恋人たちの一大イベント―――「クリスマス」を2週間後に控え、皆それぞれの計画に感情渦巻く中・・・

“ある人物”からの衝撃的な内容のメールを受け取った璃莉霞は・・・

 

 

 

璃:い、市子ぉ〜〜! ど、どうしよお〜〜!!

 

市:はあ・・・「どうしよう」―――とは?

 

 

 

いきなりの、結論を求めるような質問の在り方に、戸惑うばかりの市子―――なのでしたが。

取り敢えずの処、持ち掛けられた相談に乗る事にしてみると・・・

 

 

 

市:はあ・・・メールですねぇ・・・

  ―――あの、璃莉霞? 何も特別な内容では・・・

 

 

 

そう―――璃莉霞から見せてもらった、そのメールの本文・・・『今年のクリスマス、その期間中、会いに行きます。』

これだけを見れば、確かに市子でなくとも、どうしてこんなにも普通でありきたりな内容に、騒ぎ立てるのかが判らない・・・

 

ですが―――?

 

 

 

璃:「お題」・・・ちゃんと見て―――

 

市:「お題」?

  (・・・)『愛しのお姉サマへ』―――

  ・・・・・・・・・・・・・・えっ?

 

 

 

何か、嫌な予感がしてきた―――

けれどまあ・・・誤送信はよくあること―――

 

それに、特徴な呼び方である「お姉サマ」は、自分達の師も、師自身の姉達を呼ぶのによく使用していた・・・

 

ですがっ―――??

 

 

 

璃:「メールアドレス」・・・

 

市:「メールアドレス」?

  (・・・)「Iris@・・・」・・・・イリス?

 

 

 

参考までに、市子はその時まで、この「イリス」なる人物が“誰”なのかは判りませんでした。

判りませんでしたが―――璃莉霞は、その人物の「仮想内での」名前を知っていた・・・

 

 

 

璃:それ・・・ブラダマンテの“リアル”―――

 

市:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

えええええ〜〜〜っ??!

 

市:でっ―――ではっ?!

 

璃:そぉ〜〜なんだよ〜〜〜ついに、畏れていたことが現実にぃ〜〜〜!!

  しかしなんでえ〜? なんでクリスマス期間中なのよおっ!

 

 

 

そう・・・普通の内容のははずが、普通ではないメールを送ってきた張本人こそ、

今となってはその危険性は市子も百も承知と成って来た、あの人物―――「ブラダマンテ」・・・その“リアル”からのものだったのです。

 

しかも、なんとも狙い澄ませたかのような、この訪問計画に、璃莉霞も苦情しか漏らすことが出来ないでいるのでしたが・・・

 

しかしどうして―――?

ブラダマンテのリアルが、クリスマス(その時機)を狙い澄ませたかのように、この日本を訪れるのか・・・

その理由自体は、璃莉霞も市子も知らない―――のでしたが・・・

 

ある女子生徒同士の会話を、偶然か否か清秀が聞き―――

 

 

 

女生:ねえねえ、そう言えば今年のフィギュア選手権、日本であるんだよね〜〜

女生:そうそう―――私、彼と一緒に見に行こうかなあ〜って計画中なの

女生:イイネーそれ! それに何と言っても、見どころの一つは・・・ロシアとイタリアの代表―――因縁の対決よねえ〜〜

女生:うんうん、昨年まで“女王”だったロシアの代表―――今年は女王の座奪還なるかッ!

女生:そうそう、それにお2人とも、お綺麗なんだよネ〜〜

 

清:(ふう〜ん・・・世間じゃそんな事になってんだ。

  なら―――璃莉霞のヤツも、誘ってみようっ・・・かな?)

 

 

 

おやおや? 女子生徒同士の会話を小耳にはさんだ清秀クン、なにやら奮起しているようですが―――?w

 

とは言え、清秀が知り得ていたのはそこまで―――

その(くだり)の「フィギュア選手権」なるものがどう言ったモノか、ロシアとイタリアの代表が誰なのか、そもそもいつあるのか―――

知らないので、取り敢えずの処は、ここは恥を忍んで・・・

 

 

 

清:―――なあ、ちょっといいか。

 

朋:んを? ・・・デートなら璃莉霞誘えよ。

 

清:お前は・・・誰がお前みたいな(性格)ブス、デートに誘うか!

 

朋:あ゛んじゃと、ゴル゛ァ゛! 喧嘩売っとんのか!!

 

清:オレを焚き付けたのはお前だろうがよ!

  そうじゃなくてさ―――まあ・・・その・・・なんだ、璃莉霞のヤツを・・・誘いたくって、な。

 

朋:(!)やっとその気になったか清秀クン! 安くてイイ雰囲気のラブホ、紹介してやるぜぇ〜?w

 

清:(ブホッ!Σ)アホか! 誰がそんなん聞いているってよ!!

  あんた、そんなんだから・・・

 

朋:(ケケケw)あらまあ〜w 顔紅潮(あから)めさせちゃってw 初心(うぶ)なんだからッww

  まあ〜〜冗談はさておいて、璃莉霞の奴を何に誘うって?

 

清:(たくぅ・・・)なんでも今年、「フィギュア」―――ってヤツの選手権? 日本であるんだってな?

 

朋:(・・・)ああ―――確かにあるな・・・『五大陸選手権』だったっけか?

 

清:うっげ―――世界大会かよ??

  ま・・・まあそんなことより―――その大会のロシアとイタリアの代表って、どんな奴なんだ?

  それといつあるのか―――・・・

 

 

 

清秀自身も、あの女子生徒同士の会話を偶然耳にしていなければ、何も知らなかった・・・

そもそもが「フィギュア」なる競技が何であるのかも知らないし、その競技で有名な選手の事も知る由もない・・・

だから、清秀が良く知る情報通でもある新垣朋子にその事を聞こうとするも、

のっけから冷やかされたりして揶揄(からか)われたりもしたのです。

 

ともあれ、話しを進める事として―――

そもそもの、その競技で有名な選手―――ロシアとイタリアの代表がどう言った人物像なのか・・・と、

その世界選手権自体がいつあるのか―――を、聞いてみた処・・・

 

 

 

朋:お前・・・趣味ねえことには本当にからっきしなのな。

  この2人、結構スポーツニュースとかで騒がれてるぞ?

 

清:そ、そうなのか??

 

朋:ああ・・・ま、お前みたいな“(にわ)かちゃん”が知った処で、璃莉霞の奴が(なび)くかなあ〜?w

 

清:(放っとけっての!)いいから・・・それより―――

 

朋:ロシアの代表―――てのが、別名を『氷上の美女』て呼ばれている、キシリア=アグリシャス。

  ん〜で、そのキシリアから女王の座を奪ったのが、イタリアの代表―――別名を『高貴な白鳥』と呼ばれている、イリス=アディエマス。

  それとまあ〜開催時期がクリスマスと被ってるから、リア充共には絶好の機会―――てわけよ。

 

 

 

清秀も朋子からその情報を聞き出し、直前の女子生徒達の会話も思い出して、「それもいいかもな・・・」とは思っていたようですが。

 

実は清秀も、それ以外の事は知らなかった・・・

ロシアのキシリア某も―――イタリアのイリス某も―――まさか・・・

 

 

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それはそれとして、こちらロシアでは―――

ある人物の邸宅にて・・・

 

 

 

エカ:今回はまた、随分と気合が入っている様ね。

 

キシ:ええ・・・まあ―――奪われたモノを取り返すのに、今回は願ってもない機会ですから。

   それに、今から“入り”をしてヤポンの氷に馴染んでおきませんと―――ね。

 

エカ:まさか―――あなたほどのプレイヤーが敗れてしまうなんてね・・・。

   その一報を耳にするまでは、私でさえも耳を疑ったわ。

 

キシ:そう言うあなた様も、調整は大丈夫なのです? 「メジャー」の大会も近いのでしょう。

 

エカ:近い―――とは言っても“春”からですからね。

   けれども、私に挑んでくる者は叩き潰すまで・・・ですわ。

 

キシ:フフッ―――では、行って参ります・・・“猊下”。

 

 

 

その人物が邸宅を構える地―――シベリアのウラジオストックにある立派な建物・・・

そこに住まう者こそ、エカチェリーヌ=アトーカシャでした。

そしてエカチェリーヌの会話の相手をしていた者こそ、キシリア=アグリシャス・・・

 

実は、彼女達はとあるオンライン・ゲームでは有名なプレイヤーであり、そのリアルでもあったのです。

 

それが・・・『焔帝エリヤ』と『氷の暴君キリエ』・・・

 

そう―――清秀は彼女達の事を知らないわけではなかった。

ただ、彼女達のリアルとの接点が全くない―――だからこそ“ピン”と来なかったのです。

 

 

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一方その頃―――キシリアよりも早く、日本の地を踏んだこの存在・・・

 

 

 

#106;“新”・“旧”女王相見える時

 

 

 

?:うわぁ〜・・・ここが―――ここが“お姉サマ”が住んでおられる日本なのですね・・・。

  美しい国・・・私も、いずれここに住みたいなあ―――

  そして、仮想内だけでなく、現実内でも“お姉サマ”と・・・

  キャッ! わ、私ッたら何言ってるんだろ!!

  はあ〜〜あ、浮かれてないで早く宿泊先に急がなきゃ―――

 

 

 

年の頃は14〜15、色白くエメラルド・グリーンの双眸、薄茶色の長髪を頭の両側頭部で結ぶ“ツインテール”、

あどけない表情をした少女―――こそ、イリス=アディエマス・・・

 

そしてこの少女も、例のオンライン・ゲームのキャラクターを持っていました。

それも言わずもがな、今現在に於いてそのゲームの最強の称号である『清廉の騎士』、

その保持者と言えば―――・・・『プラダマンテ』だったのです。

 

それにしてもイリス―――ブラダマンテ・・・ゲーム内でのあの性格・・・だと思っていたら、

意外にもそうではなく、到着したその日からトレーニングの開始・・・

その事はニュースや情報バラエティ、ワイドショーなどでその光景が取り沙汰されていたのです。

 

その―――メディアが流した映像を、ホテルに到着したばかりのキシリアが目にし・・・

 

 

 

キシ:(さすがね・・・「高貴な白鳥」―――前回までは危うかった“四回転”を、確実に仕上げてきてている・・・。

   けれど、それだけではダメよ―――演技の構成を組み立てていくのも熟練の技・・・それを今回は教えてあげるわ!)

 

 

 

キシリアは事実上、イリスによって奪取されるまでは、フィギュアスケートの女王足りえていました。

それが前回2位の座に甘んじてしまったのは、イリスが世に出たばかりの“新星”―――ということもあり、

またなおかつ女子選手の中でも成功例が低く、また少ないとされてきている四回転ジャンプを、

危ういながらも“成功させた”―――そこを評価されたからでした。

 

逆にキシリアは、些細なミスによって左足首を痛めてしまい、その後の演技に支障を来たしてしまった・・・

それでも2位―――と言うのは、さすがにベテランのなせる業なのです。

 

 

そして、明けて翌日―――両者は、同じリンクで、対決前に出会ってしまう・・・。

 

 

 

イリ:(あ・・・)キシリアさん―――

 

キシ:(・・・)正々堂々闘いましょう―――

 

イリ:はい―――今回はあなたも万全で・・・

 

キシ:望むところだわ―――

 

 

 

言葉・・・挨拶を交わしただけでは平然としたものでしたが、両者はいい意味での「好敵手(ライバル)」・・・

片や27、片や14と、歳の開きはあるものの、互いを刺激し合うと言った意味では、

この大会の見せ場の一つともなって来るのです。

 

 

 

つづく