<第百十一章;Vampaia Elagy―――T>
≪一節;セシルの懸念≫
〔西部戦線でヱリヤが本格的に参陣をし、気勢を挙げていた―――と、同じ頃。
一方の東部戦線でも北方のカルマ勢に抗するため、自軍のハルモニカ城に主だった将校が集結し、対策を練っているところでした。
依然として大きな衝突はないものの、小規模の戦闘は各地に見られ・・・決定的な戦果は得られずとも、
近々この方面での、決着をつけるための大きな一戦がありそうな予感は、皆口には出さなくてもその時がいつ来てもいいように準備を整えていたものだったのです。
そして―――政策を講じ合うためと、今回の作戦会議で決定したことを上層部に上げるためにウェオブリへと向かうイセリア・・・
その彼女が留守の時に、残された諸将は―――・・・〕
ミ:お早うございます―――リリア殿。
リ:ああ―――ミルディンさん、お早う・・・ところでセシルは?
ここ最近はあなたばかり作戦会議に出席しているようだけど。
ミ:ああ―――それが・・・実はセシルは、ある者の捜索に気を取られておりまして・・・
リ:―――ある者・・・?
ミ:―――ビーストライダーです。
リ:ビースト・・・そう云えばあの連中はここのところ全く出没していないわね―――
ミ:ええ―――ですが、また満月に近くなる周期に近づいてきています。
リ:そう云えば、ミルディンさんはホワイトナイツだからヴァンパイアの特性に詳しいんだっけか―――
ミ:ですが・・・私もギルダスも―――それにギャラハット様も教わったのは、彼らは人類の天敵だ・・・と、云う事だけ。
ですから正直―――今はどちらが正しいのか、迷っているところなのです。
〔これからの東部戦線の展望を図るためハルモニカ城に集まったリリアとミルディンは、仲間であるイセリアが戻ってくるまでの間、自分たちの近況について話し合っていました。
その中で―――セシルを良きパートナーとして選んだミルディンに、近頃の彼女の行動について詳しく訊こうとするリリアが・・・
そこでミルディンは、セシルがここ最近捉われていることを説明してみせたのです。
そう・・・東部戦線での 蒼龍の騎士 とも云えなくもない――― 魔獣の乗り手<ビーストライダー> のことを・・・
それにミルディンは、元々母国でもあったクーナではホワイトナイツでもあり、
その職は同時にヴァンパイアハンターとしても成り立っていたため、その種族の情報には詳しくもあったのです。
けれども・・・ここ最近の異聞を耳にするのには、人間を救う―――と、云うもの・・・
その情報は、今までに自分たちが習得してきたものとは正反対の性格をしていただけに、ミルディンも次第に疑問を抱き始めていたのです。
それでは、当のセシルは―――と、云うと・・・
パートナーであるミルディンと在駐しているラムベスの砦にて、これからまた跋扈してくるであろう者達を待ち構えるための下準備をしていたのでした。〕