≪三節;怨敵死すべし―――≫

 

 

〔カルマの三大兵糧庫の一つ―――ジュウテツ砦の前哨基地であるテイグン山砦に侵入した者を排除すべく、

そこに充満していたカルマ兵は皆悉(ことごと)くに朱に染まって逝きました。

 

それも―――たった二人の女将(めしょう)によって・・・

 

だからこそ、この砦に逗留していた魔将も、ついにその場に誘(おび)き出されてしまったのです。〕

 

 

キ:フン・・・どうにもこの砦が騒がしくなった―――と、思ったら・・・お前らか・・・

  ―――むン? あそこに見えるのは・・・まさか、エルム??!

  だが・・・あ奴はワシに臓物(はらわた)を抜かれ、コト切れたはず―――まさか・・・な。

 

マ:くぉんのぉお〜〜!お前かぁ―――!!

キ:ぐふぉっ―――?!

 

リ:―――やった?!

 

マ:お前が・・・お前がエルムちゃんを弑(や)ってくれたのか!? 死んで詫びろぉ〜〜!!

 

 

〔キュクノスは―――己の目で、二つの疑う事実を目の当たりにしたのです。

その一つは、侵入者の排除に向かった・・・自分の配下の無残な姿―――

しかもそれを、たった二人の女性によってなされていたこと・・・と。

 

もう一つは、砦の壁に寄りかかり・・・二人の女性の戦いを、退屈そうに観戦していた存在―――

しかもその存在は、先頃キュクノス自身が虐げ、剩(あまつさ)えその存在の臓腑を抜いて、存在の意義としての定義に終止符を打った・・・と、思っていたのに―――

それが、以前と変わらぬ容姿のままで存在を続けていた・・・と、云う事に―――

 

けれども、マキにしてみればそんなことはどうでも良かった―――

ただ、自分と親しい間柄の人を奪ってくれた、憎々しい敵を赦しておくわけにはいかなかった・・・

 

ただ―――それだけ・・・

 

でも、それだけでもマキには十分だったのです。

 

だからこそ何も考えず―――真っ正面から突っ込み・・・そこから闇雲に攻撃を仕掛けたのです。〕

 

 

マ:はあ・・・はあ〜・・・ど―――どうだっ! エルムちゃんの恨み・・・思い知ったか!!

 

リ:す―――凄い・・・あの子一人で、私でさえ敵わなかった魔将を・・・やっつけちゃったよ!

 

 

〔確かに―――マキの攻撃は息もつかせぬ連撃の数々でした。

それ故にそこにいた魔将の身体も無傷で済まされるはずが・・・

ところが―――・・・〕

 

 

キ:ン・フフフ〜―――どうした?お前らの恨みとはその程度のものなのか・・・。

 

リ:ナ・・・ニ―――あんな状態にされて・・・まだ生きている??

 

 

〔魔将の身体は、誰がどう見ても無事だとは云い切れませんでした。

皮膚は裂け―――血や肉はとび散っていた・・・

だからエルムの仇はこれで取れた・・・ものと思っていたのですが―――

なぜかキュクノスの目と口は笑いを湛(たた)え・・・剩(あまつさ)え崩れかけた身体でさえも―――?!〕

 

 

キ:くっ・・・はあぁ〜〜! ははぁ〜?効かんなぁ〜―――

  お前が今ワシにしたことなど・・・こそばゆくて敵わぬわ!

 

リ:再生能力・・・再生者(リジェネレーター)―――!!

マ:ちっ・・・きしょぉお〜! どうしてなんだ―――くだばれ!!

 

 

〔信じられなかったことに、次の瞬間には・・・傷つけられていたキュクノスの身体は、以前と変わらぬままになっていたのです。

それこそが・・・彼が持つ最大の異能―――再生能力・・・故に、人は彼のことを再生者―――リジェネレーターとも呼んだ・・・

 

けれども、この事実を受け入れられなかったマキは、この後も怒涛の連続攻撃を仕掛けるのですが・・・〕

 

 

キ:カァ〜ッカッカッカ―――やめんか、やめんか・・・こそばゆくて危うく笑い死にしてしまいそうだわ!

  それにしてもお前・・・このワシを弑したくて疼々(うずうず)しておるようだが―――残念だがお前の願いは叶う事は出来ん!

  なぜならば・・・もはやこの世には、ワシを傷つけられる者など存在せぬからだ!!

 

リ:―――それはどうかしら! この世には「絶対」と云うものは存在しない・・・私はそう教わったわ。

  なればこそ―――お前にも何かしらの弱点は、必ずどこかにあるはず・・・それを―――見極める!

〜我が剣に―――総ての闘気を込めて〜

  斬り裂けぇ〜―――・・・

――烈空断滅破――

 

 

〔―――云うが早いか、リリアは自分の思いの丈(たけ)を、聖剣=バスタードソード・デュランダルに託し、不遜なる魔将に立ち向かって行ったのです。

 

けれども―――結果はやはり同じ・・・

いくら“呪”のこもった斬撃でも、髪の毛ほどの傷を残せるものではなく―――完全再生させていく魔将の身体・・・

このままでは・・・永遠の鼬(いたち)ごっこ―――

 

いや・・・自分たちに 体力 と云うリミットがあるからには、絶対的な不利は免れないところであり、

無駄な努力であることを、ようやく思い知ったリリア達の姿があった―――・・・と、そう思われたのですが。〕

 

 

キ:クッ・クッ・クッ―――・・・どうしたぁ〜ようやく気が済んだかぁ・・・。

  だが、それにしても今までよくよく無抵抗なワシを惨々な目に遭わせてくれたなぁ―――

  それでは・・・お仕置きタイム―――に、いくとするか・・・

 

マ:気が・・・済んでるわけがないだろ―――

  こうなったら、再生できなくなるまでやっつけるんだ! 征(い)くよ―――リリアちゃん!

リ:―――ええ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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