≪二節;誘(いざな)いの言葉≫
ア:お早うございます―――
婀:おお―――これは姫君、丁度よいところへ・・・ちょっとこちらへ来て下され。
ア:(え?)は、はい―――あの・・・なんでございましょう?
婀:うむ・・・実はですな、妾の名代として、とある処へ出向いてもらいたいのですよ―――・・・・
ア:(名代??) は・・・・はぁ―――― それで、どこへ―――?
婀:フフ・・・それはの―――
〔その行き先こそは、当時をしての「中華」の國。
ありとあらゆる物事の中心――――文化・経済・軍事・流行・・・・
そのどれをとっても、他の追随を許さない、まさに『粋』の頂点に到達した場所―――それが『フ国』。
しかも、その都のウェオブリ・・・だというのです。〕
ア:(そ・・・んな―――)
あ・・・あの、よろしいのですか?? こんな田舎出のわたくしが・・・よりによって、大都会のウェオブリ―――だ、なんて・・・
コ:ほ・・・ほえぇぇ・・・
乃:・・・・し、しごいでし・・・。
婀:フフフ・・・何も、そう驚かれることではありますまい。
姫君ほどのお方なら、遜色なさいませぬよ・・・。
ア:そう―――・・・ですか・・・婀陀那さんにそういわれると、心なしか自信がついてまいりました・・・
ありがとうに存じます――――
婀:いえいえ―――何の、何の・・・ですよ。
ア:それでは―――出立の日時は?
婀:うむ、二日後の、張の刻(約10時30分前後)で、いかがですかな?
ア:そうですか―――分かりました。
では早速、身支度を整えてまいります。
婀:む―――あ、そうそう・・・一つ大事なことを云っておくのを忘れておりました。
ア:・・・なんでございましょう―――?
婀:今回は、供は二人まで・・・それと、道案内は紫苑がやりますので―――
ア:お供が・・・二人? それに、紫苑さんまで??
婀:ええ―――何しろあの者は、あなた様のお世話をしており、かの地にも詳しゅうございますからな。
ア:は―――はぁ・・・。
婀:では―――そういうことで、よろしく頼みましたぞ。
〔この時、決定した事項とは、アヱカが婀陀那の代理として、フ国は都のウェオブリに赴く・・・と、いうこと。
しかし―――これは、捉え方を間違えでもすると、単なる「都見物」に終わってしまうのですが・・・
実のところ、婀陀那は・・・その真の目的を、未だに話さないでおいたのです。
それよりも、アヱカ姫―――今は自室に戻り、旅の支度を――――
そして足りないモノを求める為、町に出ていたところに・・・こんな、意外ともいえる人物が、アヱカの前に――――
でも、それは紛れもなく・・・〕
キ:どうも―――今日は。
ア:はい――――あら、お婆さん。
キ:はい、そうですよ・・・。
ア:どうも―――その節は・・・
キ:いえいえ、どういたしまして。
それよりも―――あなた、今度大都会へ行きなさるようですねぇ?
ア:はい・・・・そうですが――――でも、どうしてキリエさんがそのようなことを??
キ:不思議・・・ですか――――?
コ:みゅ―――!
ア:あ・・・っ、コみゅちゃん?! 道理で・・・いないと思っていましたら―――
コ:てへへ―――・・・
ア:――――と、いうことは・・・そうですか、コみゅちゃんから、この度の事を・・・・
キ:えぇ〜〜―――ところで、厚かましいのを承知で申し上げるのですが・・・・
その「都見物」・・・この婆めも、ついて行ってかまいませんかな?
ア:えっ――――でっ・・・でも―――
今回の供は、二人まで―――と、いうことになっていますし・・・
乃:あの・・・
ア:はい―――なぁに?乃亜ちゃん。
乃:はい・・・あたちたち、ふたいだけだったや、ここよぼそいかや―――・・・
コ:それでアタシが、キリエさんに声かけたのみゅ。
ア:そうだったの―――・・・。
うぅ〜ん・・・そうですわね・・・コみゅちゃん・乃亜ちゃん二人ともだったら、わたくしの目が行き届かないこともあることと思いますし・・・・
ならば、事前に婀陀那さんに相談をして、「三人で―――」と、許可をいただくことにいたしましょう。
〔その人物こそは、『キリエ堂』の店主、キリエ婆さんだったのです。
それにしても、キリエ婆―――今回の『姫君都へ行く』の報を、どこで聞いたのか・・・
まづは、それから切り出してきたのです。
そのことにはアヱカも驚きはしたのですが、とある者―――コみゅが、キリエの肩口からひょっこりと顔を出すにつれ、
その疑問も氷解したようです。
そう、つまり・・・キリエ婆さんは、コみゅよりこの事を聞き出し、
また自分も、この世の名残りとばかりに、アヱカについていくことを志願したのです。〕