<第百十四章;Vampaia Elagy―――W>
≪一節;隠棲の理由≫
〔その時―――リリアは、大変後悔をしていました・・・。
数画前までは云い争いをして、その人のことを悪く思っていたものなのに・・・
―――なのに・・・
自分の身代わりとなり、両の腕(かいな)を引き千切られ―――肚を穿たれた存在・・・
その人に対し、大変申し訳なく思っていたのです・・・。
それはそうと―――こんなことになってしまう以前に、こんなことがあったのです。
今後の東部戦線における展開を話し合うため、本陣としているハルモニカ城に集まったときのこと。
身元がはっきりした―――と、云う事で、サヤもマダラもパライソの将軍として軍議に列席をした・・・までは良かったのですが、
どうも事の発端は、ヴァンパイアの種族の長でもあるこの方が・・・〕
イ:―――なるほど、それではあなた方は古(いにし)えの帝国時代でも、歴(れっき)とした働きがおありだった・・・と。
それではなぜ、そのことを今まで隠しおかれた・・・と。
サ:そりゃ〜まあ・・・なんだ―――現在(いま)と過去(むかし)・・・って、微妙に違うもんじゃない。
人間の気質とか〜世の中の風潮とかが・・・さ。
そりゃ―――あんた達も昔私が知ってる連中と、比べるべくもないほど気持ちがいいもんなんだけどね。
だったらさ、他のヒューマンはどうなのよ―――ってなことになってくるわけよ。
それに・・・世の中が平和になってきちまうと、ヒューマン以外の私らは〜ってな風な具合になってきちまってさ・・・
だからなのさ―――云われもないような汚名をひっ被って、あの杜へと隠れなくちゃならなくなったのは。
〔その場では、まさに耳が痛くなるような事実が、ある吸血鬼からなされるのでした。
戦時中には、自らの命を賭して国を護ったとしても、それが終わってしまえば―――まるで腫れ物・・・厄介者のように扱われ、
挙句の果てには「人類の天敵」・・・などと云う、不適切な云われまで付け加えられ、
弁解をしようにも多数の前では無力だと諭されたものだったのです。
それ故―――涕を呑んで、自分たちの居城のあるヴァルドノフスクの杜へと引き籠り、近年まで憂悶の歳月を送った―――
・・・もの、と、思われていたのですが―――〕
エ:そんな・・・冥(くら)いもんじゃないよ―――(ぬりぬりぬり・・)
女禍様には、女禍様なりのお考えがあって・・・私らにそうさせたのさ。
そこを私たち如きが―――(ぬり・・・ちょい・ちょい)・・・どう詮索したって始まるもんじゃないんだよ。
リ:・・・あの―――軍議の最中に何をしてるんですか?!#
エ:(ふぅ〜ふぅ〜)・・・よし―――と、できたv
ん?ネイルのお手入れだけど。
リ:さも当然そうに云うなぁ〜!#
今、とっても大事な話し合いをしてる最中―――だってのに、不謹慎に不真面目にもほどがあるじゃないですか!
エ:あっかんべ〜♪
リ:ん゛・・・に゛ゅ゛ぐぐぐ・・・#
サ:(あれあれ―――まぁた始まっちゃったよ)
マ:(悪い癖ですよね―――実際・・・)
〔7万年前当時の上層部からの意向を受け、従ったご本人様の口からは―――どうもそうではなかったらしく、
仲間同士での無益な殺傷・・・流血沙汰は好まれなかった方の説得を受け、また自身もそう云ったことを望まなかったので、
そこは大人しく主命のままに従った―――と、云う説明があった・・・のはいいのですが、
その軍議の籍にいたリリアが怒っていた理由―――その説明をする最中にも、ネイルのお手入れをしていた・・・と、云う、あまり相応しくない態度に、
それと、リリアが注意をした際にもまるで揶揄(からか)うかのような仕草に、ついにリリアも怒り心頭となってきてしまったのです。〕