≪四節;哀しき決闘者(デュエリスト)≫
ヒ:では・・・手始めにあたいから―――手加減はしませんから、そのつもりで・・・
リ:望むところ―――! てやあぁ〜―――っ!!
ヒ:・・・―――さすがは。
リ:―――・・・(切っ先に澱(よど)みがない、気押されたら負けだわ・・・)
ヒ:―――では、これではどう??!
リ:(! 彼女の背後(うし)ろにまたすぐ彼女?!! ど・・・どちらが本も―――・・・)
―=追い掛け:疾風=―
リ:し・・・しまっ―――ああっ!!
〔初撃においては互角でしたが、次の一手ではヒヅメが自分の持てる忍びの体術でリリアを翻弄し始めたのです。
そう・・・そこでリリアは見たのです。
自分に向かってくる相手・・・そのすぐ背後には、もう一人の相手が付いてきているのを―――
そんなモノを見せられ、気を取られてしまったリリアは、自分の得物であるデュランダルをはじかれてしまい、
剩(あまつさえ)―――地べたに尻餅をついてしまったのです。〕
ヒ:勝負は・・・ついたようですね―――
リ:・・・―――
ヒ:・・・お覚悟を―――
〔自分愛用の剣をはじかれ、今の体制では反撃もままならないでいるリリア―――
しかし―――ヒヅメがリリアの命を断とうとした・・・その刹那!〕
ヒ:―――うっ!? これは・・・あいつの?!
リ:(これは“早贄”?! すると・・・あの子がここに?!)
〔丁度―――リリアとヒヅメの中間地点には、ある者が日頃愛用している“早贄”と呼ばれる投擲槍(ジャベリン)が付き立てられていました。
しかも、奇しくもリリアとヒヅメの二人は、この武器を使う=禽=のことを、よく知っていたのです。〕
ヒ:・・・マキ―――いるんだね、そこに・・・
リ:(―――えっ・・・?)
マ:・・・久しぶりだね、ヒヅメちゃん―――
あたしたちが・・・お互いこんな形でまた会うなんてさ・・・皮肉―――だよね・・・。
ヒ:(永かった・・・これであたいも―――)
リ:ち・・・ちょっと待って? あなたたち―――お互いのことを知っているというの??
マ:・・・―――
ヒ:・・・―――
リ:マ―――マキさん??
〔しかし・・・そこでは二・三言葉を交わしただけで、次の瞬間にはお互いを“敵”と認識し合っている者達がいました。
そして―――お互いが言葉を交わさなくなった・・・と、思った刹那、凄まじい火花がリリアの眼前で炸裂しあっていたのです。
そこにあるのは・・・純粋なまでの 力と力 のぶつかり合い―――
ヒヅメは、先ほどリリアに仕掛けた「追い掛け」で先手を取ろうとすれば―――
マキも、それに抗するかのように素早く後方に退き―――すぐそのあとに左右に揺さぶりをかけたかと思うと、実体はすでに上空から獲物目掛けて襲い来ていました。
そう・・・彼女たちの対戦は、お互いの顔や身体をあと一寸(ちょっと)で掠めるような攻撃ばかり―――
そんなモノに、思わず息を呑み・・・今自分がどこに身を置いているのかを忘れてしまっているリリアに―――・・・〕
ギ:お立ち―――頂こうか・・・
ワシは、女性と云えども騎士―――されど、武器を持ち合わせぬ者を斬れるほど、そこまでは落ちぶれていないのでな・・・。
リ:あなたは―――・・・ギャラハット=シャー=ザンフィル殿―――ですね。
お噂はかねがね・・・
ギ:知っておられたか―――ワシのことを・・・
リ:・・・あなたと同じ国の出身者である、ミルディンとギルダスのお二人から―――
ギ:そうか―――あの二人が・・・
―――では、参る!!
〔リリアは、自分の目の前に立ちはだかる者達のことを、やはり彼らと同じ国の出身者である、ミルディンとギルダスの二人から聞いて知っていました。
永い間―――クーナをその武で支え、自分たちが一番に尊敬し、また信頼していた・・・
聖騎士団の団長であり、 聖騎士<パラディン> の称号を持つギャラハットと、その養女(むすめ)のことを―――
そして・・・元ハイネスブルグの月の宿将であり、聖剣・デュランダルの持ち主であるリリアと―――
元クーナの天籟聖騎士団・団長であり、聖剣・ロンバルディアの持ち主であるギャラハットは―――
一方で火花を散らしているヒヅメとマキと同じように、これまた凄まじいまでの剣撃を繰り広げ始め出したのです。〕