<第百九章;焔を喰らう者>
≪一節;寝所(しんじょ)にて≫
〔今回、自分が留まっている拠点の砦から近い場所にて、自らの娘にして部下である者の成長を見届けたある人物は。
肉体を動かせていると云うべき精神と云うものを、現在器としている少女の肉体へと戻ってきたのです。
けれど確か―――精神が肉体を離れたときには屋外だったのに・・・今、目覚めてみると、ヱリヤは砦内にある寝台の上に横臥(よこたわ)せられていたのです。
“少女”―――でありながら、自分がお仕えする、とある武将が到着するまで既存の将校たちのご機嫌をとると云う役目を担わされ、
そのことによって疲労がたまり、眠ってしまったのだろう・・・とされ、砦の責任者である者が気を利かせて少女をここまで運んでくれた・・・
私自身は未だ静観を決め込んでいると云うのに―――・・・
そんな人間たちの思い遣りに触れ、また自身のしていることに悪びれたヱリヤは、早速彼らが作戦を開いている部屋に足を運んだのです。〕
ノ:ふぅむ・・・案としては出るのだが―――決定的なものが、どうも・・・な。
将:そうですな―――幸い援助に来てくれる将軍がご到着されていないとは云え、我々のこの体たらくを見れば失望しかねませんぞ。
将:そう云えば・・・あの可愛らしい伝令殿が来られてどの位経つのか、それにしてはのんびりとし過ぎているような―――
ヱ:・・・あの―――
ノ:おお、これは伝令殿、もうよろしいのですかな。
まあ、そなたも幼い身であるのだから、このような場所に立たされ、戦場の瘴気と云うモノに中(あ)てられたのでございましょう。
ヱ:(参ったな・・・)
―――いえ、もう大丈夫です。
それに、ここで話し合っていることを洞主様にお話ししないと―――なにしろ、私が寝台に寝ていた時に連絡が入りましたので・・・
ノ:なに―――?! それは実(まこと)か・・・!
将:ヤレヤレ―――ようやくご到着か・・・
将:それにしても、我々の置かれている現状が正しく将軍殿にお伝えできるのか・・・
将:そうだとも―――第一こう云う事は、お嬢ちゃんのおままごと遊びと違って、人数人を弑して成り立つことでもあるし―――・・・
ノ:おい、その位にしておけ―――それよりヱリヤ殿、あなたの主はどのくらいしてこちらに来られると・・・
ヱ:・・・あと拾五画ほどあれば―――でもその時には、あなた方のことは悪く云いませんから。
どうかこの私にお任せを―――・・・
それまでの間に、あなた方は疲れたお身体をお休めしていてください。
その後―――私の主・・・洞主様と議論を交わせてみてはいかがでしょう。
ノ:ふぅむ・・・そうだな―――各々方、いかがなものであろう。
将:そうだな、ここは一つその方がご到着するのを待つしかないか―――
将:それにしても・・・洞主―――ゾハルの主・・・無事で済めばいいのだが―――
〔そこでは、今後の戦局の展開を図るべくの作戦会議が開かれていました。
そんな最中にヱリヤは途中から入り、自分の不甲斐なさを心の内で詫びたのです。
しかし将の一人からは当然とも云える一言―――
そこではまさに人を殺めるための戦法であり戦法・・・それをいかに味方の損害が少なくなるように定めた法を話し合われているのですが、
そんなモノを少女が一緒に聞いて何が分かろうか―――と云う事なのですが、その少女の一言にてようやく来(きた)るべき援軍の将軍が到着することを知ったノブシゲ達は、
その将軍の持っている数々の伝説に固唾をのみながら、各自の部屋にて待機したのです。〕