<第百二十章;盛者必衰の理>
≪一節;公爵復活≫
〔今回のジュウテツ攻略の折、パライソの頼みの綱として加勢してきた援軍の将は、儚くも魔将キュクノスの前に敗地に塗(まみ)れてしまいました。
しかし―――その時を持ってある保険が発動・・・
その保険の中味も、遠い過去の記憶の果てに風化した・・・と、思われた、ある人物だったのです。
しかも、その人物は強力でした・・・。
いや―――強力と云うには、余り過ぎるほど強力だったのです。
それと云うのも、イセリアやセシル・・・そしてリリア達三人が束になっても敵わず―――
さらには援軍の将である、「帝国の双璧・楯」のエルムでさえも跪(ひざまず)かせた・・・
そんな敵将を、まるで朝食前のウオームアップをするかのように、片手間で片付けてしまったからなのです。
そして今―――・・・このままの勢いで、ジュウテツも陥落する・・・ものと思えば―――?〕
キ:―――・・・・
リ:ナ・・・ニ?! こいつ―――まだ息絶えていなかった?
マ:なんだってっ―――・・・って、ありゃ? こいつ、立つには立ったけど・・・動かねぇよ?
〔大公爵の、強力無比な術で薄い布切れのようになってしまった魔将・・・
それが―――なんと、事もあろうに立ちあがってきたのです。
それを見てまだ絶命していなかったとするリリアとマキ―――・・・
けれども、この魔将はその時ただ立ち上がったまま・・・それから何をしよう―――と、云うわけでもなかったのです。
すると―――・・・なんとこの魔将の口からは、意外な事実が?!〕
キ:・・・お父―――様・・・そこにいるのは、お父様―――なの?
リ:(い゛っ・・・い゛い゛~~っ?! 今の―――・・・何かの聞き間違い・・・ぢゃあないわよねぇ?!)
マ:(あり~~? この声―――・・・)
〔今までにも、この魔将とはやり取りを交わしていましたから、胸の悪くなるような濁声(だみごえ)は耳に残っていました。
それが―――・・・この度起き上がってきた魔将の声は、その濁声(だみごえ)ではなく―――いつか聞いていた・・・愛らしい女性のそれ・・・
そう―――今のが聞き間違いなどでなければ、このほどキュクノスによって行動不能に陥らされた、エルムの声そのままだったのです。
そして―――・・・父がその場にいることを感じ取った娘は、次第に自分が身を宿している者の身から、また元の姿に・・・
あの―――豊かな胸元に・・・細くしまって括(くび)れたウエスト・・・ふくよかな腰つきへ―――と、完全に態を変じてしまったのです。
その様相を目の当たりにして、開いた口が塞がらないリリア・・・〕
リ:・・・って―――え゛え゛~~っ?! あ・・・あのごっついおやぢから―――エルム様ぁ?!!
ど・・・ど~なってるの?これ―――・・・
マ:わあぁ~っ!エルムちゃんた~~―――やっぱ無事だったんだね!v
エ:オヤオヤ―――困っちゃったさんだね。
大体・・・私がそう簡単にくたばるはずもないじゃないか―――
マ:うん・・・うんっ!v
リ:あの・・・エルム様―――
エ:リリアちゃんも、私のことを心配してくれてたんだね・・・ありがと―――
リ:いえ・・・私は―――今までのあなた様に対しての無礼の数々と・・・救ってもらったことのお詫びも申し上げてなくて―――
エ:うふふ・・・いいんだよ―――そんなことv
〔ご多聞にびっくりしたことはあったけれども、紛れもなくその場に立っていたのは、あの・・・愛嬌をたっぷりに振りまくヴァンパイアの真祖―――
当初出会った時には、ふざけ茶化していた―――と、云うのも、今となっては暗くなりがちな戦場での雰囲気を、少しでも明るく盛り上げたりしようとしている、
そんな・・・ムードメーカー的な役割を果たしてくれているものだと感じ始めていたのです。〕