≪七節;ビューネイ勇を語る≫
ビ:そう云えば―――・・・
フ:―――うん?
ビ:卿がこちらに赴任をしてくるまで、ここを支えている功臣はどうしておられる。
フ:ああ、あ奴らのことか・・・どうにかしてもらいたいものだな―――
ビ:いかがなされたか。
フ:卿も忘れたわけではなかろう―――
こちらの方面において最大の功労者と讃えられていた、あのヴェネフィックの兄妹殺害の嫌疑が、カインと云う男に掛けられていたことを。
ビ:・・・それで―――?
フ:―――可笑しいとは思わんのか?!
あれだけの嫌疑を我らからかけられておきながら、否定もせず・・・肯定もせず―――
ただ、可笑しいと思ったのは、大王閣下に直接進言することを赦された、あのシホとか申す女から・・・
「これ以上この審議を問う事は能(あたは)ず」―――と、大王閣下の宣旨を我らに見せたことから、あの嫌疑については皆口を閉ざしてしまったのだ・・・。
ビ:・・・フッ―――取るに足らんな、そのような瑣末なこと・・・
フ:―――なんだと?!
ビ:そう、熱くなりなさるな―――
第一、卿が怪しいと睨んでおるカインとか申す男が率いる者達は、統率もよく取れており・・・ゆっくりながらも確実にハイネスブルグを追い込んでいた―――
それが―――・・・
こう云った評価の仕方は、あまり故人には相応しくないが、此度の前哨基地の陥落・・・その大失態は、あのキュクノスにこそあるのだ。
フ:う、うっ―――・・・
ビ:そうは思わないかね―――フォルネウス・・・
あの愚か者は、己が持つ強大な力に溺れ、過信した挙句に自滅をしてしまったのだよ。
ただ―――・・・すでに亡くなっているので、これ以上辱めるのもどうかと思うのだが・・・ね。
〔その場では―――妥当ではない・・・と、云えば、あまりにも妥当ではないことの連続があったのです。
それもそのはず、フォルネウスはカインのこと―――況してや、ここ最近において自分の主に面白くもないことを吹聴している黒衣の女・・・シホのことを信用しておらず、
ここで今一度、あの・・・ヴェネフィック兄妹暗殺の件を燻(くす)ぶらせようと思っていたのに、それを思いがけない方向・・・
今回の前哨基地・テイグン山砦の陥落の全責任は、不慮の討ち死にを遂げてしまったキュクノスこそにある・・・と、転嫁されてしまったのです。
それも・・・その内には、「九の疑いよりも十の真実」がそこにはあり。
つまり「ヴェネフィックの兄妹暗殺」の疑いよりも、「前哨基地陥落」の方が、幾分か信憑性があったからなのです。〕