<第百十七章;歴史より抹殺されし者>

 

≪一節;不吉な噂≫

 

 

〔今回ジュウテツを陥落させるため、リリアが陣取っているシェトラルブールと同じくして、

ここイヴァーリスにも雪月花の一人であるセシルが布陣をし、同じ陣に着陣していたヴァンパイアの子爵サヤの動向に一喜一憂していました。

 

そしてサヤがどうしてこのような行動に至ったのか―――を、サヤの下僕であるマダラに求めようとしたのですが・・・

時に、パーレンバン台地に布陣していたイセリアが、セシルの陣を訪ねてきたことから端を発したのです。〕

 

 

イ:少し―――よろしいでしょうか・・・?

セ:イセリア―――どうしてあなたが・・・

 

イ:シェトラルブールにてリリアと共に闘っていた公爵エルムが、カルマの七魔将キュクノスと云う者に敗れた・・・

  その噂が私の下にまで届いたものでしてね、その真相を確かめに・・・

セ:えっ? サヤさんの主である方が・・・? そんな―――まさか・・・

マ:・・・敵が流した情報ですか―――それで、その噂に信憑性はあると?

 

イ:では―――・・・あなた自身の主である子爵サヤは、どこにいるのです。

マ:・・・フ・フ―――確かに目をつけるのが早い・・・

  ただ―――このことばかりは賭けなのです。

  公爵様がこの世に復活を為された・・・その際には、まづとある儀式に備えるための準備を―――とあるモノを集めよ・・・と。

  そのことを子爵様は忠実に行っているにすぎないのです。

 

  ですが―――以前もそれは集められ作られたのですが・・・使われることはありませんでした・・・。

 

イ:・・・その、あるモノ―――とは、なんです?

マ:「血生魂」―――と、云えば判りますでしょうか・・・

 

イ:(!)それは確か―――生きとし生ける者の血と魂を666人分あつめるという・・・あの?!

マ:まあ―――正確には、今まさに生を終えんとする者に限られますがね。

  それを使用して、云わば 保険 と呼ばれるモノが発動するのです。

 

イ:それで・・・結果としてはどうなるのです。

マ:結果―――ですか・・・結論から先を述べますと、判りません・・・。

  それと云うのも、私たちですらその 保険 の発動を見たことがありませんでしたから。

 

  しかし―――その昔、丞相様から一度だけ云われたことがあったのです。

  『あなた達が有している保険には、凄まじい力が宿されている』・・・と―――

 

セ:―――ではなぜ・・・過去に一度もその保険が発動されなかったの?

マ:さあ・・・ただ――― 一つに云えることは、今回の様に公爵様の肉体が激しく損傷することがなかったから・・・ではないでしょうか。

  セシル様、あなたも見たはずです―――子爵様の腹部についていた痕のことを。

 

セ:スティグマータ―――・・・と、云う事は・・・

 

 

〔イセリアがマダラに求めたこととは、今回の東部戦線に加勢してくれた援軍の将に纏わる、ある厭な噂の真相について・・・でした。

 

その噂の真相を知るために―――だったようなのですが、事の真相は真実だったことがすぐに判ってしまったのです。

それと云うのも、マダラと常に一緒にいるサヤがその時に限っていなかったから・・・

 

そしてマダラの口から語られ出したあること―――・・・

そのことが、今回の一連のことに連動してくる、あることなのでした。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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