<拾弐>
〔――――・・・・が、しかし・・・・〕
ア:ちっ―――!! なんてこったい! まぁるで効いてやしないなんて―――!!
や、やはり・・・私じゃあ力量不足――――なのか?!
ヤ:ふ・・・ふ・・・・いや、そんなことは・・・・ない。
かなり高度な術式を唱えられるとは・・・・尊敬の念に値するものよ・・・。
ア:・・・・へっ、んで、そいつを破ったってンだから、自分のほうが優れてる―――・・そういいたいんだろうが。
ヤ:ふ・・・・いかにも。(ニヤリ)
ア:くそぅ・・・。
(すっかりナメきられちまったようだね・・・かといって、手持ちのモノで、使えそうなのも、そう残って―――・・・
―――・・・使ってみるか、アレを。)
ヤ:ふ・・・ふ・・・どうした、もうネタ切れか―――・・・
ならば、今度は、こちらから参らせてもらおう―――!!
〜ラムテミュルズ・コクサノルン・ラ・ダ・クゥオーズ〜
<我れが醸し出す、芳しき臭いを嗅げ>
=イル・ストーム=
サ:ちぃっ!! 毒の嵐とは・・・やってくれる!!
ナ:く―――くそっ! ふざけたマネを!!
臾:どっひゃぁぁ〜〜〜ん!
お:くっ―――!!(バッ! バ・バッ!!)
女:ふぅ・・・やるゥ、結界陣で防ぐなんて・・・
臾:あ・・・・い、いつもいつもすんまへん、ひぃさん・・・。
お:いいのよ、臾魅ちゃん。
(でも・・・アルディナさん、アレをくらっても平気なようだけど・・・動かないまま―――なんて・・・
もしかして、万策尽きたの??!)
〔そう・・・・アダナが、自信を持って繰り出した、同時詠唱の術式も、ヤミーに阻まれ、もはや打つ手なし―――
と、言ったところなのか、その場に立ち尽くしたまま、揺らぎさえもしなかったのです。
それを見て、おひぃさんは、心配をしてやってるようなのですが・・・・〕
ア:(しかし――― こいつをやってしまって、大丈夫なのだろうか・・・・こっちの自然界に、悪影響は―――?)
女:・・・・・ねぇ、アルディナ、何かやりたい事があるんなら、やりなよ・・・。
ア:えっ―――?
女:もし―――あなたが心配している事があるんなら、大丈夫、今ここに、私がいるから―――ね?
ア:・・・・へっ、すまねぇのな、要らない心配かけちまって――――よ。
でも・・・まあ、ありがとうよ、お蔭で迷いが吹っ切れたぜ!!
ヤ:フっ・・・・ふふ・・・何をするかは知らんが・・・・ムダな事よ―――・・・
お前の術式は、先程ので総て見切っておるわ―――!!
ア:本当にそうかい―――!!?
お:えっ――――?!!
臾:なんやてぇ―――??
ナ:まだ・・・なんか隠してた――――っていうのか??
サ:なんてヤツだ・・・・
女:・・・・。
ア:確かに――― さっきまでの、あの術式じゃあ、お前には効きやしないだろう・・・・
が―――・・・もし、お前を倒す事ができるとしたなら・・・・それは、お前ですら知らないもので、なしさえすればいい――――
それだけの事さ・・・。
ヤ:フン・・・・ふ・ふ・ふ・・・・・古今の術式に通じておる、この私ですら知らぬモノ・・・・だと?
ブラフ――――だな、それは・・・
ア:そいつぁどうかねぇ――― 試しに、受けてみるかい?!! かつて・・・この私が、研究し――― 開発した――――
ドルイド
を―――!!!
お:えっ??なんですって?
臾:なんやん―――それ!!
ナ:どる・・・いど???
サ:聴いた事もない術名だな・・・・
女:???
〔アダナが迷っていた事――― それは、遠い昔、自分が研究開発に勤(いそ)しんでいた、ある術式を使う―――と、いうこと・・・
そして、その術式こそ・・・・開発された当時からして、危険視されていた・・・
ドルイド
だったのです・・・。
しかし――― 環境の全く違う、おひぃさん達にしてみれば、それは聞いたようなこともない代物・・・
それゆえに、少々の戸惑いは隠せなかったのですが―――・・・
すると、ここで・・・何をするつもりなのか、アダナが、自身の左腕を前方に掲げ・・・・
ゆっくりと・・・・・気の集中を、しだしたのです・・・・。〕
ヤ:フ・・・・ふふふふ・・・・何の呪(まじな)いかは知らぬが―――― スキだらけだ!!バカめが!!
喰らえ―――!
〜バーク・ヒール・セイヴォー・ラン・ヒューソー〜
<光の爆裂よ、光子の矢となりて、敵を砕き散らせ>
=スキッド・ロア=
〔しかし――― ここで、ここにいる者達は、あらぬものを見てしまったのです・・・。
それは・・・・ヤミーの放った術式が、アダナの体を打ち貫いた―――のではなく・・・
アダナとの一定の距離のところで、術の威力が推しとどめられてしまい・・・やがて・・・・術そのものが―――
これから、アダナがなさんとすることに、付与してしまう事となってしまったから――――なのです。〕
ア:むぅうううん!!
パッツィ――――ン!!
シャラン・・・・ シャラ・・・・・ シャン・・・・・・ シャララン・・・・
ヤ:な―――なにいっ?!! し・・・しまっ・・・!!
ア:これから・・・・お前に聴きたいことがある・・・・正直に答えるんだ・・・いいね。
サ:(この期に・・・・及んで??)
ア:この私の――――親愛なる友、ヱルムのココロを・・・・どこへやった。
ヤ:・・・・・・。
ア:黙秘かい? (フ・・・)お前・・・今、自分が置かれている立場が、判ってんのかい? 言いな―――!!
ヤ:くぅ――――っ!!(こやつ―――!!)
ナ:(な―――・・・バ、バカな・・・先程まで・・・術式を詠唱していた時には・・・計測ゲージが振り切れんばかり・・・だったのに、
それなのに・・・・今は―――?!!)
ア:おぉや―――これでも、いいたかないのかい? 強情だねぇ―――・・・
まぁ、いい、それじゃあ質問を変えよう・・・お前さんを、ここから出して、自分の意のままに操ろうとした、ゲス野郎の名は・・・なんてェんだい。
ヤ:うっ・・・・ぐ・ぐ・ぐ!!
ア:動くんじゃあねぇ―――!! 生きとし生ける者・・・いつかは滅びちまうんだ―――それが、たとえ“不死者”で、あってもな―――
さぁ、観念して言うんだ―――!!
お:(す・・・・凄まじいまでの・・・気の圧力!! なのに―――魔力のほうが、全くといっていいほど・・・感じられないなんて―――!!!)
ヤ:フ―――・・・・ヤレ・・・殺すがいい・・・・。
このヤミー・・・敗北してまで、敵に与(くみ)しようなどとは思わぬ・・・。
ア:(ふぅ・・・)やぁれやれ―――案外強情だねぇ・・・。
仕方がない―――直接、あんたの血にでも聞いてみるしかなさそうだ・・・・。
〔そこには――― 切り札を出さずに、敗北者を前に、色々と聞きまわるアダナが―――
でも、ヤミーも、リッチーとしてのホコリがあるのか・・・中々口を割ろうとはしなかったのです。
そこで――― アダナが、次にとった行動とは、相手の―――ヤミーの首筋に手をあてがい、一滴の血を採取したのです。〕
ア:(ス・・・)・・・・成る程、そういうことかい。
やっぱり、血はウソをつかないようだねぇ。
臾:(なんっ・・・やてぇぇ??)
ア:それに―――・・・どうやら、ヱルムのココロ・・・その オードル とか言うヤツが、持ってっちまってるんだなぁ?
女:(相手の血を媒介に―――・・・記憶を詠んだとでも??)
ヤ:ぐぅうう――! おのれぇい!!
〜デル・ファーザス・ワルー・ウード・カンダ・エレストローダ〜
<光粒子の槍よ、畏れを知らぬ者に、天罰を>
=シャイニング・ジャベリン=
ア:(フッ・・・)悪いが・・・そうと判った以上、お前と遊んでやれる時間はねえ!! 消えな―――!!!
=テムペスト=
〔アダナの掌から放たれた それ は・・・先に放たれた、相手のモノをも飲み込み・・・・
やがて、大気中に存在しうる、電子イオンに反応し、そしてそれが雷光を発生させ始めたのです。(いわゆる、プラズマ化現象)
そして―――その雷光は、容赦なく相手を打ち貫き、その者の存在すら、消し去ってしまったのです・・・。〕
臾:い゛え゛え゛・・・っ?!! あ・・・あのヤミーとかいぅん・・・・消えてもぅた??
お:(こっ・・・これが ドルイド ??)
ナ:(おそらく・・・あのヤミー、ランクでもAAAだったろうに・・・)
サ:(あいつの・・・気配が、完全に・・・・消えやがった。)
女:(それにしても、なんていう畏るべき術式なの・・・自分の魔力を一切解放させずに・・・
それに、ここにある、自然の力を媒介として、創り出せる―――だ、なんて・・・それに、オードル・・・って・・・)
ア:(策に窮したとは言え―――・・・使っちまったねぇ・・・)
だけども、そうでもしなけりゃ・・・・
お:あの・・・アルディナさん?
ア:・・・ん? どうしたんだい、おひぃさん。
お:あの・・・今のが?
ア:・・・なぁ、すまないけど・・・・今、ここで見たこと――― なかった事に、してもらえない・・・・かな?
お:えっ?? ど・・・どうしてです?
女:・・・・それは、今、この人が使ったの―――― 今の、この世界の術社会では、説明がつかないからだよ。
そうなんでしょ?アルディナ・・・。
ア:(フ・・・)さぁっすが、神様だね、あんた・・・。
そう―――・・・この術こそが、私達の世界でも危険視されていた『ドルイド』っていう代物なのさ・・・。
ナ:んな―――・・・・なんだって?!! そ・・・それじゃあ、あんた・・・下手したら、アタシらまで巻き添え食って・・・
ア:・・・・あぁ、そういうことになるね。
臾:そ・・・“そういうことになる”ゆぅ〜て、そんなん軽ぅ済ませられるもんなんか??
サ:・・・・そのくらいにしといてやれ、ナオに臾魅。
臾:せっ・・・せやけどもなぁ・・・
ナ:どういうつもりなんだ?
サ:それじゃあ聞くが・・・仮に、こいつが、その『ドルイド』を行使せずにいたら・・・・あのヤミーを倒せたか・・・?
臾:う゛ぃ・・・・。
ナ:そっ・・・それは・・・・
お:(サヤさん・・・臾魅ちゃん、ナオミさん・・・)
――――・・・判りました、それほどまでに言われるなら、この一件は オフ・レコ にいたしましょう。
それでよろしいのですね?アダナさん。
ア:ああ・・・すまないよ、おひぃさん。
私も、これからは、極力こんなのを使わずにするよ・・・
J:それじゃ――― 一件落着ぅ〜〜ってことで、ギルドに帰るとするにゃ―――☆
ア:ああ、この“一件”は・・・ね、そうするとしょうか。
臾:(えへ?)
ナ:(ぅん?)
お:あの・・・まだ、何か??
ア:そうさ、まだ・・・長い目で見た時にゃ、全部終わってないって事だよ。
〔そう・・・・怨敵、リッチーのヤミーを倒したとて、この一件からは手は引けないのです・・・・・
な ぜ ? ?
それは・・・・もうお忘れですか? 一番にクリアしなければいけない事――――“奪われたヱルムさんのココロ”を“奪い返す”と、いうこと―――・・・
そう、つまりは、“奪った”と思われていた『張本人』のヤミーは、実は持参しておらず、
ヱルムの“ココロ”は、第三者か、何かしらの者に強奪されたか――― あるいは、その者の手に渡ったもの・・・だと思われたからなのです。
そして、そのために、新たな作戦、対策を練るべき、ギルドの社屋へ・・・・と、引き返すのですが・・・〕