≪五節;揺らぐ、超大国≫
タ:では、最後になるが―――「フ」の事を述べてもらうのだが、担当は誰と誰だ?
シ:ははっ―――この「白雉」(はくち)と。
レ:「鳳」(おおとり)めにございます―――。
タ:うむ・・・・では、その成果を詳らかにしてもらおうか―――
シ:御意―――
レ:では、まづ―――私達二人からして、意見が一致しているのは、
かの国は以前とは違い、遥かに弱体化しつつある―――と、いうことです。
ユ:「弱体化」・・・それ―――どういう事?
レ:はい・・・それは、かの国の国主が、既に年齢的にもお年を召されているから・・・と、云うことです。
シ:しかも―――・・・哀しむべきは、次代の世継ぎが、「暗愚」である事・・・・
タ:確か―――あの国には、子息が二人いたはずだが・・・?
レ:はい・・・確かに、主上のおっしゃられる通りです。
ですが―――嫡流であるはずのヒョウ君(ぎみ)は、生来よりお身体が余りよろしくありません・・・
シ:そこで、目下のところ重臣達の間で持ち上がっているのが、次兄のホウ君(ぎみ)の擁立です。
ユ:え・・・・ッ? でも―――ホウ君って、まだ幼ないじゃ・・・・
タ:まさか―――・・・
シ:その通りです―――・・・
レ:そして、これも、吾等二人の一致しているところ・・・・
ナ:つまりは・・・どちらを擁立(たて)ても、自分達の思いのままに出来る―――・・・と、いう肚か。
シ:そうです、そして―――頼りない君主を祀り上げた後は、自分達の思いのままに、政(まつりごと)を壟断(ろうだん)できる・・・
レ:そこには―――「中華思想」とは、かけ離れた・・・実に、いやらしいまでの駆け引きがございました・・・
タ:・・・・危ういな―――
ナ:なんだって―――タケル・・・
タ:「危うい」・・・・と、云ったのだ。
かつては総ての中心にあり、その国を軸にして動いていたモノが、今、まさに二つに割れようとしている。
そこを、第三者につけこまれると・・・・脆いぞ。
マ:どして―――☆
ユ:それは恐らく・・・「フ」が、この大陸の中心であり、「文化」「経済」「軍事」の・・・文字通り『中心』だったからよ。
マ:ふぅ~~―――ん・・・
タ:そう・・・それゆえに、各列強の「力の均衡」(パワー・バランス)が取れていたのだ。
それを、列強のいづれかが介入してみろ・・・その均衡は見事に崩れ―――
シ:大勢は一挙にして傾く―――と、云うわけですか・・・
マ:うへぇ~~―――それは、まぢぃでわないですか―――☆
ナ:どうにか・・・ならないものだろうか・・・・
〔そして最後に、このガルバディア大陸の中心を担う「フ」の事を、「白雉」・シズネと、「鳳」・レイカの二人が報告したようです。
しかし―――そこで聞かされたのは、総ての中心―――「中華思想」・・・の、源であった国の衰退化・・・
しかも、その国を二分割するほどの、まさに水面下の争いがあった―――との事なのです。
でも、それは一番に危ぶまなければならない事―――第三者の介入・・・
それも、一番に危険視しなければならない国―――カルマの事を暗示していたのです。
これが以前の・・・まだ、カルマが列強として成り立つ前の状態だったら・・・・
誰しもが頭を痛める必要などなかったのに・・・
だが―――ここで、かつてラー・ジャの「王佐の才」とまで呼ばれた男の口から出た言葉とは・・・〕
タ:フッ・・・ナニ、策がない―――わけではない。
ユ:(えっ??)
シ:(なんと―――?)
レ:(策・・・とは??)
マ:(どゆこと???)
ナ:タケ・・・ル―――?
タ:うむ・・・誰か、他に頼りになるお方に、君主になっていただくまで―――
ユ:そ・・・そんなことが出来るというのですか―――?!!
シ:そうです―――しかも、それではフ国内外にも波紋が・・・
レ:主上・・・まさか―――主上がそれをおやりになるおつもりで??
タ:フフフ・・・これ、冗談はよさんか。
ナゼに、ワシ程度の器が、この世の総てを統べれる者になれようか。
ナ:・・・・・。
マ:(あ・・・あり??)ナオさん・・・どうしたんす? 顔色が悪いですよ??
ナ:いや―――・・・なんでも・・・ない。
タ:・・・・・。
ユ:―――・・・では、そういうことが出来る方を・・・既に主上は存じ上げているので?
タ:・・・・ああ―――知っている・・・。
そう云う・・・まるで、絵空事のようなことが出来るお方を・・・ワシは、たった一人、存じ上げている―――
レ:そ―――それは??
タ:ただ・・・残念な事ながら、そのお方は未だにその強大なお能力(ちから)に、目覚めていらっしゃらない、という事・・・。
しかし―――そのお能力、一旦目覚めてしまったなら、目覚めてしまったで非常に厄介な代物だ。
巨大な運命の波に、翻弄されかねない・・・・。
ユ:そ・・・それほどまでの、お能力を有するお方・・・が―――
(はっ!!ま、まさか―――)
ナ:――――・・・。
ユ:(そ・・・そういうこと・・・だから、ナオミが――――)
マ:ありっ??! どったの? ユミさん・・・あんたまで顔色が―――・・・
ユ:皆―――悪いことは云わないわ・・・今の、主上が言った事・・・全部忘れて頂戴。
マ:はあ゛~っ゛??? なんだよ・・・それ☆
レ:副長――――?
シ:どうされた・・・というのです?
ユ:いいから―――忘れろ!!
余計な情報(ネタ)は、持っているだけでも、非常な厄介なものよ・・・
それに、総て・・・全部を知ればいいというものではないわ、逆にそんなモノが十分に命取りになりかねないから云ってるのよ。
マ:あ・・・う、うん・・・。
レ:分かりました―――・・・。
シ:それほどまでに云うのなら・・・。
ナ:(鵺・・・ユミエ―――)
タ:(スマンな―――・・・)
〔そう・・・その「あるお方」こそ、今世(こんよ)の「女禍の魂」を受け継いでいるという、あの姫君・・・「アヱカ=ラー=ガラドリエル」で、あろう事は、
この物語を今まで見てくれている、読者諸兄ならすぐに分かった事でしょう。
しかし、なまじそういう情報を持っているということは、アヱカに刺客の手が差し向けられかねない事でもあり・・・
そのことをいち早く察したユミエが、このことを忘れるように他の禽達に促したのです。〕