≪三節;無敵の付加能力≫
〔そして現実は―――・・・
パライソとラージャの国境付近である スルーガ で緒戦は開かれました。〕
ヱ:・・・どうやら来たようね、この規模だと先遣隊―――と、云ったところかしら。
エ:ンフフ〜ン―――♪ これからの闘争の景気づけ・・・と、洒落込もうじゃないか。
ヱ:ウフフ―――あまり気張り過ぎちゃダメよ、シュターデン。
エ:判ってるってさぁ〜〜―――けど、ここんとこ腕が鈍(なま)っちゃってることも、事実だしね。
ま・・・肩慣らし―――ってとこかね。♪
〔二人は・・・再び戦場に立つことに、無類の悦びを感じていました―――
片や―――帝國の双璧の 鑓 として畏れられ・・・
片や―――帝國の双璧の 楯 として畏れられた・・・
ましてや二人は、自分たちの兵士は持たず―――けれども二人にはそれで丁度よかったのです。
なぜならば・・・彼女たち二人には、無敵とも云える付加能力(スキル)・・・
万人の敵
と云うものが付いていたのですから。〕
エ:フフ〜ン―――それじゃ、景気づけの花火でもあげようか!
魔:う・・・キャ? と・・・突然足元が光ったかと思えば・・・
魔:きゅっ・・・急に動けなくなっちまったぞ??
〔突如として―――足元に強烈な光を瞬(またた)かせ、相手の影を消し去ることで一時的な行動不能に陥らせる術式・・・
裏面弐式:影灼<スタンスローター>
それこそは、ヴァンパイアが行使できる術式でした。
彼ら・・・カルラの魔物兵の視野には、逃惑うか弱き民の姿と―――それを阻もうとする二人の女性の姿を捉えていました。
そしてそれを一息に蹂躙しつくそうとしたところ、ヴァンパイアの行使する術式によって大人しくさせられてしまったのです。
しかし・・・これを見た少女は―――〕
ヱ:シュターデン・・・あなたどうして アレ を使わないの―――
エ:ハハ〜ン? こぉんなしょぼい連中に、 アレ を使うまでもないだろ―――
それに・・・今回は肩慣らしに過ぎないんだ、あんましはっちゃけちゃうのも、どうかとおもうんだけどねぇ〜
そう云うお前サマはどうなのさ―――
ヱ:あなたの云うところも、一理ある・・・と、云ったところね。
それではこちらも・・・游んであげようかしら―――
エ:お〜やおや―――♪ 私にはあんなこと云ってるのに、また随分とはっちゃけるじゃないのさ。
ヱ:・・・何を勘違いしているの、シュターデン。
第一今の私はグノーシスを開放していないし、それに・・・あなたも云っていたように、どうしてこんな雑魚共に私が本気にならなければいけない道理が?
エ:ンフフ―――云うよね〜♪
それじゃ・・・どんどん片していくとしようか―――
〔たった二人だけの存在―――しかも二人はそれぞれが本気を出していませんでした。
けれども、このたった二人の存在に、それでもカルマ軍は彼女たちの敵ではありませんでした。
まるで弄玩(もてあそ)ぶかのようなその所作にも、抗えるカルマ兵はいませんでした・・・
それに戯れで行使したヴァンパイア・エルムの術式―――
裏面拾四式:眼晦霧<ミスティッククラウド>
・・・により、視界を奪われたカルマ兵たちは、哀れにも同士討ちをする始末だったのです。〕