≪四節;サン・ピラー≫

 

 

〔しかも―――時期を同じくして、ヱリヤが東寄りの北の方角をふと見上げた時、ある現象を視認したのです。

而してその現象こそは―――・・・〕

 

 

ヱ:(むっ―――あれは・・・ サンピラー ―――!

  フフ・・・なるほど、総てにおいて機は熟せり―――か、ようやくわが娘も、皮一つ脱却する機会を得ようとは・・・)

 

 

〔ヱリヤが、少女の姿のままでカムロポリスの陣地の片隅で、何かの思索に耽っているとみられたとき、

丁度、パルキネッセのある方角から、地上より立ち昇りたるある気象現象を目にしたのです。

 

それこそが サンピラー ―――・・・

 

普段、雪などの気象現象は、水蒸気が空中に漂う塵や埃と結びつき、結晶化することで地上に降り注ぐ―――と、考えられていました。

けれども・・・時たまに、地上からの上昇気流により、地上に舞い降りた雪が、再び天に舞い上がるかのような錯覚を起こす現象があると伝えられる・・・

しかもこの時のように、その現象に陽光が当たることにより、あたかも光の柱が地上から立ち上ったように見える現象・・・

それがサンピラーと呼ばれるものなのです。

 

しかし―――ではなぜ、自然界においても稀に見られるこの現象が、しかも初夏であるこの季節に突然として現れたのか・・・

その原因が―――・・・〕

 

 

べ:ぐっ・・・ち、畜生〜〜―――ち、力が入りゃがらねぇ・・・い、いつもだったら、こんなヤツなんざ、屁でもねえの・・・に―――

ダ:ぐははは! だからこそよ!

  あるお方の指示により、敵の兵站戦を襲え―――そうすれば、オレ達に抗う力も気力ね失せるであろう・・・そう策を授けられたのだからな!

  それに・・・どれほどこの時を待ったことか―――今までオレの手柄を台無しにしてくれたお礼、まとめてさせてもらうぞ!!

 

べ:(すまねえ・・・キリエさ―――)

 

 

〔やはり―――とでも云うのでしょうか、所詮空腹の体調のままではいつもの実力は発揮できず、

キリエの大切な人は・・・易々と、敵の将校の手にかかってしまったのです。

 

そしてその現場を、一番見てはいけない人物が見てしまったなら―――・・・〕

 

 

キ:ああっ・・・ベイガン―――!

 

ダ:クク・・・遅かったな―――だが、あんたの相手はするな・・・と、あるお方より云われているからな。

キ:―――待て! 誰だ・・・一体誰から云われた!

 

ダ:フッ―――知りたいか、だが知ってしまったらあんたはさらに絶望するだけだぜ。

  だがまあいい・・・このオレでさえ、自分の目や耳を疑った事実をあんたにも教えてやろう。

  この策を授けたお方こそはな―――・・・

 

キ:(そんな・・・莫迦な?!)丞相―――?! ・・・有り得ない―――そんなことは決して!! あの方が、私たちを・・・

ダ:フン・・・いくら疑おうが、好きにするがいい―――だが、現に・・・なあ。

 

キ:うるさい―――黙れえぇ〜!

ダ:おおっと・・・剣呑剣呑―――ここであんたに弑られちゃ、元も子もねえからな。

  それに丁度潮時だ―――さらばだ!!

 

 

〔その時キリエが目撃してしまったのは、敵将からの攻撃を受け、うつ伏せに倒れてしまったベイガンの姿でした。

 

キリエが・・・ガク州司馬の地位について以来、寝食を共にし―――自分でさえも気付かぬうちに、彼と云う存在を意識していた同志の・・・変わり果てた姿を・・・

そのことに奮起し、相棒の仇を取ろうと身構えたのですが・・・敵将が去り際に残した言葉にキリエは動揺してしまい、ダンダークは辛くも虎口を脱したのでした。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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