≪四節;畏るべき武技“闘技”(アーツ)≫
〔それはそうと―――カルマ先遣隊と、ワコウからの増援軍を迎撃しようとしていたラージャ軍は・・・〕
伝:―――ご注進! 只今、ここより五里先にて、カルマ先遣隊と交戦している何者かが率いる一軍がある由にございます!
ノ:なんだと? もうすでに先遣隊と当たっている者がいると申すのか?!
一体何者が―――・・・
チ:弾正殿・・・我らの軍はここに集(つど)っている者のみ、誰一人として先駆けを行っている者はおりませぬ。
ノ:そうか・・・するとやはり、パライソ軍が哨戒中に出会った矢先―――と、見るべきか・・・
では、それがし達はこの機をいかがすべきだろう。
チ:いかにも、しかも哨戒中ともなればわずかな手勢、それを先遣隊とは云えカルマの一軍に当たれば・・・
ノ:うむ、ひとたまりもないだろうな―――・・・とは云え、ワコウからの増援も気になる・・・
よし―――ここはやはり、パライソ軍に加勢をして、その返す刃でワコウからの増援に備えるとしよう。
その戦場となるのは・・・おそらくザイブだ―――!
〔ノブシゲとチカラの二人は、残ったラージャの将校の中でも見識のある方でした。
ラージャは―――当時以前から、東方の雄・ヴェルノアと比肩するくらいの軍事力を持ち合わせていましたが、
それがこの度のカルマ侵攻にて、領土のほとんどを奪われてしまった・・・
それゆえに、現在は一時的にでも恥を思いながら、自国の一地方であるコンゴウにて反撃の機会を窺っていたのです。
つまり―――ノブシゲとチカラは、お互いがカルマの強(こわ)さと云うものを認識していた・・・
その二人をして、現在カルマの先遣隊と交戦している何者かを危惧していたのです。
では―――彼ら二人が危惧している何者かとは・・・〕
ヱ:ちょっ―――シュターデン! あなたの衣裳に火がついちゃってるわよ!!
エ:ええ〜―――っ?! ・・・熱っちゃっちゃ〜〜!! あ・あ・あぁ・・・せっかくの一張羅が〜〜―――・・・
・・・こんのぉ〜!# あんたたち!覚悟できてんだろうね!!#
〔先ほどまでは小気味よく敵を蹴散らしていたのに、ふとした拍子にドビーからの反撃に遭い、着ていた物の端に火が付いてしまったようです。
しかも大事なコスチュームを穢された恨みと云うのは、エルムにしてみれば何とも殊(こと)の外(ほか)大きいらしく、
あたら先遣隊である彼らに、今回は使うまいとしていた自分の武技を・・・〕
ヱ:シュターデン! あなた今回は“闘技”<アーツ>は使わないって・・・
エ:そ〜んなこと云ってるバヤイでわないでしょ!!
い〜い!あんたたち・・・ここから生きて帰れると思わないこったね―――!!
―=怒り爆発=―
百拾四式・荒咬み
――ボディが〜 甘ぇぜ――
百拾四式・荒咬み → 百拾七式・八錆
――ボディが〜 ガラ空きだぜ――
百拾四式・荒咬み → 百弐拾八式・九傷
――ボディが〜 お留守だぜ――
――燃え尽きな!――
=裏百八式;大蛇薙=
Reversal≫
――これで終わりだ!――
= 無式 =
――〜へへっ・・・燃えたろ?〜――
〔闘技・・・また別の呼び方を アーツ と呼ばれるエルム固有の武技は、いつかどこかで見たことのある・・・しかも見栄えも好い体術の一つでした。
エルムは、ヴァンパイアと云う種族であったため、非常に強力な魔力を備えていました。
それゆえの、先ほどの行使した術式だったわけなのですが・・・
一つに―――エルムの真価が問われるものとすれば、件の術式ではなく・・・こちらの武技のほうにあったのです。
しかもこの闘技は―――当時からしてこの大陸にあった、どの流派の武術にもない特色―――
自分自身の 拳 や 脚 に闘気を込め、(エルムの場合では魔力と云った方が妥当か)それを相手に叩き込む・・・
つまり、エルムは徒手空拳で剣や槍に立ち向かえる―――そんな畏るべき武技を会得していたのです。
ですが・・・今回は少しばかりやり過ぎてしまいましたようで―――
それというのが、エルムと同行していたこの人物の一言にもよく表れていましたようで・・・〕
ヱ:(コスが燃えたから・・・って―――それって大体あいつの魔力で象取(かたど)ってるんでしょ?
それに・・・あ〜あ―――“ボディ”って云ってる割にはしっかり顔面殴りつけてるし・・・
しかも―――・・・“超必”発動させた後、技の硬直無視(キャンセル)させての“潜能技”・・・って―――余程頭にキテたのね。)