≪六節;『親書』の意味するモノ≫
〔閑話休題―――
その一方で、女頭領・婀陀那の書簡を携えた者は、無事フ国へ入国を果たし、
当国の国家元首である・・・「ショウ=フェイル=アレクサンドリア」―――に、面会を求め、それが果たせたようです。〕
シ:(ショウ=フェイル=アレクサンドリア;57歳;男性;一見して、好々爺に見えるこの男こそ、この世界の誰よりも権力を持つ王)
誰かな――― このワシに面会を求めておる者は・・・。
イ:(イク=ジュン=スカイウォーカー;56歳;男性;この王の左隣の位置にいる、この男こそ、「王をよく扶くる者」)
は――――・・・こちらの方にてございます。
紫:ははっ―――・・・
シ:ふむ・・・ん―――?? おや?そなたは・・・・
紫:お久しぶりにございます―――閣下。
シ:おぉ―――! 誰かと思えば、ヴェルノアの才女の臣下、コーデリア殿ではないか!!
これ・・・近こう近こう!
紫:ははっ―――では、お言葉に甘えまして・・・
シ:うむうむ―――して、何用でここに参ったのか―――・・・
いや、それより・・・公主殿はつつがなきか―――?
紫:はい・・・公主様も、日々閣下の身の事を案じておる次第でございます。
シ:おお・・・・そうか、そうか。
紫:それから、今日こちらに伺ったのは、その公主様からのお下知で参内(さんだい)した次第でございます。
シ:ほぅ・・・なんと、公主殿からの・・・・うむ、よかろう、して何用か―――?
紫:はっ―――・・・その詳細は、こちらに認(したた)めてございます。
〔なんと―――・・・この国で・・・と、いうよりか、この大陸で一番に権力のある王の前で、一つも臆した事もなく、実に親しげに会話をする紫苑・・・
しかも、今の会話よろしく・・・お互いに面識のある者同士―――とも取れなくないのですが、
今の会話の中で、お互いに「公主」という方の敬称が出てきたのですが・・・・一体誰の事を云っているのでしょうか??
それはそれとして―――ここで紫苑、婀陀那が書いた書簡を、ショウ王に手渡したのです・・・
するとそこには、季事の挨拶から、社交辞令の文言はもとより、とある重要な事項がつらつらと書き記されてあったのです。
では、その文面を見てみましょう――――〕
―――拝 啓―――
涼秋の折、つつがなくお過ごしの事と存じ上げます。
さて・・・真に不躾ながらも、早速本題に入らせて頂きとうございます。
実は、閣下に一目逢わせたき人物がおるのでありますが、いかがなものでございましょうや。
この人物は、小生の如き粗野なる者ではなく、才色兼備を地で行った者でございまして、
不肖の駄国に埋もれさせておくには、もったいない事と思い、
貴国に召抱えてもらえぬものか―――と、思い、急ぎ筆を取った次第でございます。
どうか、一目だけでも、お逢いになって下されますよう・・・
かしこ―――
追伸;余談ではございますが、ご子息のヒョウ殿のお身体の加減、いかがなものでございましょうか。
幼い時分によくお会いしていたものですので・・・御ン身を大事になされて下さいとの旨、
公主がしていたと、よろしくお告げくださいませ。
~ナタラージャ=ヴェルノア~
〔この・・・文面を見た、王と重臣は――――〕
シ:なんとも―――・・・ありがたいことよ・・・のぅ、イク。
イ:はい・・・病弱のヒョウ様の事を気にかけて下さるとは・・・・
シ:うむ・・・なんとも惜しい事よ、公主の如き者がワシの世継ぎであったなら、この身も安心して余生を過ごせるというものを・・・・
イ:殿・・・滅多な事をお口に―――・・・
シ:おっ!! おぉ―――そうであった、コーデリア殿、今のは単なるこの老いぼれの戯言じゃ、聞き流して下されよ。
紫:いえ―――・・・とんでもございません。
斯様な事を私が公主様に告げたとあっては、逆に私めが謗(そし)りを受けるやも知れません・・・
今の話し―――お互いに聞かなかった事にさせて頂きとうございます。
シ:ム、そうか―――済まぬのぅ・・・
なぁイクよ、ワシは公主殿の意見、広く用いたい気持ちではあるが・・・・
イ:それは、大殿のなすがままにされたほうがよろしいかと・・・この愚臣の意見など、あってなきが如しですから。
シ:そうか―――・・・あ、いや、判った・・・須らく了承したとの由、公主殿によろしく取り図られたい。
紫:ははっ―――・・・ありがたく、承ってございます。
〔こうして―――・・・万事は滞りなく終わり、下地の準備は仕上がり、
あとは、ショウ王と、アヱカ姫の会見を残すのみ――――と、なったのであります。〕
To be continued・・・・