≪三節;或る因縁≫
〔こうして――― 一部で仇討ちのようなことが発生していた頃、グリザーロで養生をしていた人物は・・・〕
エ:ふわ・・・ぁあ〜あ! ・・・あ〜〜なんか退屈だねぇ―――こんなことなら下手な芝居を打つもんじゃなかったよ・・・
キィ〜 キィ〜
・・・ほいよ―――御苦労さん、と・・・
どれどれ―――ほほぉ〜皆順調に作戦通り・・・ん? この反応―――まさかあいつ・・・キュクノス?!
・・・そう云うことかい―――あいつが、こんなところにしゃしゃり出てきてるって云うんだね。
〔今回一芝居打ち、そのための大怪我をして養生中のエルム・・・
しかし彼女は、別段これと云って戦働きが苦手なのではなく、現在の将兵の実力がどれほどのものかを見定めるため、わざわざ手の込んだ芝居を打ったわけなのですが・・・
どうにもこう云った策略は気が逸ってしまうもので、半ば退屈すらしていたのです。
そんな時―――使いに出していたコウモリからの連絡を受け、今リリア達が闘っている様子を漏らすことなく知ることが出来たようなのですが・・・
そのことは同時に、エルム自身因縁深い相手がそこまで来ていることを知ることとなったのです。
その一方―――運悪く七魔将の一人と対峙してしまったリリアは・・・〕
リ:あっ・・・ぐうぅっ―――
キ:グハハハ―――! どうだ?!ワシの百足鎖鞭の味は??! そぉうらっ―――!
リ:あ・ああっ〜―――!
〔自分の得物であるバスタードソード・デュランダルを、相手の・・・それも見るからに痛々しい百足鎖鞭に絡め取られ、剣もろとも身体をはじかれてしまったリリア―――
しかし・・・通常ならそこで、リリアの身体は地べたに這い蹲ってしまう格好となってしまうのですが・・・
その時リリアは、自分の目にもはっきりとその現象を捉えていました。
何もなかった地面からいきなり血溜まりが発生し―――そこから湧いて現れた無数の血の腕(かいな)に捕らわれたリリアの身体は、一瞬にして後方に・・・
而して―――今までリリアがいた地点には・・・?
なんとそこには、グリザーロにて養生中のエルムの姿が―――・・・〕
リ:え・・・エルム様―――?!
エ:・・・ようやく―――会えたわね、キュクノス。
・・・と、は云っても、もう二度とあんたの面なんざ拝みたくなかったけどサ―――
―――なんか云ったらどうなんだい、審問長!!
キ:フッ・・・ククク―――相も変わらず、不遜な口の利き方をするものだ・・・な、エルム―――
エ:誰のお陰でこうなっちまったと思っているんだ! 元はと云えば、あんたの暴走が原因なんじゃないか!!
私は・・・あんたのしてきたことを知り、当時の大司教だったアソウギに告発するつもりだったんだよ―――それを・・・あんたは・・・!!
キ:フ・ン―――お前の動きは前々から怪しかったからなぁ・・・だから、マルシェビキコブスに告白(ちく)られる前に、始末をつける必要性があったのだ。
まあ・・・ちょうどあの時のどさくさで、お前はヴァンパイアに―――そしてワシは、魔皇サウロンに忠誠することを誓ったのだからなぁ!
〔リリアは―――驚くばかりの事実を目の当たりにしていました・・・。
日頃はお道化(どけ)、どこか人を食ったような飄々とした人が・・・たった一人の敵を目の前に、こうも憤慨をして―――
いや・・・この二人は、それとはどことなく違って見える―――
なにか・・・昔は仲間内だったとでも云うような―――それに、マルシェビキコプスに・・・アソウギ?!
どうして・・・宗教国家であるサライの―――?
リリアが宛(さなが)らにして驚いた事実の数々―――
そこには、エルムとキュクノスが元々は仲間内であり、何かの機会でそれが破綻してしまい―――現在は別々の組織に所属をしていることが判明したのです。〕