≪五節;闘争嗜好者の過去≫
〔大公爵は―――得も云われぬ悦びに打ち震えていました・・・。
それと云うのも、彼の階級は魔貴族の内でも最上位に位置するため―――
・・だからなのでしょうか、その立ち居振る舞いも毅然かつ優雅であり、領民如きの存在は彼に近づくことさえ許されなかった―――・・・
それ故、時として―――上に立つ支配者階級の最大の悩みの種であり、また病とも云えた・・・「退屈」と呼ばれるモノ・・・
至上であるが故に、下からは敬われもし―――また同時に畏れられもした・・・
自らが戯れに近づこうとしても、皆萎縮して震え・・・引き下がるばかりであり―――
自分に、盾突こうとする者など、この世には存在だにし得なかった―――
加えて、彼自身は不死の身であるが故に、その病は時として彼自身の枷となり、
古(いにし)えの皇の配下ながらも、次第に目に余る行為が目立ち始めた―――・・・
つまり―――歴史の表舞台から、その名を抹殺される要因は、彼自身が少なからずも擁していたのです。
そして現在・・・また再び動ける―――器としての肉体を得た彼は、
久しくながらの、闘争と云う名の本能に―――身を委ねつつあったのです。〕