≪二節;外交儀礼≫
〔それから――――明けて朝、あれよりアヱカは、ゆっくりと休む事が出来たのでしょうか・・・。〕
ア:う―――・・・
(あれから・・・結局、あの人の言う事が気になって・・・眠れなくなってしまいましたわ―――)
〔どうやら懸念した通り、“影の人”との夢での会話が気にかかり、あまりよく眠れなかったようです。
でも、そんな状態である彼女の下にでも、紫苑はお迎えに上がってきたのです。〕
紫:お早うございます―――お迎えに上がり・・・
(あっ?!!)ア、アヱカ様?? 大丈夫なのでございますか?!
ア:(え・・・?)あ・・・紫苑さん、ええ、わたくしなら、大丈夫です――――
それでは、早速参るとしたしましょう・・・。
紫:は――――はぁ・・・・。
(でも、しかし―――大丈夫も何も、目の下の隈は・・・まさか―――あまりお休みになられなかったのでは・・・)
ア:・・・う―――・・・
紫:ああ! アヱカ様?!!
ア:だ・・・大丈夫でございます、ただ―――立ち眩みがしただけですので・・・・
紫:あ・・・・う・・・・。
(こ・・・この方は、なぜにこうも気丈に―――もしかすると、今回の事に責任を感じていらっしゃるのでは?!)
〔その当時をして、中華の繁栄を誇っていたフ国、そこの現当主に謁見する・・・と、いうことは、
やはり当時をしての民たちの憧れでもあり、畏敬の念すらあったのです。
それを―――片田舎とはいえ、一小国の姫君でもあったアヱカにとっては、尚更にそのことが重責になってしまっていたのは、いうまでもなかったことでしょう。
そして―――気がついてみれば、今、自分は、大国の城内へ・・・
しかも、周囲(まわ)りには、自分を何かの物珍しさからか、ジロジロと見つめるフ国の官僚達の視線が注がれていたのです。
そのことで、睡眠不足からきているぼやけた頭の中は、より一層にその度合いを増し、
考えている事も―――況(ま)してや立っているのでさえやっと・・・・と、いう状態だったのです。
ですが―――アヱカと一緒に参内した紫苑は、また別の見解をして驚いていた様子・・・なぜならば―――〕
紫:(まっ―――・・・まさか、これほどとは??
私が公主様の意向を伝えに赴いた際には、ただショウ王様とお会いするだけ―――の、はずなのに・・・
それが、これではまるで、大国を歓迎するばかりのものでは・・・・
まさか―――何者かに謀(たばか)られたのでは―――・・・)
〔紫苑が驚いた理由の一つには、総ての諸百官が、自分たちを出迎えるために大挙をして集まっていたこと・・・。
確かに、紫苑の出身はヴェルノアであったにしても、今は『夜ノ街』にある「ギルド」の首魁の側近・・・と、言う肩書きなのです。
それを・・・こんなにまで大袈裟になってしまったのは、何者かの・・・それも何かしらの作為が働いたのでは―――?
と、しか考えられなかったのです。
そして――― こちらの方でも・・・ある変化が訪れようとしていたのです・・・・。〕
ア:(だ・・・ダメ―――こんなところで・・・気を失ってしまっ―――て――――は――――・・・)
官:ほほぅ―――これはこれは・・・いかがなされたかな? 我等の手厚いもてなしに、立ち眩みでもなされたか?!!
―――わっはっはっは―――
紫:(んな―――?!! こ、この者は、この国の光禄勲にして、衛将軍の―――ボウ=シャイン=グラシャスでは!!
こ・・・この国随一の佞臣が、今回の一件を? だ・・・と、したなら総てが合点がいく―――
この者は、アヱカ様をこれほどにもない、笑い者に貶(おと)しめんとして―――・・・)
〔そう―――・・・その時、アヱカをからかい半分に囃(はや)し立てた者こそ、
この国の軍事の最高顧問でもあった「ボウ=シャイン=グラシャス」だったのです。
でも、紫苑はこの者の形容を、また別の言葉に置き換えて言っていたのです。
それは・・・「フ国一の佞臣である」―――と。
そう―――まさにこの者こそ、大国に巣喰う『獅子身中の蟲』だったのです。
そして今―――この佞臣は、アヱカのような者が、王の近辺に近寄るのは好ましくないものと認識し―――
彼女を、この上ない恥辱の底に陥れようとしていたのです。〕