<第百二十二章;悲壮なる決意>
≪一節;最後の使命≫
〔元・クーナの都城―――ハルナ城に、ある種の使命を帯びてきていた者こそ、カルマの魔将筆頭であるビューネイでした。
けれどもその魔将筆頭に、その使命を帯びさせた者こそ、周辺国家の間で「古(いにし)えの暴君」と呼ばれていた者ではなく―――
これまでにもカルマの覇道を妨げる手引きをしてきた、=禽=の“鴉”こと、シホであり―――またの異名をリッチー・ガラティアでもあったのです。
そしてここで―――自分たちの目の前に立つ男が、最早魔将の筆頭ではなく、
その者と同等の実力を持つ最大の味方である・・・と、認知した者達は―――・・・〕
カ:つまり・・・そなたは、シホ殿―――ああいや、リッチー・ガラティアの配下・・・で、あると?
ヒ:いや―――油断がならないよ・・・そう云ってあたいたちを油断させるのかも・・・
ビ:フッフフフ―――・・・そこまで回りくどい真似をして何になる。
誰が得をするとでも・・・?
まあ―――私を疑いたければ好きにしたまえ。
それよりも、創主様よりの最後のオーダーだ・・・「君たちの役目はここまで、あとは好きなように生きよ―――」・・・だ、そうだ。
ヒ:「役目」が・・・「ここまで」―――? ・・・て、ことは、やはりあたいたちは用済み―――
ギ:いや・・・シホ殿のことだ、おそらくそう云った意味のものではなかろう―――
カ:うん・・・それに、死してはいても賢者を冠するからには、あの人にはあの人なりの策がまだあるのだろう。
ビ:フフ―――まあ、各々思いを馳せるのは構わないが、私は創主様が云われた通りを伝えたまでだ。
言葉通りに好きに生きてみてはいかがかね。
誰からの制約も受けず・・・自分の思いのままに―――・・・
だがそれは、今までに君たちが受けてきたどの任務よりも困難であることを述べさせてもらおう。
〔しかし、カインたちは容易にはその人物を信用はしませんでした。
その者こそは、黒き国の主の腹心であり―――また中心的人物・・・
戦場でも芳しい働きをしながらも、帷幕にて謀略を巡らせることにも長けている、知勇兼備の将―――
だから、彼の言葉を鵜呑みにしてしまっては、自分たちが窮地に陥ってしまう・・・と、疑ってしまうのです。
けれども・・・だとするのならば、先ほどから無礼一方の自分たちに対しても、寛容な態度の説明がつきにくい―――
その迷いが生じてきていた時に、今度はビューネイから、シホの・・・彼らに対しての最後の使命が下されたのです。
それこそが―――「自由に生きよ」・・・
至極簡潔にまとめられたその言の葉の内に、実は重要な意味が込められているのだ・・・と、
最後に死せる賢者の助手からの補足説明があったのです。〕