≪三節;目覚め逝く者≫
〔しかし―――この気色悪い物体が、一体どう云う風にしたら亡くなったエルムに作用をすると云うのでしょうか。
・・・と、思っていた次の瞬間―――!〕
リ:あ・あっ・・・何を―――何てことを!! 死化粧をしているエルム様の・・・それも今回傷つけられた腹部や口に・・・!
マ:ナ、ナニすんだよ〜! ヤメロ・・・ヤメテ〜〜―――!
そんなことをしてこれ以上エルムちゃんを傷つけんな〜!
へ:お二人ともお鎮まりを―――お目覚めの妨げになってしまいます!
マ:ナニ云ってんだよ・・・これが鎮まれるかってんだ!!
リ:そうよ―――それに、こんな風に屍体を弄玩(もてあそ)ぶだなんて・・・道徳的・倫理的にも―――
サ:フフフ―――・・・お二人さん、何か勘違いしてやしないかい。
私たちはヴァンパイア・・・元はあんたたちみたいなヒューマンだったけれども、一度死んで新たに永遠の生命を手に入れた―――化け物なんだよ。
それに・・・公爵さんも死んだりしちゃいやしない――― 一時的に活動を停止した・・・そう云う風に考えられないかい。
〔その時リリアにマキは、自分たちの目や耳を疑いました。
すでに役目を終え、安らかな眠りに陥る者を嫐るかのように、血生魂なる物体からは無数の触手が伸び―――
このほど腹部につけられた傷や・・・口から―――耳から―――ありとあらゆる穴と云う穴に侵入して行ったのです。
それに、そんなことをする物体の行動の注釈をしたサヤの言葉にも、さらに驚いたのです。
そう・・・今回エルムは死んでしまったのではなく、肉体と云う器が激しく損傷されてしまったが故に、その活動を休止してしまったのだ・・・と―――
では・・・レザレクションとは―――?血生魂とは―――?
今・・・確かに―――大地を踏みしめ、その場に立っていた者がいました・・・
而してその者は女性―――・・・
美しくも気高い―――女のヴァンパイア・・・
けれども声が―――・・・〕
誰:―――懐かしい臭いがする・・・
―――突き刺される男の臭い・・・
切り斃される女の臭い・・・―――
―――焼き弑される赤児の臭い・・・
射ち弑される老人の臭い・・・―――
―――死の臭い―――
そ
し
て
誰:戦の臭い―――・・・
リ:(この声・・・エルム様のものではない―――? 今の瞬間・・・何が起こったというの?
それにこの感じ・・・厭だ―――まるで憐れみと云うものを感じない・・・それに、私の知っているエルム様は、決してこんなことを云ったりは・・・)
〔確かに―――・・・その場に佇むのはエルムの身体でした。
だから、声も愛らしく甘ったるいはず―――・・・
しかしそこには、大方の予測に反し・・・低い男の声をした、女の肉体を持つ者だったのです。〕