<第百七章;東方の異変>
≪一節;疑惑の目≫
〔西部戦線の拠点の一つであるカムロポリスに、この度パライソからの要請を受け入れた援軍の将からの使いの少女が訪れ、
また時期をほぼ同じくして、この当時、西部戦線と同じ規模である東部戦線もまた、ある古き勢力を受け入れていたのでした。
その古き勢力とは―――城主・・・
東方には、古来より吸血鬼の伝承があり、ある地方・・・ヴァルドノフスクと呼ばれている処に居城を構えている主が、そうだと云うのです。
それに、近頃ではこの方面に跋扈をしている存在―――“魔獣の乗り手”<ビーストライダー>と呼ばれている存在も、
一つの括りとしてヴァンパイアの種属ではないか・・・と、囁(ささや)かれ出していたのです。
その事実を突き止めようとしていた花の将セシルは、ふとしたきっかけで知ることとなったビーストライダーの実態を掴むため、ある人物の近辺を探っていたのです。
そのある人物とは―――・・・〕
サ:ふわぁ・・・ぁ〜あ・・・!
マ:不謹慎ですよ、サヤ様―――
サ:るっさいなぁ・・・判ってるよ―――
けどさぁ、あのセシルって人の・・・こっちを見るプレッシャーたるや尋常じゃなくてさ、私ゃ夜も寝られやしないよ・・・
マ:―――悪いことはできませんね。
〔今日も陽も高いうちからどこか寝惚け眼なドジっ子メイド―――
そう、理由の如何(いかん)がどうであれ、セシルが疑問を抱いていたのはサヤだったのです。
けれど・・・あの日以来―――満ちた月から次第に欠けて行き、最後の半月より数日が経っていたころ、
噂のビーストライダーの活動がパタリと止んでしまったのです。
それでもなお、セシルはサヤに何らかの怪しい動きがないものか・・・と、探りを入れていたのです。〕