≪三節;波乱含みの実況検分≫

 

サ:あっ―――いらっしゃ・・・(げえっ!)

 

リ:あら? あなた・・・ドジっ娘メイドのサヤさんじゃない。

  ―――ねぇセシル、あなたまさかこの人のことを・・・

セ:―――・・・。

 

サ:あ・・・あのぉ〜お客様? 私―――そんなん見つめられてもそんな気(つもり)なんかこれっぱかしも〜・・・

セ:茶化さないで―――ねえサヤさん・・・あなた昨晩どこにいたんです。

 

サ:はい?昨晩? えぇ〜っと・・・確か―――風呂に入ってたと思いますけど?

セ:そう・・・だったら―――ちゃんと私の目を見て話してちょうだい。

 

サ:い゛い゛〜〜―――あ、いや・・・それちょっと勘弁・・・

セ:どうして出来ないの―――何も疚しいことがなければ、私と目を合わせても平気なはずよ・・・

 

 

〔その人物を訊ねるため、彼女たち雪月花の三将は、近隣にあるグリムスピーの町を訪れていました。

そしてこの一連のやり取りは、この町にある皇国直営食堂の分局での一コマ―――

 

しかし・・・恐らく、この尋問にも似たり―――な光景は、お互いが望まなかったことでしょう。

ですが、セシルにしても―――もうこのまま・・・何か奥歯にものが挟まったような状態で日常を過ごすことに耐えられなかった・・・

ならばいっその事、自分が悪者に仕立て上げられてでもいいから、白か黒かをはっきりとさせておきたかったのでした。

 

そのことを知ってか知らずか―――なにやら容疑者に仕立て上げられたサヤは、脂汗混じりの冷や汗を流す始末。

加えて、どこか真相が見破られているものだと思い込んでしまっているが故に、眸が金魚のように泳ぎまくっている始末だったのです。

 

嗚呼―――これで万事休するものか・・・と、思われたその時!!〕

 

 

エ:あぁ〜ん・・・なんだか今日も莫迦みたいに暑ちいよね〜〜―――

  ちょいと―――こっちにお冷持ってきてくんない?

 

イ:(なんですの・・・この緊迫した空気を崩すかのような、緊張感のないことを云う人は―――)

 

リ:ああ゛〜〜っ!! あなた―――・・・

エ:およ? なぁ〜んだ―――リリアちゃんじゃな〜い♪ どしたのよ、こんなところで・・・

 

サ:(うっげ・・・こんのややこしい時に一番ややこしいのが・・・)

セ:―――誰?あの人・・・真夏だと云うのに青い顔をして・・・大丈夫なのかしら。

 

リ:いや―――どうしたも・・・それよりエルムさんこそどうしてここに?

エ:ああ〜ちょいとね―――それよかそちらの人たち・・・誰なの?v

 

リ:ああ―――こちらは、私の仲間でイセリアとセシル・・・

エ:あ〜〜っ!サヤちゃ〜ん! どしたのよ―――こっちこっち。

 

サ:(あっっ・・・ちゃあぁ〜〜)

セ:―――はい? サヤさん・・・あの人とお知り合い?

 

サ:あ、いや〜〜お知り合い―――ってなほどのもんじゃ〜〜

エ:またまたぁ〜何おもろかしいことを云い出したりするんだよ―――この娘は。v

  お前は私の エクスワイヤー だろ。

 

リ:エクス―――

イ:ワイヤー・・・(主を護りし者!)

 

サ:あ゛っ―――莫迦、あんたまたなんでそう云うことを〜〜

セ:ちょっと―――今のそれどう云う事なの? エクスワイヤー・・・って、別の名を「主を護りし者」のことよね?!

  それが・・・どうして―――

 

 

〔長い間・・・疑問としていたことが、この短い時に露わとなってきました。

皇国の地方の町にある、皇国直営食堂の分局に勤める給仕と料理人・・・

その実が、とても高貴な身分の方の従者であったことに、その場は一種異様な雰囲気に包まれたものだったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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