≪五節;嬉しくなるような一言≫
サ:・・・・。(ふぅ〜ん・・・私って、これでも今の人間たちからしてみれば、結構イケてんのかなぁ〜♪)
セ:―――あら、サヤさん・・・どうしたんです、先ほどから手鏡ばかり見て・・・
サ:えっ?! ああ・・・いや・・・さっきさぁ―――ここのお偉いさんからちょっと褒められちゃって〜
セ:お偉いさん・・・ああ、イセリアのことね。
あの人も最近旨いことを云うようになったものよね、ハイネスにいたときにはそんなことを云いもしなかったのに・・・
サ:―――あら? それじゃ・・・社交辞令?
セ:それもあるかとは思うけれど・・・サヤさんて結構美人だし、私でも羨ましいと思うくらいよ。
サ:・・・本当に? 私が・・・?
でもやっぱそれ―――って、煽(おだ)ててんじゃないの?
セ:そう思われても仕方がないけれど―――実際綺麗ですよ。
(あとは・・・お淑やかにすれば、女皇であるアヱカ様にも匹敵するのに―――勿体無いよなぁ・・・)
〔次なるは雪月花の 花 の将―――セシル、この人物と会っていた時は、先ほど褒められた 雪 の将イセリアに云われたことが気になり、
手鏡に映る自分に うっとり していたところに―――だったようです。
そこでサヤは、先ほどイセリアから褒められたことを、セシルに話してみたところ・・・
どうもあの時の一言は社交辞令のようなものだったようで―――
けれどもセシルからは、衝撃的な発言―――・・・私が、美人? 私が、綺麗?・・・
その一言に、どうにも舞い上がってしまっていたところに――――・・・〕
サ:ルンル・ルルルルンル・ル〜ン♪
リ:あら、やけにご機嫌ね―――サヤさん。
サ:あっ、どぅも〜♪
いやぁ〜―――日頃褒められたことって滅多になかったのを、イセリアさんやセシルさんから褒められちゃって〜♪
リ:ふぅ〜ん・・・イセリアはともかく―――セシルもねぇ。
それで―――なんて褒められたの?
サ:えっ? 美人だってぇ〜〜♪(テレテレ)
リ:えぇ〜っ?! やだぁ・・・そんなこと―――?
サ:(・・・あれ? そ・・・そんなこと―――って?)
リ:結構さぁ・・・前から云われてたことだよ、それを何だって今更―――
いいよなあ・・・素材がいいのを、気付かないのは本人ばかりなり―――なぁんて。
サ:あ・・・って、え―――? 結構前から・・・って―――
リ:ああ、あなたたちって、フィダックに来る前にシャクラディアの国営大衆食堂にいたことがあったんでしょう。
そこで見た人たちって結構いるらしくてね、国営大衆食堂の美系の料理人と給仕―――って云えば、評判みたいだったわよ。
サ:・・・・・・・。
リ:そ〜んな間の抜けた顔なんてしないの。
あなたも黙ってさえいれば、私たちの女皇様にだって比肩するんだから―――
〔嗚呼〜なんたることでしょう・・・
今や、サヤの頭の中では勝利のファンファーレが鳴り響き、とても足など地に付かない状態であったようです。
それにしても―――イセリアからは軽い先制攻撃、次にセシルからは持ち上げられるだけ持ち上げられ、
そしてリリアからは、一瞬落とされた後―――今まで以上に嬉しくなるような一言・・・
そんなことに、メロメロになってしまっている給仕は、フィダック城厨房にいる自分の連れに、このことを打ち明けるのに・・・〕
サ:・・・なあ、マダラ―――今の私を見て、どう思う・・・(ウッフ〜ンv)
マ:(マダラ;サヤと同時期にフィダックへ来た美系の料理人)
・・・何か、悪いモノにでも中(あた)ったのですか。
サ:かぁ〜っ・・・これだから見る目のねえ奴は―――
いいか、あのなあ―――ここにいる美人の三将軍様がいるだろ。
マ:ああ―――雪月花のことですか。
サ:あの嬢ちゃんたちがな? 揃いも揃って私のことを美人だ〜―――なんて云うんだよ!♪
しかもほれ、この国の女皇様にも匹敵する〜だってさ―――たまんねぇよなぁ〜本当にv
マ:ふむ・・・平熱―――
サ:熱なんかねえよ! 失礼な奴だなぁ・・・
ははぁ〜ん・・・さては―――お前、妬いてくれてんだね? 素直じゃねえんだよなぁ〜本当に・・・モテるって辛いわぁ〜v♪
マ:“素直”―――に申し上げますと、私が自他共に認める自分の主が、どうして不細工でなければならないと?
それに、あなたがお仕えする君主は、その昔より 魅惑の君 として知られてきました。
云うなれば、その美貌を引き継ぐあなたが、どうして今更そんなことで感動をしなければならないのか・・・私には理解できかねます。
サ:・・・マダラぁ〜・・・手前ぇ、ちきしょう〜―――泣けてくるようなことを云うんじゃねぇよう〜・・・
〔古くから付き合いのある―――いや、ある方の “附き随い護る者”<エクスワイヤー> となった数万年前から、
“主”と“従”として存在を許されたこの二人は、互いの関係をよく知っていました。
だから少々の無礼も笑って済ませられているのですが、あまりにも鈍い自分の主に、マダラは皮肉のこもった態度で示したのです。
そんな従者の本音に、サヤは胸が詰まってしまい・・・目からは大粒の涕―――嬉し涕が零れ落ちていたのでした。〕