≪二節;惨劇の経緯≫

 

 

〔“ブラッドフィストの惨劇”―――・・・

ヱリヤは、あのときほど自分が持っているチカラを呪ったことはありませんでした。

 

いくら様々な諸条件が重なったとは云え―――“敵”も“味方”も・・・問うことなく、

総ての命というものを、一瞬の下に奪い去ってしまったあの“黒焔”―――・・・

 

あの当時は―――ヱリヤの母親であった者を亡くし、精神的にも落ち着かないままに、かの方面にカルマの掃討に出てしまった・・・

それに加え、叩いても叩いても抵抗をやめないカルマ軍に、そこそこ鬱陶しさも感じ―――精神までも揺らめいてしまっては、

当時のヱリヤには“衝動”を―――・・・今、この戦場を埋め尽くす、ごみごみとした者共を壊し尽してしまいたい“衝動“を抑えることが出来なかった・・・

 

そして―――その“衝動”余って、ついに開放された それ は・・・

女禍も―――マエストロも―――母も―――・・・況(ま)してやヱリヤですらも知らなかった、禍々しい“黒焔”・・・

 

殺戮の狂気に目覚め―――命を奪うことを許された唯一の場で、

その“黒焔”は、ただ・・・ただ・・・生を貪った―――

敵を穿った―――

味方を呑み込んだ―――

 

そして残ったのは・・・ヱリヤただ一人のみ―――

 

気がつけば自分一人しか残っていなかった戦場の光景に、ヱリヤは半狂乱に陥りそうになりました。

 

けれども結果としてはそうはならなかった―――・・・

その理由としては、急いで駆けつけてくれたエルムと師の姿がそこにはあったから・・・

だからヱリヤは、カルマ側にならなくて済んだのです。

 

ただ―――・・・敵としてのカルマはともかく、味方を巻き込んでしまったのはまづかった・・・

当時=丞相=を勤めていたマエストロは、酸鼻なる現場の状況を見据え、ありのままを皇・女禍を報告し、

今回の戦役で亡くなった兵士の遺族に、なんと申し開きをするべきかの対応に苦慮したものだったのです。

 

それにヱリヤのほうも、そのことについて厳しい糾弾や罪過が及ぶものと思っていました。

ところが―――・・・総ての対応を、丞相と協議し終えた皇・女禍の下へと足を向かわせてみれば、

あのお方からはたった一言―――『ご苦労だった』・・・

 

そのあとはなにもなかった―――そう・・・なにも・・・

 

ただ、あの惨劇を引き起こしたのは、命を下した皇自身であるとし、

当事者であるヱリヤ自身に非難が集中する前に、帝國・シャクラディアの“皇”自らが、

その過ち―――その罪―――総てを被られたのです。

 

――申し訳ない――

 

あの方は、あの戦役で亡くなった兵士の遺族に対し、そう釈明をした―――・・・

ナニが申し訳ない―――?

本当に申し訳が立たなかったのは、自分であって、あの方なのではない・・・

それがどうして―――・・・

 

そこでヱリヤは、反省をしました。

今までにしたこともないほど、深く―――

 

そして辿り着いた結論として、師や主や母と同じく、媒介を通してのチカラの開放が行えるよう、施術をしてもらったのです。

 

それが―――ヱリヤ自身が持ちうる、 アーティファクト;【プロミネンス】 だったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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