≪三節;ファイア・ドレイク≫
〔しかし―――その作戦こそは、先般紫苑が発動させたそのものであり、しかもカルマに策を看破されて大敗を喫したことでもあったのです。
それに、事情を知っていると云うのならば、ヱリヤがこの事態を知らないはずもないわけなのでしょうが・・・
するとこの時、天から降った来たような未曽有の災厄が、カムロポリスの砦を包もうとしていたのです。〕
兵:たっ・・・大変〜――― 一大事にござります! 砦に火が・・・
ノ:―――なんだと?!
将:・・・おお、なんということ―――
将:またしてもカルマに先手を打たれたのか〜―――!
〔ノブシゲ達が何らかの手を講じようとしている矢先に、またしてもカルマからの奇襲―――火計が発動し、砦全体に火が回り始めたのです。
しかも、燃やすモノに油などを染み込ませて、燃えやすく消しにくくしてあったため、カムロポリスの砦は一画を待たずにして火の海に沈むところだったのです。
けれども―――・・・
そう―――けれども、幸いにしてある存在がその砦にいたために、火による被害は広がらなかったばかりではなく、
これからの作戦行動に差し障りがなくなってきたのです。
しかし・・・一体何者が未曽有の大火を―――?〕
ヱ:ほぉぅ・・・これはこれは―――景気よく燃え盛っているものだな。
ノ:ヱリヤ様―――感心されている場合では・・・
ヱ:ノブシゲ殿、皆を落ち着かせたまえ・・・この程度の炎など、物の数に入らぬ―――
このヱリヤのいる前では・・・な。
ノ:なん・・・ですと?!
将:おお?! どうしたことだ―――風も・・・況してや雨すら降っておらぬと云うのに・・・
将:炎が・・・鎮まって行く―――?!
ノ:―――なんだと?ヱリヤ様、これは一体―――・・・ヱリヤ様?!
ヱ:フフ―――・・・これほどの量の炎を喰らったのは久しぶりだ・・・ノブシゲ殿も各々方も、よいものが見れるぞ。
わが名は ヱリヤ=プレイズ=アトーカシャ ―――かつて皇国に在籍をし、ファイアドレイクと呼び名されたわが能力を垣間見るがいい!
〔ファイアドレイク―――“焔を喰らう者”・・・その者はまた自己発炎能力<パイロキネシス>を兼ね備えており、
身の回りにある、火が起こる現象を喰らう性質を持つと云われている。
カムロポリスで発動された火計は、その砦にいたとされたファイアドレイクによって阻止されてしまいました。
けれどそこにいたのは少女―――
ですが、その少女が火計の炎をその身に取り込んだことで、歴史に名を残す武将の姿に変貌することなど、
この場にいたパライソの将校も、敵であるカルマの将兵も知る余地すらなかったのです。〕