≪五節;予測行動≫
ヱ:シュターデン! そろそろ戻るわよ―――・・・
エ:少しは気が晴れたけど、今日はこのくらいにしといたげるわ・・・
お待た〜♪ ごめんねお前サマ―――今回のお前サマの分まで取っちゃって・・・
ヱ:いいわよ、別に―――・・・私は、自らが望んで血を流そうとはしないから。
でも・・・相手がそう望むのであれば、是非もないことだけれどね。
さて・・・予定通り血生臭くなってきたことだし―――ペクトポリスまで戻って穢れを落とすことにしましょう。
エ:あっ、それ賛成〜〜―――♪ 久々に体動かしたことだしぃ〜なんだか筋肉疲労がたまっちゃって・・・
そ云えば、ペクトポリスには秘湯があったよねぇ〜♪ そこで今回の疲れをとって〜それで甘い物の補充も♪
ヱ:(甘い物の補充だけは余計だと思うんだけど・・・)
ま・・・本戦に向けて、英気を養うとしますか―――
〔かくて・・・流浪のラージャの民に降りかからんとした未曽有の危機を払い終えた二人は、その疲れた身体を休めるために近くのパライソの町へと入り、
ようやくノブシゲ達率いるラージャ軍が、この場所・・・スルーガについた頃には―――戦場に残るはただ敵軍の兵士の屍のみ・・・
或る者は焦され―――或る者は同士を突き合い―――そして或る者は何かの強い衝撃により著しく身体を破損されていた・・・
そんな惨状を目の当たりにしたノブシゲ達は・・・〕
ノ:こっ―――これは・・・?!
チ:一体何者が・・・いや、しかし―――強兵であるカルマを、それをどのようにしたらこんな風に・・・
〔残存勢力なし―――それだけははっきりとしていました。
それにしても・・・自分たちがこの先遣隊のことを嗅ぎつけ、迎撃にあたろうとしていたところを―――
そのわずかな間に強兵とも云えるカルマ軍を殲滅させた未明の軍―――・・・
今は、むしろそちらのことに興味の対象は移るのですが、それよりももう一方の敵軍―――ワコウより南下してくる増援のことを憂慮しなければならないのです。
それゆえに暫定的な指揮官であるノブシゲは、全軍を次の戦場ともなるザイブまで移し、迎え撃つために幕府を構築させるのでした。
片や―――ワコウより南下してくるカルマ軍を待ち受けていたパライソ軍は・・・〕
伝:伝達―――わずか二里先に物音を殺しながら行軍している軍を発見、おそらくワコウより南下している者であると思われます。
紫:ご苦労―――思ってたより早いわね・・・それよりラージャの民は無事に避難したのでしょうか。
キ:・・・彼らが一人として損なうことはないと思います。
紫:・・・随分とはっきりとした物言いをしますね、何かを知っているのですか―――?
キ:いえ・・・単なる虫の知らせですよ。
〔追われ、逃げ惑うラージャの民たちが一人として屍になるのは、ありえないこと―――・・・
これだけははっきりと云えることでした。
なぜならば・・・彼らは、キリエ自身がよく知る 世界最強の将 に護られているのだから。
けれども紫苑はそのことは知らないので、逆に不審がられたりもするのです。
しかし・・・そのことをやはり―――同じ軍に参軍していたベイガンからも質されることとなり・・・〕
ヒ:―――なあなあ、キリエさんよぉ・・・オレもあの御大将と同じなんだが・・・なんだってあんなことが云えるんだ?
キ:ベイガン・・・あなたも変なことに興味を持つのね―――
けれど、そうね・・・一つ云えることは、彼らはこの私よりも遥かに実力を持っている方々に護られている―――そう云ったとしたら?
ヒ:へぇ? キリエさんよりも強い・・・“方々”!? するってと―――複数いやがるのか。
キ:そう―――・・・
遥かに―――この私が背伸びをしたとしても、その足元にも及ばないお二方・・・
そしておそらく、此度の女皇陛下の招致に応じた・・・昔からの私の上官である 母 とその 同志 の方・・・
ヒ:キリエさんのおっ母さん―――って・・・するってと!
〔未だ見ぬハイランダーの 母 とその 同志 ・・・
そのことを知るだけでベイガンは息を呑みました・・・。
ある契機により、自分の目の前にいる女性が 蒼龍の騎士 だと知った―――
蒼龍の騎士・・・魔物の類(たぐい)にて、同じ類であるカルマに対し常に脅威ともなる行動をとり続けてきた、異形の騎士・・・
そんなキリエをしても、全く及ばないともする二つの存在―――・・・
そんな驚異の将が、これから味方になると云うのです。〕