≪三節;主の御名において≫
――主の御名において――
キ:(はっ!)―――・・・。
紫:どうしたのです―――キリエ殿。
キ:・・・。
――今日の我らの糧を――
ヱ:>順調に事を運んでいるか―――我が娘よ<
キ:はい・・・万事須らく―――間もなくここジュラクも陥ちることとなるでしょう。
ヱ:>それは重畳―――実は私もそろそろ悪い虫がてて来てな・・・お前たちの活躍ぶりを見ていると、私もひと働きしたくなった。<
キ:・・・それは是非もございませんね、ですがもうママーシャの出る幕などありませんよ。
ヱ:>フフッ・・・そうでなくてはな、私も張合いがない―――だが、私とて娘の獲物を横取りしよう・・・などとは思っていない。<
キ:ママーシャ・・・? まさか―――
ヱ:>私は現在―――ワコウ上空100kmの地点にいる・・・<
キ:(100km上空・・・)―――と云う事は成層圏に?! やはり・・・あなた様は・・・!
紫:キリエ殿、ここは戦場なのですよ―――なのに何をして・・・
キ:・・・始まる―――
紫:えっ?!
キ:紫苑さん―――今からワコウにいるカルマ軍は壊滅・・・もっと判り易く云うのならこの地上より消滅するでしょう。
なぜそんなことが云えるのか・・・実は私の母にはもう一つの呼ばれ方がございまして、あなたも聞いたことがあるはずです、『帝國の双璧』=鑓=・・・と、
その呼ばれ方通り、これから母自身が 焔の鑓 と化してワコウの城に突入を図る・・・との、連絡が入ったのです。
これで後顧の憂いは断たれました―――私もワコウからの後詰を気にはしていたのですが、そのことを睨んで私の母は今回前線には出てこなかったのでしょう。
〔突如として、キリエのグノーシスからは聞き覚えのある一節が―――
実はそれこそが、母娘の間で取り決めた秘密の暗号文。
誰にも聞かれないよう、種族特有の言語で言葉を交わす・・・あの一節は、それに切り替えるためのパスワードでもあったのです。
そのやり取りを、キリエの近くにいながらにして聞いていた紫苑は、急にどこの国の言語とも判らないような口調で話し始めるキリエに困惑顔のようですが、
間もなくするとキリエの言葉でこれから何が起ころうとするのかが語られたのでした。
ナゼ―――自分よりも限りない戦功を打ち立てながら、後方と云う位置に収まり戦の行く末を見定めようとしていたのか・・・
母は、もうすでに戦意を失くされているのか―――?
しかしそれは思い上がりも甚だしいことでありました。
ヱリヤが望んで後方に控えていたと云うのは、なにもこの戦の行く末を見守るため・・・なのではなく、
より多くの―――カルマ兵を薙ぎ払うために講じた措置に他ならなかったのです。
そう・・・すでに三つの兵糧庫が襲われているのは、ワコウに在駐するカルマ軍の知れるところとなり、
全兵士に各地点へ向けての派兵を行うため召集が行われた―――・・・
―――まさにその時、自らを炎の鑓と化したハイランダーが突っ込んできたのです。
それからは説明するまでもなく、その者の纏っていた炎により、その多くを失ってしまったのです。〕
ヱ:ふむ・・・出力60%でこの程度―――か・・・上出来だな。
仕事の確かさもますます母親似になってきた・・・と、云ったところだ。
ところで・・・どうやら今の私の突撃で死に切れていない者もいるようだが―――哀れとしか云いようがないな。
早く楽になってしまえば良かったモノを・・・
将:うっぐぐ・・・くそぉ〜死ねぇ―――!!
ヱ:見苦しい―――・・・
エクスプローダー
灼熱の一撃
カラミティ フレア
〔やはり―――物の数に入らなかった・・・たった6割程度の出力でそこに詰めていたカルマ兵は、凡(おおよ)そ9割が消滅してしまっていたのです。
辛うじて生き延びた守将も、眼前に悠々と立ちはだかるヱリヤに抗しようとするも、彼女の有する奥儀の一つにて易々と討ち取られてしまったのです。〕