≪二節;ハルナ城攻略≫
〔カルマ東部戦線方面の抑えの要であった、魔将キュクノスが潰えると、そこからの戦線の崩壊は実に早くありました。
彼が居座っていた、カルマ東部方面三大兵糧庫の一つの出城でもあったテイグン山砦が陥落すると、
今まで難攻不落だったジュウテツも、陥ちるのは時間の問題でした・・・
そして今度は―――パライソの東部戦線攻略部隊の統括をするイセリアの策により、
ジュウテツを背にして、近くのジョヨウに簡易性の砦を築き、そこを新たな東部戦線の本陣・・・
つまり―――これから、カルマの東部戦線本陣であるハルナ城・・・及び、残る二つの兵糧庫攻略の出先機関に仕立て上げたのです。〕
イ:それでは―――これより各々が攻略すべきところを発表いたします。
まづ、私とセシルは―――残る二つの兵糧庫・・・
そしてリリアは、カルマ東部方面の本陣、ハルナ城を攻略してもらいます。
それから・・・エルム様は―――
エ:ああ、そう云う事だね、私は今回もお留守番v
あんた達の果々(はかばか)しい活躍を期待することとしよう。
〔高揚している今の士気を下げさせないため、休む間もなくカルマの東部方面の勢力を撲滅させる手を打つイセリア・・・
そこには、自らが属する雪月花の三将による、三方向からの攻勢が展開されようとしていたのでした。
まづ―――カルマの東部方面本陣、ハルナ城を攻略するのは月の宿将であるリリア・・・
そして、花の宿将であるセシルと、雪の宿将であるイセリア自身は、残る二つの兵糧庫―――とを陥すために展開させたのです。
ところが今回も―――と、云うよりやはり、エルムはどの戦線にも顔を出そうとはしなかったのです。
けれどもリリアは、以前に助けてもらった経験からか、このヴァンパイアの将校の持つ役割を、徐々に理解しつつありました・・・
エルムは―――ただ後方に収まって、戦を傍観する類の人間ではない・・・
「帝國の双璧」−楯−の名の下に、いざとなれば窮地に陥った自分たちを助ける・・・云わば、本当の盾としての役割を果たすために、
敢えて後方に控えているのだ・・・と、次第にそう思うようになっていたのです。
そうこうしているうちに、ハルナ城正面に布陣をしたリリアは、良きパートナーであるハミルトンと作戦を協議し・・・〕
リ:やはり―――・・・難所と云えば城門よね、ここを突破しない限りは・・・
ハ:その通り―――それに、この城に腰を据えているのは・・・
リ:魔将の内でも、上位の実力を備えている「三傑」のフォルネウス―――か・・・
ハ:―――とは云え、本来の私たちの役割を忘れてはなりませんよ、リリア。
リ:そうよね・・・判ってる―――
ハ:―――それはそうと、エルム様と何かありましたか。
リ:えっ?! な―――なによ・・・急に。
ハ:以前までは、仲が悪そうに見えたのに―――近頃ではそうは見えない・・・まあ、あなたが相手をしていない―――と、云えば、それまでなのですが・・・
リ:あ・・・ああ―――そのこと・・・。
まあ〜・・・確かに、私が相手をしない―――と云ってしまえばそれまでなんだろうけど、
あの時に・・・本当のあの人を見た気がしちゃって―――それで少々のことは・・・って思えてきてね。
それに・・・今回も恐らくは―――・・・
〔砦よりも防御の高い城塞を攻めるうえで、良き理解者であり協力者であるハミルトンと協議を交わすリリア・・・
そこではやはり、攻城戦の要となる城門をどのように攻略するのか―――に、重点を置いていたようですが、
目線を変えるためか、ハミルトンがここ最近で疑問を抱き始めたこと・・・ついこの間までは反目しあっていた間柄だったのに、
テイグン山砦陥落を機に、以前よりは露骨に反目し合わなくなったリリアとエルムを見るにつけ、何事かあったのではないか―――と、尋ねたのです。
するとリリアは、少々驚いたものの、あの時・・・エルムがキュクノスにより一時的に行動不能に陥らされた時に垣間見た、
本来のエルムの人格と云うものに触れたことをハミルトンに話したのです。
あの人は―――本当は生真面目過ぎて、他人の面倒見がいい・・・細かいところまでに目が届いて、自分よりもまづ他人のことを心配してしまう・・・
だからこそ、ヴァンパイアなのに、あちら側ではなくこちら側にいるのだ―――と、そう理解し始めたことを・・・〕