≪二節;招かれる最悪の状況≫
〔―――とは云え・・・西部の各戦線共々、状況としては同じでした。
その一つ、キリエとベイガンが陣を張っているパルキネッセの砦においても・・・〕
キ:(兵士たちの士気が極端に低い・・・無理もないわ、彼らの活力となるべき食糧がこうも少なくては。
私は、自分のグノーシスのお陰である程度は我慢が出来るけど、ベイガンやその他の人たちまではそうではない・・・
このまま―――望まぬうちに戦闘に入ってしまえば・・・それも、急襲でもされたら一溜まりもないわ。)
〔彼女たちがいる戦線だけではなく、他の西部各戦線においても、食糧不足は慢性化していました。
そんな状況に晒されながらも―――いや、こんな状況だからこそ、カルマの攻勢は手が緩められるわけがないとしていました。
それどころか、状況がこうなるよう、向こう側が好んで造り出しているようにも思えたのです。
ともあれ―――キリエとしては、この・・・何とかしたい事態を、何とかしたい―――とは思うのですが・・・〕
ベ:おう―――キリエさんよ、ちょいといいかい。
キ:どうしたの、ベイガン――
べ:これからのよ、こちらっ側の―――新たな展開について・・・
キ:・・・その前に、頬が落ちてるじゃない―――ちゃんと食べているの?
べ:え?あ、ああ―――・・・当ったり前だろ、それにあんたですら少食でやっていけてるんだ、オレに出来ねぇはずが・・・
それによっ―――ここんとこ食い過ぎちまって、鎧の紐を緩めてる始末よ、だから・・・オレの分は、部下の奴らに―――
キ:―――バカッ!どうしてちゃんと食べないのよ!!
あなた一人の食い扶持を減らしたところで、そんなには変わりはしないのよ。
それに・・・確かに私なら大丈夫―――けれどそれは、私の持つグノーシスと云うアイテムからのチャージを受けているからに過ぎないのよ。
それを―――・・・あなたまで空きっ腹で闘って、どうしようというの!?
〔キリエの准将であるベイガンも、以前よりかは痩せこけて見えました。
しかも、やはりキリエが心配していた通り、ベイガンは自分の割り当て分でさえも部下たちに回し、彼自身はここ一週間ほど空腹状態でもあったのです。
この危機的状況を鑑み、キリエは今一度―――紫苑・チカラ・キリエ・タルタロス・ノブシゲらによる五者協議を設け、
再びコヤリの襲撃を提案しようとしていたのですが―――・・・
それよりも前に―――〕
兵:大変だ〜〜―――敵襲〜!!
キ:―――なんですって??! しまった・・・先手を打たれた?!
〔一瞬―――大地の揺さぶりとも思える地響きとともに・・・どこかで聞いたことのある魔獣の嘶き・・・ オピニンクス 。
そう、またしてもカルマ擁する 有翼魔獣兵団 による強襲を、戦術の発動前に打たれてしまったのです。
しかも、間の悪いことにパライソ軍の兵士は皆空腹のまま―――
そうなれば、自分の大切な人も―――・・・
そう思った途端―――キリエの足は、自分の准将の下へと向いていたのです。
けれども―――・・・〕
べ:ケッ―――! どっからでもかかって来やがれってんだ!
魔:ケ―――ッケケケ・・・バカかお前ぇは。 空きっ腹のクセにヤセ我慢するもんぢゃねぇ〜よ!
ベ:・・・なんだってお前ぇらがそんなこと―――
魔:ケケケ―――知ってるってか? そりゃ〜当然よ・・・
魔:ナニせ、モレたちがここに着くまでの、お前ぇたちの食べるもん―――
魔:オレ達がスベテ頂いちまってんだモンよ〜〜w
べ:〜〜んだとおぅ―――!? じゃあなにか?オレ達の軍の兵糧が少なくなっているってのは―――・・・
ダ:ククク―――・・・そう云うことだ。 だが、少しばかり気付くのが遅かったようだな。
べ:なっ―――?! て・・・手前ぇは―――ダンダーク!! こんのヤロウ〜〜・・・ふざけた真似をしやがって―――!
ダ:フン・・・今まで辛酸を舐めさせてくれた礼だ―――受け取れい!!
〔果敢にも、ベイガンは自らの得物である 双顎 を手に取り、襲い来た敵と応戦する覚悟なのですが・・・
そこで耳にした思いがけない事実―――と、因縁浅からざる相手の出現にて、冷静な判断が出来なくなっていたのです。
けれど、そう・・・西部方面のパライソ軍の慢性的な食糧不足は、彼らが狙って起こしていたことであり、
今までは力押しの作戦が主流だったカルマからは考えられもしない高度な計略に、
そう云う事が出来る智者が向こう側に付いている―――と、思わなければならないのですが・・・
しかし―――ここにきて、ちゃんと栄養を摂取していないツケが・・・つまり、相手からの攻撃に反応を鈍らせてしまったのです。
そしてそこには―――ただ・・・最悪の状況だけが残されていたのでした。〕