<第十章;書簡>
≪一節;歴史が動く瞬間≫
〔さて・・・ここで、話の場面を一転させて。
夜ノ街のギルド内にある、頭領―――婀陀那の執務室にて。〕
婀:よし・・・出来た!
紫:―――お呼びでございましょうか。
婀:うむ、予(か)ねてから構想を練っていたもの・・・ようやく形容となったのでな、早速かの地へと、跳んでもらおう――――そう思うてな。
紫:然様ですか・・・分かりました。
さすればこの一命賭しましても、必ずやこの大任、果たして御覧に入れます。
婀:フ・・・これ、紫苑。
紫:は―――
婀:その意気込み、分からぬではないが、我らの「夢」は、未だ始まってさえもおらぬ・・・・
ゆえに、「一命を賭する」などという言葉、軽々しく使うではないぞ。
紫:あ・・・これは失礼をいたしました。
では―――・・・これより、急いでまいります。
婀:ム・・・頼んだぞ。
〔どうやら、以前からその構想を練りに練っていたモノが仕上がり、それを自分に仕える者に手渡し、とあるところへと急ぐようです。
一体どこへ――――?〕
紫:それでは・・・・。
(さて・・・・と)
ア:あっ、これは紫苑さん。
紫:え?あっ・・・これは、アヱカ様・・・に―――
コ:みゅ!
乃:みぅ・・・。
紫:あなた達も・・・・それで、どうされたのですか?
ア:いえ・・・ただ、これからお伺いしようと・・・。
それより、紫苑さんはこれからお出かけなのですか?
紫:あ・・・はい、ちょっとこれから、婀陀那様の下知でお使いに―――・・・
ア:(えっ??!)
紫:そうですか・・・今から、婀陀那様を尋ねられるのですね。
あの方も、ここのところお忙しかったものですから・・・それを、アヱカ様が尋ねるとなると、さぞかしお喜びになるものと思います。
ア:は・・・あ―――・・・
紫:それでは―――私はこれより、火急の用がありますので・・・これで失礼します。
〔執務室より、一歩出たところには、アヱカ姫と、コみゅ・乃亜達がいたようです。
そして、ここでは軽い挨拶程度で済ませておくつもりだった紫苑なのですが・・・
しかし―――今、自分がうっかり使ってしまった言葉遣いに気付かないまま、その場を去ってしまったようです。
では、その―――うっかりと使ってしまった言葉遣いとは・・・・〕
ア:(あの方・・・今、ナゼ「下知」などという言葉を・・・「宮仕え」でなければ、出てきそうもない言葉ですのに・・・)
あら、いけませんね―――他人の詮索など、決してよろしいことではありませんのに・・・
コ:みゅ!
乃:みぅ。
ア:さ・・・それでは参りましょう。
そう云えばあなた達、婀陀那さんにお会いするのは、これが初めてでしたね。
コ:ハイです―――!
乃:そうでち・・・。
ア:ウフフ―――・・・入ります。
〔そう、それは「下知」という言葉だったのですが、アヱカ姫、そんな疑問もそこそこに、頭領である婀陀那に会うようです。〕