≪二節;ある一大事件≫
〔これはそんなある日の事情―――とある問題が、東部のフィダックに起きていたのです。
どこか深刻な顔をして、食材と仕込みの済んだ料理の確認をしている料理人の姿を・・・〕
マ:―――・・・。
サ:―――あれ?どうしたんだい、マダラ・・・
マ:ああ、サヤ様―――いえ、ちょっと・・・お耳の方を・・・
サ:―――んだってぇ?! 足りない?
マ:はい―――昨晩、今日の仕込みを終えたときには確かに数を確認したのですが・・・
サ:あ・・・ああ―――だったらあの子の仕業じゃねえの?
〔東部方面においての食の管理をするために、フィダックに来ていた料理人マダラが、
どうにも腑に落ちないことがあるとメイドのサヤに話を持ちかけたのですが、
サヤはある存在を否定しないまでも、とある者のことを引き合いに出していたのです。
そのある者とは―――・・・
実はその人物が所属するある組織においても、その人物にある嫌疑がかけられ、問い詰められている最中だったのです。〕
ユ:ちょっとマキ・・・いいかしら―――
マ:ほえ? どうかしたんすか―――ユミエさ・・・
ゴスン〜―――☆
マ:いったあ〜い! なんなんですか―――いきなし!
ユ:すっ惚(とぼ)けるんじゃないの、またあんたなんでしょう―――私のアベカワモチ食べたの!!
マ:ああ〜あれ―――冷っこい餅とお砂糖塗(まぶ)した黄粉(きなこ)がまた絶妙で―――って・・・違う違う!
あたしはそれ食べてませ〜んて!!
ユ:でも、あんたには前科があったわよねぇ―――・・・
マ:ええ〜っ―――そんな・・・もう随分と前のことじゃないっすかぁ〜
そりゃ、ま、確かにあたしは食いものに目がないけど〜〜―――・・・
ユ:・・・ふん、まあいいわ―――確かにあんたの云うように、過ぎたことをとやかく云ってもあのカステーラは戻ってはこないし・・・
けど、今回のミッションの私的ご褒美は―――・・・
マ:(う、うわ・・・またおいしそーな水羊羹―――って、そのことをあたしに云うからには罠だってことがバレバレなんすけど・・・
けど―――あれ? だったらどうしてユミさん、あたしにそんなことを・・・)
〔今の二人は、タケル私設の情報集団―――=禽=の“鵺”ことユミエと“鵙”ことマキのやり取り・・・
しかもどうやらこの時、ユミエがあとの愉しみに―――と、秘かに隠しておいた甘味を、
またしてもマキに食べられたのではないか・・・と、彼女に疑惑の目を向けていたのです。
そのことに、反対答弁として やっていない ―――と、マキは云うのですが、
それをユミエは納得しないまでも、罠の匂いがぷんぷんと匂ってくる者を容疑者の前でひけらかせて来たのです。
そんなモノについぞマキは目を奪われそうになるのですが・・・マキも学習能力がないわけではないので、
先輩格であるユミエの行動に疑問を感じたものでしたが・・・
実は―――このユミエのご褒美を、虎視眈々と目を光らせている存在がいたとは・・・彼女たちも知らなかったことでしょう。
それはそうと―――こちら、フィダックでは・・・〕
サ:あ〜にやってんだ―――お前・・・
マ:ああ―――少々細工を・・・この葛切りの餡の中に、特殊なものを仕込ませました。
何、外見では分かりにくくなっていますので、必ずかかると思いますよ―――(ニヤリ)
〔なんと―――こちらのほうでも、ある対策として甘味の中身に特殊な―――云うなれば 芥子 と云うものを仕込ませたようです。
ですが、そう・・・これでは必ず実行犯(摘み食い)に天罰が下る仕組み―――
それにどうやら今回の事件に限っては、マダラも・・・果てはサヤも、真犯人に心当たりがあるようなのですが―――・・・〕