≪二節;憂慮≫

 

キ:先ほどは失礼なことをいたしまして―――申し訳ございませんでした。

  つきましては・・・一つご相談があるのですが―――

紫:なんでしょう・・・改まっての相談とは。

 

キ:はい・・・実は―――虫の知らせとでも云うべきなのでしょうか。

  この度パライソに協力を申し出ているラージャのことなのです。

紫:彼らのことでしたら―――彼らよりの直接の要請がない限り、支援をしてはならないとの婀陀那様からの伝手が・・・

 

キ:―――果たしてそれはいかがなものでしょうか・・・

紫:・・・それは何を云っているのですか。

 

キ:いえ・・・ただ―――私は可能性を述べたまでのことです。

  彼らの矜持は難い―――曲げられぬ意地・・・と云うべきものが根底にある限りは、誇りあるべき死も想定に置いておくべきではないか・・・と。

紫:(誇りあるべき死・・・)なるほど―――それで、あなたはどうされたいと。

 

キ:はい、そこで―――・・・

 

 

〔キリエが紫苑に持ちかけた相談とは、苦境に追い込まれている自分たちの国を救援してほしいと願い出ているラージャのことなのでした。

それを、キリエはどういった手段で知りえることができたのか・・・彼らと彼らの民が、現在未曽有の危機に晒されている―――

・・・とは云っても、彼らからは明確に救援をして欲しいとの要請が出てはいないので、紫苑としても苦慮はしていたようなのですが、

次のキリエの一言が紫苑の心を揺さぶったのです。

 

それが、“誇りあるべき死”―――

 

彼らは、死と云う観念を恐怖として捉えていない・・・いや、むしろ誇りあるべき死は栄誉なことであるともしていたのです。

ですが・・・それ自体はラージャの将校にとっては栄誉であり誇りであるとしても、残された民たちはどうなる―――?

 

だからこそ、ここはラージャよりの明確な救援要請は出ていないにしても、その可能性を知り得た限りでは動かないわけにはいかない―――・・・

 

そう云うことでの相談を持ちかけたキリエの意見を聞いてみるには、

キリエ自らが少数の別動隊を率い、ワコウからのカルマ軍を迎撃するラージャ軍を支援するとともに、

コンゴウからペクトポリスへと流れていくラージャの民を保護・移送すること・・・

 

またそれに伴い、手薄になっているワコウ城へ侵攻する気配を見せれば、自然とカルマはラージャに手を出せなくなるに違いない・・・

 

そう・・・このままで終わってくれれば―――

 

ここで一つ念頭に入れておかなければならないのは、キリエが知り得ているたったひとつの真実―――

今回のカルマの侵攻において、ラージャ側からは一人として損害は出ない・・・それは民にしても―――将兵にしても・・・

なぜならば、現在の彼らは、キリエの直属の上官である 騎・車騎 両将軍によって篤い庇護の下にあるのですから。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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