≪二節;虚空を睨む者達≫
〔その日の夜遅く―――深夜になってからのこと・・・
この、フィダックの城からほどなく離れた場所にて、月光に照らされながら何かを会話している、二つの魔の影がありました・・・。
銀の髪を靡(なび)かせ―――金の燃え盛る眸を持つ・・・
肌の色は紙のように褪め―――口から覗く鋭い犬歯・・・
そう・・・その場にいたのは、紛れもなく ヴァンパイア ―――
その魔物につき従っているのは、 トウテツ という、魔狼・フェンリルの一種である大型の魔獣だったのです。
その彼らが・・・一体何について会話をしていたのか―――・・・
それは最早、野暮と云うもの―――・・・
彼らは、まづ何においても生者の敵であり、自らが生きる糧を他の生ける者の命に求める・・・
そう―――彼らが話し合っていたのは、紛れもなく・・・〕
ヴ:なあ―――どうだった、今時(いまどき)のあいつらは・・・
ト:>フフッ―――何も申し上げるまでもないでしょう・・・<
ヴ:・・・だよなあ―――
それじゃ・・・ま、ひとまづ目障りなあの砦から片付けるとしようかねぇ―――
ト:>畏まりました―――では、参りましょうか・・・<
――子爵様――
〔彼らが、血に飢えた眼(まなこ)で見つめていたのは―――今は美味しいものを食べ、満腹になって眠っている、フィダックに駐屯するパライソの将兵たち・・・?
いえ―――極論からすれば、そのヴァンパイア・・・供の魔獣から 子爵様 と呼ばれた存在は、
フィダック城より見えるカルマの砦を見据えながら、供の魔獣に促していたのです。〕