≪三節;もう一人のエルム―――?≫
〔ところが・・・小悪戯(じゃれ)合っている二人と同時に、この天幕に入ってきた人物を見るなりハミルトンは―――〕
ハ:そ・・・それより―――あなたはエルム様?? でも・・・だとしたらどちらが本物のエルム様なのですか・・・
リ:ああ―――ハミル・・・そのことについてなんだけど、こちらの方はエルム様のお父様らしいの。
それよりも、これから私たちが陥とそうとしていたあの砦なら・・・もう陥ちたわよ。
ハ:なん―――ですと? たったこれだけの時間に・・・それにあなた達だけで?
リ:そう―――けれど、私は結局何もしていない・・・
あの砦を実際に陥としたのは、こちらにいるエルム様のお父様―――エルムドア大公爵様・・・と、エルム様のお二人だけ。
大:フ・・・―――しかし、寝覚めの準備運動にもならなかったな。
故に、余と対等の実力を有する者が現れるまで、出てこぬこととしよう・・・―――
ハ:あ・・・っ―――もう一人のエルム様が・・・
リ:エルム様の外套に―――?!
〔もう一人の・・・エルムとよく似た姿をしている人物に、ハミルトンは注目したのですが―――
リリアは、当面自分たちが攻略の目的としていた、カルマの前哨基地―――テイグン山砦が、この二人を介して陥落したことを伝えると、
ハミルトンはさらなる驚きに包まれたのです。
それもそのはず、こちらの方面にはカルマも軍備の増強を図った形跡―――七魔将のうちの二人を充てたところを見ると、
そう易々とは三大兵糧庫は陥落させられないと予測を立てた矢先・・・の、出来事だったのですから。
しかも、実体を伴っていたその人物―――エルムドア大公爵も、今回の出来事にはどこか物足りなさを感じていたのか、
皆のいる前で、エルムの外套に変化(へんげ)する始末・・・
そんな―――人間離れた事が出来る者達が味方に加わってくれた・・・は、いいのですが、
リリアは、以前に自問自答した心配事が、差し迫ってきている雰囲気を感じずにはいられなかったようです。〕