<二>

 

 

〔そして・・・その日の夜半、件の港湾施設に、集結しつつある『狩り手』達・・・・。〕

 

 

バ:よし、集まったようだな。

  それでは、これから班を決めるぞ、まづ一つは――サヤと、臾魅――

 

サ:・・・・・。

臾:おっしゃっ!!

 

バ:そして、二つ目は――私と、ナオミ――

 

ナ:・・・分かりました。

 

バ:それから・・・すまないが、シホ、あんたは、単独で動いてくれ。

 

マ:いいだろう・・・。

 

 

バ:(よし―――)では・・・散っ!!

 

 

<サヤと臾魅>

 

サ:(ちっ・・・随分と、まあ・・・ザコ共がうようよしてやがるなァ・・・)

臾:はぁ〜〜あ、何やん・・・思うとったより、ようさん降りますなあ。

 

サ:まあな・・・だが、ここに存在する穴が、拡がりきった時には、

この町に、あふれんばかりの亡者共が、徘徊する事になるからなぁ・・・・。

 

臾:え゛っ?!! そ、そんなに、おっかないんでっか?

サ:だからこそ・・・小さい穴の時に、叩き潰すんだよっ!!

 

 

〔そう・・・そこには既に、目には見えない、虚ろな存在から・・・・

日頃、狩り続けている妖魎まで、色々な種の者共が、跋扈しつつあったようです。

 

そして、一方のこちらは、ナオミとバーディ・・・このまま行けば、何の事はなかったのですが・・・・

また・・・あの“声”が聞こえてきたようです・・・。〕

 

 

<ナオミとバーディ>

 

 

―――状況ノ・ロード・開シ―――

―――前方有視内ニテ・展開サレツツアル・キケン =イエロー= ―――

―――有視外ニテハ・サラニ・危険度ガ・マシテイルモノ・ト・思ワレマス―――

 

 

ナ:(ちっ・・・こんな・・・こんな時までもかよ・・・・)

  いい加減・・・・いい加減にしてくんないかなぁ―――

 

バ:(ナオミ―――・・・・)

 

 

―――ソレカラ・後方4時ト5時ノ間・仰角55°ノ地点ニ・何者カノ視線ガ・存在シテイマス―――

―――オ気ヲツケテ・クダサイ―――

 

 

ナ:へ・・・へへ―――っ・・・もう、驚きもしねぇよ・・・見えないあんたの声が、聞こえてんだからさぁ・・・。

 

バ:おいっ―――! ナオミ!!

ナ:(あっ―――)は、はいっ!

 

バ:自分の世界に浸るのもいいが、今は、目の前の事に対処だ!! 早めに終わらせるぞッ!!?

ナ:――――はいっ!!

 

 

〔目の前に展開されつつある危険・・・・いや――― それよりも、不気味なのは、

後方4時と5時、仰角55°

に、存在するという・・・・ある者の視線。

 

しかも、その視線は、他の者・・・つまりは、サヤや臾魅、シホ、そしてバーディでさえ気付いていない・・・・

そう、その時点で気付いていたのは、ナオミにとり憑いていた者だけ・・・・だったというのです。(しかし、――仰角――とは・・・上方??)

 

それよりも、今、早急に求められているのは、目の前の障害の排除なのです―――!!〕

 

 

臾:おぉっしゃあ―――! いてこましたるでぇっ?!

 

サ:そらっ! はァ―――――っ!!

 

マ:フッ・・・穴ぐらの、向こう側に帰るがいい・・・・                  =ローザース・ウィスプ=

 

 

〔狩り手達による、徹底―――と、までいえる殲滅作戦に、

この港湾施設を、埋め尽くさんばかりに蠢いていたはずの妖魎達も、今では数を数えられるまでになり・・・

 

いや、しかし――― それは、目に見えるだけの結果だったのです。

なぜなら――――〕

 

 

バ:(ふん―――っ!) さあ・・・来るがいいっ!この スレイヤー の恐ろしさ・・・篤と味あわせてやる!!

 

グ:ナにっ?!ヤツがスレイヤー・・・?

レ:殺せ!!ヤツを・・・殺せぇっ!!

 

バ:そいつは、どうかな――― 喰らうがいいっ――!!

『獄縛陣』

 

ビシュ――――・・・――           ビシュ――――・・・――                  ――――・・・――ビシッ!

 

フ:ぐぼぉ――?! い・・・糸・・・?!

ゲ:んなっ?! こ・・・こいつ・・・まさかっ?!!

 

バ:ソう・・・お察しの通りよ!! お前達は、この私の 斬糸 で・・・切り刻まれるのさ!!

 

 

――フッフフ・・・成る程な・・・――

 

 

バ:な―――っ?! だ、誰だ??

 

 

――ククク・・・そうか・・・貴様が、スレイヤーか・・・――

――気晴らしに、こっちに来てみて、正解だったようだな・・・――

 

 

〔この―――闇のどこかにて・・・不意に聞こえてくる、不気味な声・・・

そして、その声の主の正体が、向こう側から近付くにつれ、ある恐るべき魔物が、こちらにやってきたことが、判ってきたのです・・・。〕

 

 

バ:(う―――っ!)お・・・お前は・・・デーモン;ヴィアド!!?

 

ヴ:ぐっ・・・ふふふ・・・・

 

バ:(ば・・・バカな・・・や、やつクラスが、もう出て来ているというのか?!!)

  まずいな・・・・。

 

ナ:えっ?!ど、どうしてなんですか?バーディさん。

 

バ:以前・・・向こう(米)の元締めをやっていた時に、ヤツのファイルを見た事があってな・・・

  レベルは“AA”しかも、特殊能力“幻惑”を得意とするヤツなんだ・・・。

 

ナ:そ・・・そんなやつが・・・もう?

 

バ:(むぅぅ〜・・・)こうなったら仕方がない・・・。

  おい、ナオミ、お前一人で、あいつ等を至急こっちへ呼び寄せて来るんだっ!!

 

ナ:は・・・はいっ!分かりました!!

 

ヴ:フフフ・・・そうはさせん、ぬうぅぅん!!

 

バ:く―――っ!!

ばっ・・・

ビィ――・・・――ン               ビ・ビィィ〜〜―――・・・――ン

 

ヴ:ぅぬおっ?!

 

バ:さぁ――― 私が、こいつを抑えている間に――― 行けっ!!

ナ:わ、分かりました――― あ・・・っ

 

ド:ひへへへ・・・・

ホ:フへへへ・・・・

 

バ:ちぃぃ〜ッ・・・私達を、完全に孤立させるハラか・・・っ!!

 

ナ:く・・・くっそぉぉ〜〜っ!! どけ・・・どけえぇ―――っ!!

 

ドオォン                    ドオォ―――ン!

 

バ:(バ・・・ッ、バカが・・・! 頭に血が上っているから、狙いが定まって、いやしないじゃあないか・・・!)

 

ナ:うおぉぉお!

 

ドオンッ――!

 

ピュン               ピピュ――ン                       ピュィ――ン                       ピュゥ―――ン

ピキュ―――ン                     ピュイィ―――ン

ピキュゥ―――ン            ピシュィ―――ン            ピュ――――ン

 

びすっ!!

 

イ:う゛っぎあぁぁ・・・っ!

 

バ:な、なに??(跳弾?)

ナ:あっ!?えっ??

 

バ:(あいつ・・・狙ってやったわけじゃあなかった?)

だが・・・道は開けた・・・・  今だッ!!

 

ナ:(あ・・・)は、はいっ!!

 

 

〔偶然か否か・・・ナオミが、ヤブカラボウに放った一弾が、道を塞いでいた、インプを射ち貫いたようです。

(それには、ナオミ本人も、驚いているようですが・・・?)

 

しかし――― これで、他の仲間と連絡が取れる! ――――と、そう、思われたのですが――――〕

 

 

ト:ぬうゥん―――!

 

ドガ――――ッ!☆

 

ナ:う・・・うわあぁぁ・・・っ!

ガスッ――☆

 

ナ:う・・・うぅぅ・・・(ガク)

 

バ:ああ―――ッ!ナ、ナオミ!!

 

 

〔なんと・・・突進してきた、トロルの“ぶちかまし”をうけ、倉庫の鉄柱辺りまで吹き飛ばされ、

おまけに頭を、強(したた)かに打ち付け、気絶してしまったナオミ・・・

 

――もうダメ――と、思われたその瞬間!!   そう・・・実に、――その瞬間――だったのです。〕

 

ピッ          キキュウゥ―――ン          キュキュィィ―――ン

 

―― エマージェンシー・エマージェンシー ――

――只今ノ・状況ノ・再確認ヲ・イタシマス――

――衝撃度“A”ニヨル・ダメージデ――

――ホルダーノ・全機能・一時低下――

――コレ以上ノ・ホルダーニヨル・稼動ハ・無意味トミナシ――

――一時的ニ・コチラ側ニ・全制御ヲ・移行サセマス――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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