≪三節;遠きを見据える眼≫
〔それはそうと―――戦端は各地に飛び火し、中でも“ザイブ”と“クロスクリミナル”での戦闘は熾烈を極め、
同時期にあった戦闘のうちで最も激しいものだった―――と、後世に伝えられるほどだったのです。
そのうちの一つ、“ザイブ”での戦闘では―――
この戦は、今ではそのほとんどをカルマの版図とされたラージャ勢の、旧領復活をかけてのものだったのです。
今―――西国特有の甲冑に身を包んだ騎馬武者が、『陣屋』と呼ばれる簡易性の作戦小屋へと入って行き・・・〕
武:―――注進にございます! 只今、敵勢と思ぼしき軍勢が、ワコウより南下してコンゴウを目指している模様!
ノ:そうか・・・よし―――使い番、至急予(か)ねてよりの計画通り、
コンゴウにいる者達をパライソ近辺のベクトポリスへと移住させ、かの国に匿(かくま)ってもらうようにしてもらえ。
チ:・・・やはり、現在一番の落ち目となっているわれらの国を潰しにかかってきましたな。
ノ:フッ―――上等じゃないか。
それがしたちとて、痩せても枯れてもラージャのもののふであることを、やつらに思い知らせてやる。
〔例え落ちぶれてしまっているとはいえ、彼らには“西の雄”と呼ばれていた意地というものがありました。
けれども、それだけでは強敵は撃破出来ないものだ・・・と、理解はしていたのです。
けれども―――そうであったとしても、それを口に出す者はいなかった・・・
敵わぬ相手であったとしても、全身全霊をもってして当たって行き―――そして華々しく砕け散る・・・
― 士道とは死することと見つけたり ―
例え・・・恥を曝し、生き永らえようとも、華々しく散っていくのが 士(もののふ) としての道である―――
その“道”は、ノブシゲやチカラ自身、学舎(まなびや)にて学んでいたことでもありました。
士(もののふ) としての“美しき”とはなにか―――・・・そう教え込まれ、知識としては理解できても本能的には理解までには及びもしなかった・・・
それを・・・あの時―――滅び崩れ陥ち逝く城・・・
その城の中には、ラージャの国主も―――長年彼を補佐し続けてきたシノーラ家の家長もいたのです。
現実として目の当たりにした“誇りある死”―――・・・
それを今度は自分たちで実践をしようとしていたのです。
そして集められた兵(つわもの)の顔は―――これからの“死”に怯え逝く者達のそれではなく、
“誇りある死”にその総てをかけた、まさしく強者(つわもの)共がいたのです。
その一方―――ラージャのコンゴウから、パライソのベクトポリスへと流れていく者達の列を発見した二人・・・〕
エ:ありゃ?あれはなんだろね―――
ヱ:(流民?)それに西国の衣装・・・もしかすると―――
〔これからひと戦あろうとする時期に、西から流れてくる民―――
それを見て、あることを感じたヱリヤは、流民と思われる者達の列に近づき・・・〕
ヱ:あの・・・すみません―――この列はなんなのですか。
民:おやお嬢ちゃん・・・いえね、私たちの国の代理様が、私たちが今までいたところが敵に襲われそうだから、
このたび仲良くなったパライソという国に保護してもらいなさい―――って・・・
民:それに―――うちらの殿様やお偉い様方は、前(さき)の大戦(おおいくさ)でほとんどが死んじまつった―――って云うし・・・
どうなるんだっていうんだろうかね・・・
民:なぁに―――きっと・・・きっと、おらたちの国の代理であるノブシゲ様やチカラ様が、死んで逝った者達の仇(かたき)を取ってくれるだよ。
〔西から―――パライソへと流れてくる民たちの列は、紛れもなくラージャの民たちでした。
そこでヱリヤは、その一部の者達にどういうことなのかを訊くと、彼らは口々にその理由を申し立てたのです。
けれども、それは怨み辛み―――などではなく・・・
そのことを聞くに及び、かの国が―――国を治める側と治められる側の立場が、さほど温度差のない・・・
そういった関係を築き上げていることを、ヱリヤは知ったのです。
そして―――彼らを見えなくなるまで見送ったのち・・・〕
ヱ:―――コード認識番号:297855946876・・・
―― 今いまし 昔いまし ――
―― やがて来るべき者 全能者にして主なる神が仰せになる ――
―― “私はアルバであり オメガである” ――
〜IDナンバー・パスワード オールクリア マスターニ カイセンヲ マワシマス〜
ヱ:―――陛下でございますか、ヱリヤでございます。
たった今ラージャのコンゴウ方面より、流れてくる民たちと接触をしました。
・・・はい、そうです―――カルマに追われての行動と思われます。
・・・はい、畏まりました―――ではこれより彼らの保護に回りたいと思っております・・・では。
エ:―――ねえ、お前様・・・あの方なんだって云ってた?
ヱ:まあ待ちなさい・・・
―― 主の御名において 今日のわれらの糧を ――
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