<第百三章;クロスクリミナル戦役(その一)>

 

≪一節;東部の戦局≫

 

 

〔西部方面の戦線が、意外なる者達の介入により鎮められることが出来たのと同時期、

やはり東部戦線においても、戦闘の火花は散っていたのです。

 

この度の 東征 においてその一角を任された魔将たちは、自分たちが戦場に赴くでもなく、

まるで観劇をするように戦況を見計らっていたのでした。

 

けれどそこには―――・・・まだ見ぬ未知の敵を見定めるために、牙や爪を砥いでいると云う見方も少なくなかったのです。

 

それに、戦略面に関しても、クーナより南下してハイネスブルグ―――ヴェルノア・・・と、蹂躙をしていくのではなく、

クロスクリミナル台地より二手に分かれて、一方はクーナ南下組―――もう一方はヤーコク街道から通じての、

パライソ本営であるウェオブリ攻略組へと別れていく戦術を採ったのです。

 

相手のこの軍略を素早く察知した、大将軍・婀陀那下の参謀であるタケルは、パライソ側もすぐに二手に分け、

リリアを筆頭とする、クーナより南下の阻止組と―――セシルを筆頭とするヤーコク街道の抑え組とに分け、

残るイセリア率いる一軍を遊撃隊として、両方面のどちらにも救援に向かわせられる位置に配備をさせたのです。〕

 

 

イ:(敵も―――中々に考えてきたようですわね。

  あたら強兵と云う事で、二手に分かれて攻め来ようとは・・・)

セ:(それに――― 一方に気を取られてしまっては、もう一方が出てくる・・・

  東部方面は西部方面よりも将兵の数も多いことから、抹糧の分配を一つでも間違えれば取り返しのつかなくなることに・・・)

リ:(―――とは云え、当面は屯田で凌げるはず・・・そのことを計算してギリギリの数値で抑えさせているのだからね。)

 

 

〔勝算としては少なくなかったにしろ、相手が相手だけに油断がならない―――としていた三将は、普段よりも一層気を引き締めていたものでした。

 

そうこうしている間に、敵の攻撃第一波が攻め寄せてくることとなり・・・〕

 

 

ゴ:(ゴルベーザ;七魔将・キュクノス配下の将)

  クワ〜ッカッカッカ―――我こそはキュクノス様配下の一の将ゴルベーザなり〜!

  誰ぞ相手になる奴はいねぇか―――!

リ:お前の相手は私だ―――覚悟しろ!

 

 

カ:(カイナッツォ;七魔将・フォルネウス配下の将)

  ヤアヤア我こそは〜〜―――フォルネウス様の片腕であるカイナッツォなり〜神妙に勝負しろ!

セ:誰もお前たちに大人しく蹂躙される者はいないと知りなさい―――お覚悟!!

 

 

〔東部方面の侵略を任された、魔将の片腕と見られる二人の将・・・まづはその二者に先陣を任せ―――

ゴルベーザとリリアはラインベック湿原(クーナとハイネスブルグの国境付近にある湿原、丁度この時期は乾期に入っており、足場は幾分かしっかりしている。)

カイナッツォとセシルはマルトワ平原(クーナ・パライソ間を結ぶ要道 ヤーコク街道 に跨る平原。)

にて、激しい火花を散らしたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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