのようじゃ。
婀:な、なんですと?
ジ:見よ、天空におわす月を! その象(かたち)は、既になくなり・・・彼の、オズモとやらが、復活をなしえる時が、今なのじゃ!!
婀:おぉ・・・おおお!な、なんと言うことじゃ・・・!! 手遅れじゃった・・と、いうのか?!
マ:いや・・・そうともいえんだろう・・
婀:(な・・・) ソ、ソロン・・・様?
マ:本当に・・・最後の大博打・・・では、あるが・・・オズモから、ヤツの復活の際に使われた、彼女の御魂を抜き取る・・・・
それ以外に、もう方法はあるまい・・・そういうことで、よろしいかな、ジョカリーヌ殿・・・。
ジ:・・・・・。
ス:ジョカリーヌ・・・さん?
ジ:―――来おったぞ―――
(刻、既に遅し―――月が・・・太陽に隠れるまでに、おひぃさんの魂を取り返さなければ、彼女の魂は、永遠に帰ってこない―――
しかし・・・・その意に反するが如く、ここ、病院の屋上に現れた者も、贄の祭壇に捧げる魂は持っていなかった・・・
そう、彼の二人の兄妹の魔物は、――デコイ――囮だったのです。
でも、その魔法陣の場所は間違っていなかった・・・・そう、この病院の、地下駐車場に、密かに設けられていたのです・・・。
そして―――最悪の事態―――刻限が満ちた事により・・・恐るべき魔物は、復活を遂げた・・・と、いうのです。
が―――しかし―――)
マ:(フッ・・・) どうやら、ヤツめ・・・魔方陣の上で、騒がしくされるのが、好かんと見える・・・
のこのこと出てきおったぞ・・・
オ:・・・・・・。(フシュ――――フシュ――――)
婀:おのれぇぇ〜〜! 姐上の御魂、返させてもらうぞ!!オズモ!
ジ:・・・・・ムンッ!(キュキュ・・・・クィィ―――ン クイィ――――ン バッ! ババッ!!)
婀:ぅお?!(シュ・・・ ・・ン)
婀:うあっ!(ドサッ!) こ・・・っ、これは・・・!?
ジ、ジョカリーヌ殿、一体何をなされるのじゃ!!?
ジ:まぁ・・・落ち着かれよ、婀陀那殿。 妾か見立てたところ・・・どうやらあの者、しくじりおったらしい・・・
婀:な・・・なんですと?
ジ:ようく見よ・・・あやつの周りを・・・幾つもの、決定的なものが、欠けておる・・・。
ス:な・・・ほ、本当なのか? み、見た目には、完全なものにしか見えんが・・・
婀:う・・・うむ・・・・。
マ:欠ける・・・と、言って・・・どのくらい欠けているのです?
ジ:まぁ・・・・ざっと見て、5・6はないな・・・。
マ:ほう、そんなに? 私でさえ、ようく目を凝らして、3つがやっとなのに・・・
ジ:(フッ・・・) のぅ・・・そなた、そんな不完全であるのは、お主とて不本意であろう?
そこで、どうであろう?今回の復活は、ないものとみなし・・・・大人しく、魂を返してはもらえぬじゃろうか?
オ:≪―――もし、断れば?―――≫
ジ:・・・・知れた事、滅殺させていただく・・・。
オ:≪―――この、体とて、可愛い部下が、その身を呈して、ワレに捧げてくれたモノ―――≫
≪―――その、部下も、お前一人によって、弑された、よって―――≫
ジ:・・・願いは聞き届けられぬ・・・か。
オ:≪――・・・・・。――≫
ジ:(ククク・・・)まぁ・・・分かりきっておった事じゃが・・・・所詮は、血塗られた道・・・と、言う事じゃな。
オ:≪――ふ・・・っ。――≫ =ディクティター・シュッツ=
(そう・・・彼の者、オズモは、その復活に、失敗という、大きな代償を、背負わなければならなかったようです。
そして、ジョカリーヌ様が、今ではない、もう少し後ではどうか・・・と、諭してはやるのですが・・・
今、説得をしている者に、自分の腹心二人を、滅せられた者の心情としては、いかがなものがあったかは、
彼の者自らが、戦端を開いた事で理解できたようです。
そして―――オズモの先制攻撃、己の影から、いきなり伸びた、針状のそれは、ジョカリーヌ様を貫いたか・・・と、思いきや!)
ジ:・・・・・。(フゥゥ―――ン・・・)
ジ:(フワゥンッ!)
――死せる霊魂よ、妾の喚起の言霊に集い、彼の者を、喰らい尽くせよ――
=フォ・ビトゥーン=
〔冥獄死霊砲〕
婀:し―――瞬間移動!し、しかも、あれは・・・死霊<レイス>を呼び起こしおった!!
ス:なんとも・・禍々しい・・・
マ:(ヌッ―――) イカン――!ヤツは、既にそこにはいないぞ!!
ジ:(ナニ?!) し、しまっ―――・・・
オ:≪――まずは・・・ワレを滅した存在と、よく似たお前から始末させてもらおう――≫ =ソウル・デストラクション=
(この・・・彼の者の、先制攻撃を回避し、反撃に術式を唱えたのはよかったのですが・・・
魔道を発現する際に、注意しなければいけない事は、呪文を唱えた前後には、隙が大きく生じる事・・・
そう―――今のジョカリーヌ様が、そうであるように・・・
そして、彼の者の技が、ジョカリーヌ様の身を、貫いた・・・・は、貫いたのですが。)
ジ:(ヒュゥゥン・・・) フフ・・・剣呑剣呑、いま少し、驕(おご)っておったようじゃ・・・
オ:≪――な、なんと・・・!! 今の一撃で、キサマの再生器官は、損傷した・・・――≫
ジ:・・・ハズか? 確かに・・・妾の再生器官は、お主の今の一撃で、一部損傷を受けた・・・
だが・・・・それしきでは、妾を滅することは敵わぬぞ・・・
オ:≪――ぬうぅ・・・・っ!――≫
婀:・・・どういう事じゃ?
マ:・・・恐らくは・・・――呪圏<ディスペル・バウンド>――
婀:ディスペル――――とは、よもや高次元レベルの者が、己の身を護る為に、常に纏っている・・・と、いう『多重結界』の事か??
マ:その、通りだ・・・。 しかし、この次元界の低いところで、見れようとは・・・・思わなかったぞ。
ス:(えっ?!)
婀:・・・・つまりは、この『物質界』<マテリアル・プレーン>で、かような高度な戦いは、まずありえぬのですよ・・・驍様。
(そう・・・・そこには、もはや、人智を超えた、戦いがあったのです。 しかも、それは、次第にヒート・アップし・・・)
ジ:なれば・・・これではどうじゃ!
――冥晄の珠よ、四空より出でて、彼の者に打ちつけよ――
=フェイテル・グリマー=
オ:≪――フ・・・ッ、このようなモノ、こうしてくれる!――≫ =スキゾ・フェニア=
婀:ンな・・・っ!あ、あの者・・・『変身』<トランス・フォーム>に、『原子配列変換』を同時に・・・
しかも、それを一瞬で行いおった!!
ジ:(フフ・・・ククク・・・) 今のを・・・『抵抗』<レジスト>しおったか・・・・少しは愉しめそうじゃな・・・
オ:≪――そういう、キサマも・・・・やるようだな・・・――≫
ジ:(ニ・・・ッ)
――アーリア・マウラス・オルフィラハ・ディガ・ディベストロイ――
<冥界を統べし、三人の魔神よ、古の契約に基づき、その力を指し示せ>
=ファイナル・ストライク=
〔封邪滅相克弾〕
オ:≪――フ・・・ッ、バカめ、返り討ちにしてくれる!!――≫
婀:あ・・・っ!ナ、ナゼ?! 反撃をされる事が、分かっておきながら・・・
マ:・・・・いや、あれはワナだ。
婀:な・・・なんと??
(そう・・・なぜならば、今、ジョカリーヌ様が唱えた術式というのは、それの放射終了までに、時間を要するというモノ・・・
しかしそれを知った上で、あえて・・・というのが、彼女の戦略の根底にあったのです。)
オ:≪――喰らえ!――≫ =ダィン・フォー・マインシズ=
ジ:(今じゃ!!)(ツィ〜〜―――――)
婀:(あ・・・っ!あれは・・・!!)
(そう―――それは、宙空に書き出された、一言の魔文字 ――kyozetu――
つまりは、この方の、最も得意とされているあの呪法・・・『魔術文字』<ウィルド・グラフ>、
その中でも、自分の位相を、歪めてしまう・・・『歪曲空間包護』<ディストーション・コート>
だったのです。
そして―――)
ジ:(フ・・・・ッ) 返してもらうぞ・・・
ズ ドオッ!
オ:≪――ぐふぅあっ!――≫
(そして、ジョカリーヌの・・・彼女の、血塗られた手にあった一つの宝珠・・・それこそが、おひぃさんの魂を封じたものだったのです・・・)
ジ:・・・・・婀陀那殿!受け取りなされい!!
婀:(あ・・・) ・・・・こ、これは・・・
ジ:そこな男と・・・・一緒に行き、その魂を、しかるべく処に、帰してやるがよい・・・。
婀:か・・・・辱(かたじけな)い・・・っ!! さ・・・驍様!!
ス:あ・・・ああ!!
オ:≪――ぐ・・・ぐぬ・・・ぅぅ・・・・――≫
ジ:・・・・・不憫じゃが・・・・滅させてもらうぞ・・・
――エクサ・アト−・ペィタ・フェムトー・パルス・ノト・ガリレア・クゥフオロウ――
<最大、最小の言の葉において、我は命ずる、一切のモノを、崩壊させよ>
=ディスインテ・グレイド=
〔原子崩壊励起〕
マ:塵さえ・・・・も、遺さずか・・・・いやはや、恐るべき術式もあったものだ・・・
ジ:・・・・・・それよりも・・・・見なされよ・・・・よい、満月じゃ・・・・
(ここに、彼の―――魂の争奪事件は、終わりを見たのです。
そして、天空には、あの凶事の前触れとも言える、蝕(しょく)の消えた月が、宵闇の空をまた・・・・煌々と照らし続けていたのです。)