≪三節;婀陀那と、キリエ婆≫
〔そして・・・あらかた旅支度を終え、あることの承諾を得るために、婀陀那の執務室のドアを叩くアヱカとキリエ婆。〕
ア:お邪魔いたします―――
婀:(ん―――?)おや、どなたかと思えば、姫君――――に、そちらのご老体は?
キ:初めまして―――・・・私は、ここの街の隅のほうで、商いをさせてもらっておる、キリエと申しますじゃ。
婀:は――・・・キリエ・・・とな?
―――と、なると、ひょっとすると『キリエ堂』の??
キ:はい・・・いつぞや、あなた様が、ここの頭領格に収まった時分に、
私の孫娘が、お祝いを持っていった・・・と、思ったのですが?
婀:ああ・・・・確か、齢20余りの娘さんでした・・・な。
それは判りましたが・・・姫君とキリエ殿が、揃って妾に何か御用・・・でも?
ア:それはわたくしから・・・
実は、近日中にフ国へ赴く際に、わたくしの供は二人まで―――・・・と、申されていましたですよね?
婀:はぁ―――・・・その通りですが・・・それが何か?
ア:そこで、その供の枠を、もうお一つ増やして頂けないものでございましょうか?
婀:―――――と、申されますと?
ア:二人は―――コみゅ・乃亜ちゃんたちとで、すぐに決まったのですが・・・
何分にも、二人ともまだ幼い事でありますし、わたくしの目も十分に行き届かないことと思いまして・・・
そこで、彼女たちのお守りをキリエさんにお願いいたしたいのです。
婀:ほぉう――――・・・
キ:・・・・・・。
ア:あの、ダメ・・・で、ございましょうか。
婀:・・・・・・。
キ:・・・・・・。
ア:あの・・・婀陀那・・・さん?
婀:フフフ・・・成る程―――そういうことでしたら、一向に差し支えありませぬよ・・・。
ア:そうですか―――ありがとうにございます。
婀:確かに――――幼な児というのは、その興の深さゆえにあちらこちらと嗅ぎ回る習性というものがある・・・
それが、一人ならずも、二人ともなると―――・・・
そういう、姫君の心労を判ってやれぬとは、妾もまだまだ―――・・・と、云ったところですか、な。
よろしかろう、姫君の申し立て、ご尤(もっと)もである――――と、いうことで、一つ供の枠を拡げさせましょう。
つきましては―――キリエ殿、あの二人の幼な児・・・しかと頼みましたぞ。
キ:はいはい―――子供をあやしつけたり、躾けたりするのは年寄りの役目・・・ですからねぇ。
その大任、謹んでお受けいたしますよ。
〔そこでなされた決定事項とは、アヱカの供の枠が一つ増えた・・・と、いうこと。
アヱカについていく、二人の幼い子供の形(なり)をした者・・・コみゅ・乃亜―――から、目を離さないように、
キリエ婆さんが、しっかりとこの子達の保護・管理をするためについていくということだったのです。
そして―――今は馬車の中・・・
滞りなく、フ国は都のウェオブリに着き、その宿にて、こんな事があったようです――――〕
コ:わぁ〜〜―――い! わぁ〜〜――――い!♪ 明日から、都見物みゅ〜〜♪
乃:わぁ〜〜―――い! わぁ〜〜――――い!♪
ア:まぁっ―――二人ったら・・・
キ:あぁ〜〜あ・・・これこれ、もうはしゃぐのはおよし――――
コ:はぁ〜〜―――い、てへへ・・・
乃:てへへ・・・
紫:ウフフ・・・それにしても―――余程に仲がいいのね、あなた達。
コ:はいっ―――!です、みゅ♪
乃:うんっ――――♪
ア:それはそうと―――・・・明日の日程の確認をしておきましょう。
紫:そうですね。
キ:ささ―――コみゅ、乃亜・・・・こっちへおいで。
コ:えっ?? でもぉ―――・・・・
乃:みぅ・・・・・。
キ:お二人はね―――・・・これから大事なお話があるんだって。
だから・・・私らは関係ないんだから、隣の寝室に行ってようね、その代わりに、昔話でも聞かせてあげるから―――ね?
コ:・・・・はぁ―――い・・・。
乃:・・・・わかりまちた。
〔どうやらご多分に漏れず、コみゅと乃亜乃二人は大はしゃぎ―――・・・余程に、大都会に来ている・・・と、いうことが嬉しかったのでしょう。
でも、そこはそれ――――キリエ婆さんが、上手く嗜(たしな)めてくれたようです。
そしてそれからは、アヱカと紫苑は明日の段取りを―――
キリエ婆と、コみゅ・乃亜は、隣の寝室で、二人の邪魔にならないように・・・そして明日の事に備えて、早目に床に就くようです。
ですが――――・・・この時・・・・老婆の口からは、実に若々しい声で、こんなことが――――・・・・〕
キ:コみゅ・・・乃亜・・・・明日、手筈通りにあの場所へ赴くわよ・・・・。
コ:分かっています―――――
乃:キリエさまぁ―――――