≪四節;真紅(くれない)の騎士≫
〔西部戦線の一つであるカムロポリスの砦を襲った未曽有の炎・・・
しかしその炎はカムロポリスを火の海に沈めることはなく、鎮火させられていった―――
いえ、その砦にいた者の証言からは、鎮火も“自然鎮火”ではなく―――ある人物の能力によって、火は取り込まれてしまった・・・と云うのです。
そう―――たった一人の少女・・・古(いにしえ)に ファイアドレイク とあざ名された、たった一人の少女・・・
いえ、その表現も今となっては妥当ではありませんでした。〕
ノ:ぬおっ―――ヱリヤ様の身体から・・・火が?
将:い、いかん―――早く消し止めねば!
ヱ:うろたえるな・・・それに無駄なことをしてはならない―――この炎は、私自身が発生させているに過ぎない。
それに・・・良かったな諸君、この私の真の姿を拝められる―――その瞬間に立ち会えて・・・
〔カムロポリスを包み込もうとした炎を総て取り込んだ無理が祟ったのか、少女の身体からは不自然とも思える炎が噴き出していました。
それを見て焦ったノブシゲ達が、ヱリヤから発生している炎を消し止めようとしたのですが・・・
何を隠そうこの炎こそは、幼生固定されたヱリヤの呪縛を解くためのモノ―――
その証拠に、少女と云う古い殻を破って姿を見せた、ヱリヤの真の姿が・・・〕
ノ:お―――おお・・・女・・・だ、それも人間の―――(それになんと素晴らしい・・・)
〔そこにいたのは、女性―――・・・豊満な胸を持ち、括れた腰つきをしている・・・紛れもなく人間の体つきをした女性がいるのでした。
ですが怪異に思われたのは、素肌に焔を纏わりつかせ―――それが普通の人間ではないことが知れるのです。
そして彼の者のもう一つ普通ではないところは、その焔を・・・自らの能力により、見たこともない鎧に変化させたこと・・・
しかし、その姿こそが―――・・・〕
ヱ:ふぅ・・・何万年ぶりになるかな―――この姿に戻ったのは・・・
それにしても・・・下らぬ―――下らぬ座興だ、興じるのも値はしない。
面倒だが、私が直接手を下すとしよう、なにしろこれからやらねばならぬことが山積してあるのでな。
〔不敵な笑みを浮かべた真紅の騎士は、今回の火計の実行者を見つけ次第、その者が率いていた実行部隊もろとも灰塵と化してしまいました。
そしてこれからなさねばならぬことについて話し合わなければならないため、僅かな抑えをカムロポリスに残し、
自身はノブシゲを伴い、この西部戦線の責任者でもある紫苑が居座るコーリタニへと発ったのです。〕