<玖>
臾:それにしても―――・・・ リントハイム っちゅ〜ことは・・・・。
サ:あぁ・・・いずれにしても、あの エリア とかいうのとも、係わり合いはありそうだな。
バ:お・・・おい、なんだ?? その・・・・“リントハイム”とか、“エリア”・・・って。
サ:おっと――― そういやぁ、お前は、まだあん時は、こっちに戻ってなかったから、知らねぇのも無理ねえやな・・・・
――――ま、知らねぇでいるうちが“華”ってこともありうるしなぁ・・・。
バ:んな―――っ?!(ちっ・・・)
それじゃあ、ナオミ・・・・お前だったら知っているだろう?
ナ:えっ??あ・・・あたし? いゃ・・・そんな・・・あたしに聞かれても・・・
バ:なんだ??お前も知らないのか? 使えないヤツだなァ・・・・
ナ:す・・・・すいません・・・。
サ:まぁまぁ・・・そうきついこと、いってやるなよ、バーディー。
ナオのやつが、(エリアの正体を)知らねぇのもむりはねぇ、
なにしろ・・・あの時、アビスのヤツに、半身もってかれちまってたんだからな・・・。
バ:あっ・・・そ、そうだったのか・・・そいつは悪いことを言ったようだなぁ・・・。
ナ:いえ―――・・・いいんですよ・・・。
〔そう―――あの時、まだこの地に戻ってきていなかったバーディーさん、初めて耳にする“リントハイム”に、“エリア”という名前に興味を示してはいるのですが・・・
同僚のサヤからは、『知らないうちが花』といわれるし、自分の部下のナオミを通じて知ろうとするも、彼女も知らないというし・・・
(でも、それは無理らしからぬ事、なぜならば、ほれ・・・今のナオミさん、ああいうことになっているじゃないデスか?)
でも、ナオミが知らないという理由を知ってしまって、改めて詫びを入れるバディーさん、
どうやらこのお人は、このように案外とさっぱりとしているようであります。〕
キ:―――そんなことより・・・私のヱルム様に会わせて下さらない?
婀:(ヱルム―――“様”?? それも・・・私“の”??)
分かりました――― こちらでございまする・・・。
(コンコン―――☆)入りますぞ、社主殿。
ス:ああ、婀陀那っちか・・・・ようやく大人しくはなったんだが・・・・
ガンッ―――☆☆
ス:・・・・何とかしてくれんかね・・・##
婀:(・・・・手当たり次第に、モノを投げつけおるとは・・・)
これ・・・これ以上の狼藉を働くといわれるなら・・・たとい、知人とは言えども、容赦はしかねるぞ―――!!
ヱ:フ――――ッ! フゥゥ〜〜〜〜―――――ッ!!
〔そして、自分達の世界で、至らない自分に対し、よくしてくれる恩人に合わせてくれるよう依願するキリエちゃん。(モノはいいよう・・・・^^;;)
婀陀那の導きで、治療室に入ってみれば―――
自分の手に届く範囲にあるモノを、手当たり次第に投げつけ――――
敵意むき出しの眼差しを投げかける――――
まさに、獣のようになってしまったヱルムさんがいたのです。
しかし――― この緊迫した空気が、部屋中に漂う中・・・・事態を静観していたキリエちゃんが、
なんと、こともあろうに、ヱルムの方に近づいて行ったのです―――!!〕
婀:(はっ――!!)い、いけません!! 危険ですぞ―――!!キリエ殿ぉ―――!!
キ:(ス・・・)・・・・お可哀想に・・・“ココロ”を、奪われてしまったのですね・・・。
でも、ご安心を・・・・この、不束者(ふつつかもの)めが、必ず取り返して御覧に入れますので・・・・。
〜ルフゥーラ・パラライソ・ヱバデンダス・ロギンヌフゥラス・グレゥス・ヴァリー〜
<我は求める、冷たき安らかなる、永久の眠りを>
=ヴェイラ=
【凍結の眠り】
ヱ:ゥ・・・・。(グラ・・・ ドサ)
婀:ヱ・・・ヱルム殿?? い・・・今、一体なにをなされたのじゃ??
ス:(スッ――― スッ―――)ふむ・・・大丈夫、寝たようだ・・・。
婀:な、なんですと―――?!
ス:いや・・・それにしても驚きだね、強力な麻酔剤を何十本も打っても、ビクともしなかったお人が・・・・
呪文の一つで、こうもあっさり――― なんてね。
キ:(ふふ・・・)それはそうでしょう・・・何しろ私が使ったのは、強力な“眠り”の魔法ですので。
〔そう――― そこには、暴れるヱルムさんを、どうにか大人しくさせようと、普段病院で使う麻酔薬よりも、数倍濃くしたモノを・・・・
それも、何十本と投与したにもかかわらず、寝息の一つもかかずに暴挙を働くヱルムさん・・・・と、もはやお手上げ状態のステラが・・・・
でも、キリエちゃんが、一つの魔法をかけた途端に、ヱルムさんはその場に崩れ、眠りについたようなのです。
(それには――― キリエ自身は『強力な眠りの魔法』としていたようですが・・・実は、これは、 アレ なのです。)
そして――― 程なくして、治療室から出てくる三人・・・・〕
お:(あっ―――・・・)ヱルムさん・・・どうでしたの?
キ:いえ―――・・・取り立てては別に、なにも・・・
ただ、ぐっすりとお眠りについておられるだけですよ。
それよりも―――・・・アルディナさんのお姿が見えないようです―――が??
マ:ああ――― あの人なら、ヱルムさんを、あんな目に遭わせたヤツを、探しに出かけたが―――・・・
キ:そうなの―――・・・(ふ・・・ぅ・・・)
相も変わらず・・・・お熱いことだこと・・・感情で動くという事は、それだけ周囲(まわ)りが見えなくなるというのに・・・。
お:(こっ―――・・・この子?!!)
婀:(なんという―――・・・冷静な・・・)
サ:(ちょいと―――骨がありそうだな・・・・)
臾:(こぉんな、ちびっこい子が・・・・)
バ:(できるな―――・・・)
マ:(どうやら・・・この者も、“能ある鷹”か・・・)
ナ:(人は・・・・見かけによらないというが・・・)
J:・・・・・。
〔一時(いっとき)の感情に流される事なく、冷静な判断を下せる者・・・・
それも、自分よりも、歳の数が少ない者がするとなると、どうであろう―――?
それは、今、ギルドの者達が体現していた事に、他ならなかったのです。〕
キ:(仕方がない、ここは一つ、骨を折りますか・・・・)
あの・・・申し訳ありませんが、どなたかこの私と一緒に、アルディナさんを探してもらえないものでしょうか?
サ:なら――― このオレが行こう・・・。
臾:ほならうちも!!
J:あちしも〜〜―――!!
お:では、わたくしも・・・
ナ:あたしも混ぜてもらうよ・・・
キ:そう――― ありがとうございます・・・。
見ず知らずの私達のために・・・・
サ:そんなことはねぇよ―――。
ただ・・・・あいつ等にゃ、こっちに来るたびに厄介になっちまってるからな、
こんな象(かたち)でしか・・・・恩を返せねぇ―――― っていうのは、残念だけどもな・・・・。
キ:・・・・それでは、残りの方々は―――?
婀:む――― 万が一の事があるやも知れませぬ・・・・ここを動かずにおきましょう。
お:無理・・・しないようにね? 婀陀那ちゃん・・・。
婀:なに、心配などご無用ですよ、姐上・・・。
ここには、妾もシホ殿もおりまする、そう・・・・易々とは破られませぬよ―――
お:――――・・・・・そうよね?
キ:それでは、参りましょうか――――
〔そして、今度はそのキリエちゃんからの提案――――
頭に血が上って、冷静な判断もつかないであろうと予測したアダナを、まづギルドに引き戻し、改めて作戦を練ろうではないか―――
と、いうことで、早速ながら有志を誘ってみれば――――
これが一人だけではなく、我も我も・・・・という者達ばかりだったのです。〕