<拾肆>

 

 

〔その一方―――― こちらギルド社屋では・・・・ヤミー消滅より、数分前・・・・・・〕

 

ジィ――――・・・・                                                                                                                                                     

パリ〜〜――――・・                             パリパリ−      −−−−

 

婀:ぅん?(ピク) ・・・・・・。(なにか―――― 邪な気を感ずる・・・・)

  ソロン殿・・・・。

 

マ:お前も感じたか・・・・低級神。

 

婀:もしや、これが件(くだん)のヤミーとか申す者か―――?

マ:いや――― それとは少し違うようだ。

 

 

〔社屋内では、シホと婀陀那が、何者かが発する邪気を感じ取ったようです。

そんな時―――― 治療室からバーディーが――――!!〕

 

 

バ:た、大変だ――!! シホ!ちょっとこっちへ来てくれ!!!

 

マ:どうしたんだ?!

婀:(あの慌て様―――)何かあったに違いない、行ってみましょう―――

 

 

〔バーディーに促されるまま、ヱルムのいる治療室に入った、二人が見たものとは―――!?〕

 

キュ−−−−・・・                     ゴ!!

 

ヱ:・・・・・・。

 

婀:ぅぬうっ! こ・・・これは一体どうしたというコトじゃ―――!!

マ:なんと・・・強力な眠りの術式で眠らされているはずなのに・・・彼女の目が見開いておるとは―――!?

 

 

ヱ:・・・・ぅぅ・・ゥ・・・・。

 

婀:しかも―――・・・あれは、あの時(暴走時)の眼!!

  ぇえい!ままよ―――! 一大事になる前に―――! バーディー殿! 早ぅ拘束縛式を!!

 

バ:いや―――しかし!! こんな柔わな糸では、すぐに引きちぎられるのがオチだ―――!

 

婀:くぅぅ・・・(こうなれば―――・・・)

  社主殿、コみゅ・乃亜殿を連れて、お主等だけでも逃げられてくだされ―――!!

 

ス:婀陀那っち―――・・・そうしたいのはヤマ々なんだけど・・・・さ。

 

コ:婀陀那様――― 今は何卒、お戯れの莫きよう・・・・(スフゥゥ・・・・)

乃:今は、我等も、可愛さのみを振りまくだけの、マスコットではありませぬが故・・・・(フゥゥ・・・)

 

婀:お―――おぉ・・・そなたら・・・『妖狐』モードか。

 

 

〔なんとも、頼もしい事に、先史が二人も増え、一気に気勢が上がるギルド陣営。

 

が―――しかし、実はこの二人が加わった事により、今までベッドに横たわっていたヱルムが、むくりと起き上がってきたのです。〕

 

 

ヱ:・・・・・。

 

婀:(な・・・なんと言う事――― 完全に目覚めたとでも? それとも、魔法の効力が失せたのか??)

 

バ:ッ―――くぅ! それにしても、なんて濃い魔素なんだ!!

マ:ぉおっ! 見ろ―――! あの人にまとわりついていた者共も、一斉に目覚め始めたぞ?!!

 

婀:ぅぐっ―――! れ・・・レイスにゴーストが実体化しおるとは・・・!

  これは―――・・・何かの前触れなのか?!!

 

 

〔しかも――― 次には、そのベッドから降り、婀陀那やシホの方に、歩みだすヱルムが――――・・・〕

 

 

ヱ:・・・・・。(ヒタ・・・)

 

バ:くっ―――! 動くな―――! 再び目覚めて、何をするかは知らないが―――・・・

  それ以上、こちらに近付くというなら、容赦はしない―――!!

 

 

〔しかし――― バーディーの忠告を聞くでもなく・・・一歩――― また一歩――― と、近付くヱルム・・・・〕

 

 

ヱ:・・・・。(ヒ・・・タ・・・)

 

バ:なら・・・ば、やむをえない――!! その、右の手足を頂こう―――!!

 

キュ―――・・・キュ――――・・・            ビィイン――――!!

バシュ――――                                                                   バシュ―――――

 

どさ どさッ                             グズズズ−−−−

 

 

〔そして―――― ヱルムの行動に制限を加えるため、彼女の右側の手と足を、切断するのですが――――・・・

 

その手足が、地に落ち、灰になった瞬間――――!!!!〕

 

ぐっっ−−−・・・                                                                                                              

じゅるぅっ!              ずるっ!

 

コ:な・・・に?! 瞬時に生え変わるとは―――?!

乃:恐るべき、再生復元能力・・・・。

 

バ:(こっ・・・これでは、いくら体を切断しても、すぐに再生されてしまう・・・)

  もはや・・・・打つ手はないのか―――?!

 

 

マ:いや―――― ない・・・・わけでも、ない・・・。

  ――――が、しかし・・・・

 

バ:なんだ――― 何か打つ手があるのなら・・・・それにしてくれないか―――!

 

婀:まさか―――・・・その“手”とは、お主そのものの存在なのでは?

 

マ:まぁ―――種を明かせば、そういうことだ・・・。

  今回の事例は、彼女より、一回り上の魔力を持つ者が、攻撃を仕掛けたことによって、そうなってしまった事だ・・・。

 

  それ故に、その者と同等――――または、格上の私が出さえすれば―――・・・・あるいは・・・・・

 

婀:何か、不安材料でも―――?

 

マ:あの――― 祠内の結界を、外から破った者の事だよ―――・・・

婀:成る程・・・それで、心当たりは?

 

マ:ない――――・・・わけでは、ない・・・・。

  いや、だが、しかし、今は手段を講じている場合ではなさそうだ。

 

こい―――! 低級神―――!!!

 

婀:よし・・・なら、参るっ―――!  はぁああ―――!!

 

ごぅうっ!

 

 

〔婀陀那自身の、『発火』の呪似て、本来の―――― 黒き甲冑に、その身を纏った姿で出現する『魔皇』ソロン――――

 

これで、こちら側は、臨戦態勢が取れた――――と、思われたその時―――!

 

今度は、ヱルムの体に異変が――――!!!〕

 

ガクガクガクガク―――――!!

ヱ:・・・・・。(グラ・・・)

 

ズズズズズ−−−−−・・・・

ヱ:・・・・。(ドサッ―――!)

 

 

〔なんと――― ヱルム、激しい痙攣に襲われたか―――・・・と、思うと、

昔、カミイラに噛まれた、首筋の痕(きずあと)より、なにやら黒い霧のようなモノか出――――・・・そのまま床に倒れこんでしまったのです。

 

そこへすかさずソロンが――――・・・〕

 

 

ソ:婀陀那――――ッ!! 低級神!! あの者の身柄を確保!!

 

婀:ぉぉ―――!そうじゃ!! ・・・身柄、確保完了!!

 

 

ソ:・・・・ついに、現われ出でおったか――――・・・・。

  どうやら、“待つ”事に関しては、余り得意としていなかったようだな・・・・。

 

 

〔やがて―――・・・その黒霧も、徐々に一つに集約し始め・・・・そこから、一匹の魔物の姿に―――

 

それは、ソロンと同じく、全身甲冑で、色は赤銅色をなした、魔神の姿だったのです―――・・・〕

 

 

ソ:ぅぬう――― 貴様・・・やはり!!

 

魔:フッフッフフ―――・・・・ひさしぶりだな・・・。

  よもや、またその姿で会えるとは、思ってもみなかったぞ・・・・魔皇ソロン―――!!

 

ソ:復活しおったというのか―――! オードル!!

オ:(フッ・・・)いかにも・・・。

 

婀:なにっ?! オードルじゃと??ソロン殿!!

バ:(オードル・・・だって? そいつは・・・・リストの中にも載ってない―――・・・)

 

ソ:し―――・・・しかし、ナゼだ?!! よもやジュデッカの蛮雄が、ここに這い出てきおる―――とは!!

 

婀:ジュデッカ―――・・・とは、やはりそうであるのか―――!!

 

ソ:そうだ―――・・・低級神、お前が懸念していた通りだよ・・・。

  私が、魔界の王になりあがるまでの同志――― そして、私が皇位に就いた時には、双方の見解の差異ゆえに、袂を別った―――

 

  いわば、もう一人の私ともいうべき存在よ―――!!

 

バ:な―――なんだって?!! そ・・・それじゃあ・・・

 

ソ:いかにも――― ヤツは、お前達人間の作ったリストには、載ってはおらん!

  たとえ、載っておったとしても、それはレベルやランクなどで、推し量れるものではない・・・この、私のように・・・・な。

 

オ:クックックッ――――・・・・当然だ・・・・。

  そのようなお遊戯で、ワレの力を測ることなど・・・無意味よ―――!!

 

ソ:だが―――・・・その前に、問いたい事がある!!

  ナゼ・・・貴様は、今頃になって、このような事をする気になった――――!!

 

オ:まだわからんか・・・・同志よ・・・。

  ワレは、お前を正道へと導くべく、やってきたのだ・・・・。

 

さぁ――― 仲間を“狩る”などとバカげたマネは止めて・・・・ワレとともに来い!!

 

ソ:断る―――!! 私が、バカ共を狩るのは、私の考えあっての事だ――― うぬのほうこそ失せろ―――!!

 

 

〔そう・・・・その存在は、魔皇・ソロンとほぼ同等―――いや、それ以上キケンな・・・・

神界でも、『黒霧の魔将』として、その存在を一級の監視下に置かねばならない存在だったのです。

 

 

初めは―――― 互いに正当性を主張はするものの、話の接点は交わることはなく、

やがて――――本来の目的に出ようとするオードルが・・・〕

 

 

オ:フッ―――フフフ・・・・まぁ、よい・・・。

  こうなることは、ハナから予測していたことだ・・・。

 

  そちらが折れる意思など、持ち合わせていないことなど・・・・な。

 

ソ:それは―――― お互い様・・・・だな。

 

 

オ:ならば―――!! 貴様を取り込むまでよ!!

 

ソ:(フン―――・・・)やはり、そう来たか―――・・・・だが、かつて私とヤり会って、敗北したうぬに・・・・できるかなぁ?

オ:できるさ―――!! 昔ならいざ知らず・・・今のお前は、そのようなか弱き女に取り憑いて、その存在を維持しているに過ぎぬのだからな―――!!

 

ソ:(むうぅ・・・・)早――――これまでか―――!!

 

 

婀:あきらめるのではありませぬ――――!! ソロン殿!!

ソ:て・・・低級神!!

 

婀:ここには、妾がついておる――― ゆえに、あきらめる事、まかりなりませぬぞ!!

ソ:すまぬ――――・・・・婀陀那よ・・・。

 

婀:ふ――――・・・・らしくないセリフなど、吐かれるな、ソロン殿。

 

 

オ:フフ―――ククク・・・・麗しきは、神々との友情か?!! 笑わせるではないわぁ!! 喰らえ―――・・・

=アッサケイド=

 

 

婀:ぬぅおっ?! これは・・・黒き霧か?!!(バッッ!!)

 

ソ:その霧に触れるな――!! 低級神!!

 

婀:(ナニ??) っ――――く!

=イグニスト・ウオール=

 

ゴオォォ・・・・・ッ

 

 

オ:ふ・・・・ん、余計な真似を・・・・。

  だが、どうかね? ワレの腐食性の霧の感想は―――!!?

 

 

コ:ぬぅぅぅ・・・・おのれ!!

乃:お待ちを―――! お姉様。

 

コ:し―――・・・しかし、乃亜・・・

乃:所詮・・・我等とは格が違いすぎたのです・・・・よもや、あのソロンと同等の者が出てきてしまっては――――!!

 

コ:では・・・・このまま指を咥えて見ていろと―――??

乃:・・・・残念ながら・・・。

 

 

婀:ぐぬぅぅ・・・。

  (こやつの・・・この霧、妾やソロン殿だけなら、何とかなるものの・・・後の、あの者達をも・・・と、なると・・・・)

 

オ:クックックッ――――・・・どうやら・・・完全に打つ手なし! と、いうところだな・・・・その表情(かお)は!!

  ぐわァ―――――っはっはっは!! 今まで滅した者達のところへ逝けぃ!!

=アッサケイド=

 

婀:あぁ―――・・・

  (こ・・・これは・・・先程のより、霧の範囲が広い!! これでは・・・妾のイグニスト・ウオールのみでは捌ききれ・・・・)

 

  あぁ――――っ・・・・し・・・シホ殿・・・コみゅ・乃亜殿・・・社主――― バーディー・・・ヱルム殿ぉ―――!!(ま・・・まにあわ・・・ない?)

 

 

〔先程――― オードルが発生させた腐食性の黒霧を、婀陀那は自身の持つ能力で切り抜けはするものの、

今度のは、そのフィールド全体を覆いつくすかのような霧を発生させたオードル・・・

 

これには、さしものの婀陀那も捌ききれず・・・・その黒霧は徐々に・・・しかも、確実に非戦闘者である、彼らの下へ――――・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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