≪四節;恐怖の代名詞≫
〔そのまた一方で―――パライソの殿(しんがり)を務めていた者は、退こうとしている自分の友軍を追撃しようとしている者と、激しい戦戟を交わらせていたのです。〕
ダ:ぬぅおお〜っ!どけぇ〜〜―――い!! お前さえいなければ、お前たちの軍に大きな痛手を与えてやったものを!!
ヒ:へっ―――そうは行くかい! こちらとしてもこれが務めなんでなぁ。
お前ぇこそ、もう観念してこのオレに討たれちまいな!
ダ:おのれぇ〜・・・云いたいことを云ってくれおって!!
〔今回の―――つまるところ囮役を買って出たカルマの将には、三つの想定外の出来事が待ち受けていました。
一つは―――もはや云うまでもなく、ベイガンの驚異的な粘りにより、紫苑率いるパライソ軍には思うように打撃を与えられなかったこと。
そして・・・もう一つは―――〕
ダ:(ガクン〜☆)うむっ―――? なんだ・・・どうした・・・馬が急に―――
将:わ、判りません―――ただ・・・得体のしれない何者かに、馬が怯えているとしか・・・
将:ん―――・・・あっ?なんだ、あれは・・・!!
ヒ:・・・へへっ―――なんだい、もう片付けてきちまったのかい・・・
ま―――あんたにとっちゃ、そんなの朝飯前なんだろうけどな・・・
蒼:――――・・・・。
ダ:な―――なんだ、お前は・・・蒼い、龍の騎士・・・?
するとまさか、ノエルの奴は―――・・・
蒼:彼奴の乗っていたルシファークロウは、この私が葬り去った・・・だが、肝心の彼奴は乗ってはいなかった。
―――全く・・・我ながら腹立たしいことばかりだ・・・お前たちのような連中の策略も見抜けず、みすみす兵糧に損害を与えさせてしまうとは。
このことをあの方々がお聞きになれば、この私とて厳罰は免れまい・・・いいか―――覚悟しろ・・・
お前たち如きの馘の一つや二つで、私の罰は軽減されるものではないが、あるとないのとではあの方々への心証もまた違ってくるからな。
〔もう少しでベイガンを撃破できると確信し、攻撃の手を強めようとしていたところ・・・
突如として騎乗していた馬たちが、何者かに怯えるが如くに動かなくなってしまったのです。
すると・・・恐怖は―――低い唸り声をあげながら、殿(しんがり)を務めていたベイガンの傍に駒を並べてきたのです。
そう―――・・・蒼龍の騎士・キリエが、カルマにとってはあまり望まない形で出現をしてきた・・・
しかも今回の一件が自分の失態であるように感じ、この異形の騎士自身が脅威としている ある方々 からの叱責・問責があることを何よりも恐れていた・・・
この異形の騎士でさえ驚異の対象としている ある方々 とは何者のことなのか・・・興味は尽きぬばかりなのですが―――
それでもやはりカルマにしてみれば、それこそはまさに恐怖そのもの・・・
兜のシールドの奥より爛々と光る眼が、そのことを物語っていたと云えたでしょう。〕