<第百二十一章;崩落していくもの>
≪一節;行方(ゆきかた)探し≫
〔パライソの征東将軍であるリリアと、彼女の同士と見られた三人の仲間は・・・
たったそれだけの人数でカルマの三大兵糧庫の内の一つ、ジュウテツの前哨基地であるテイグン山に侵入をし、
友軍の将である、「帝國の双璧」楯・エルムの仇を討ち果たした後、その前哨基地を見事陥落させたのでした。
その時を同じくして―――パライソの東部方面部隊、通称カンコク道方面攻略部隊の陣営内では、
リリアと・・・エルムの遺体が忽然と消えてしまっていたことに、騒然となっていたのです。〕
兵:―――おい、見つかったか?!
兵:いや・・・リリア様も、エルム様の遺体も見つからない―――
兵:・・・一体何者の仕業なんだ―――あっ、ハミルトン様・・・
ハ:―――困りましたね・・・これからが大事な時だというのに、リリアを欠いてしまっては・・・
将:―――ハミルトン様・・・
ハ:ああ―――これは・・・それで、どうでしたか。
将:はっ―――半径二里に亘り、対象を探索しては見ましたが・・・
ハ:・・・依然として形跡は見られず―――ですか、判りました・・・
御苦労さまでした、あなたもこのまま自陣に戻って休息を取られてください。
将:は・あ・・・そうは云いますが、ハミルトン様は―――
ハ:私は、この陣全体を預かる人間の一人です。
故に――― 一兵・・・況(ま)してや将の一人が、その行方(ゆきかた)を知れずにいると云う事は、人員の管理責任を問われるところとなってしまいます。
それに、明日は総攻撃を仕掛ける手筈となっております。
なのに・・・私やリリア―――それにあなたまでもが動けなくなってしまうとしたならば、一体誰がこの軍の指揮を執れるというのですか。
〔その場には、この軍全体を統括する一人である、平東将軍のハミルトンの姿があったのですが、
実のところ彼の心はすでにそこには非(あら)ず、大事なパートナーであり、想い人でもあるリリアの消息を、ただひたすら案じていたものだったのです。
―――とは云え、彼自身は軍全体を管理統括する身分の一人、そんな想いは喩え自軍の将兵に知られてはならない・・・
だからこその厳しい口調―――なのですが、彼自身とても辛い立場にはあったようです。〕